生成AIによって生み出された「俳優」が、映画に出演するだけでなく、テレビのインタビューにまで登場する時代になりました。しかも今回は、いかにもAIらしい「放送事故」まで起きました。
AI女優として注目を集めているティリー・ノーウッドが、著名司会者ピアーズ・モーガンとの対談中、突然、広東語とみられる言語で話し始めたのです。モーガンは米国時間18日午前、その様子をSNSで公開しました。
AI俳優ティリー・ノーウッド、ピアーズ・モーガンと対談中に突然言語切り替え。
ノーウッドはその後、「ちょっとした不具合だった」と説明している。https://t.co/TDrqOVQDMV
— ハリウッド・リポーター ・ジャパン (@THRJapan) September 21, 2026
AI女優が起こした「放送事故」
ノーウッドは、人間の俳優ではありません。生成AIなどを利用して制作されたデジタルキャラクターで、すでに映画への出演が計画され、現実のメディアにも「本人」として登場しています。
「AI俳優」ティリー・ノーウッド、長編映画で主演にhttps://t.co/bGM0ArGjfx
AI俳優は実在する俳優の演技を取り込んで作られていますが、原則的に俳優に対価は支払われません。
ハリウッドの一部は雇用喪失につながると反発しています。
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) July 11, 2026
今回の対談には、俳優トム・コンティも参加していました。ところが会話の途中、ノーウッドは突然、英語から別の言語へ切り替わりました。モーガンとコンティは困惑しながらも笑いを見せ、ノーウッド自身はその後、「ちょっとした不具合(hiccup)」だったと説明しています。
人間の俳優なら「失言」「放送事故」と騒がれるところですが、AIなら「バグ」で済んでしまいます。このあたりも、これまでの芸能界にはなかった光景です。

ティリー・ノーウッドさんインスタグラムより
24時間働き、老化もしないAI俳優
AI俳優には、人間にはない強みがあります。
疲れません。老化もしません。撮影スケジュールでもめることもなく、ギャラ交渉もしません。病気にもならず、スキャンダルで降板することもありません。設定を変更すれば年齢や容姿も変えられ、多言語への対応も容易です。
映画会社や広告会社から見れば、これほど扱いやすい「タレント」はいないでしょう。
だからこそ、俳優の仕事がAIに奪われるのではないかという懸念も強まっています。しかも、これは俳優だけの問題ではありません。翻訳、ナレーション、広告制作、文章作成、プログラミング、事務作業まで、生成AIはすでに人間の仕事の領域へ入り込んでいます。
「人間らしさ」までAIが演じる時代
さらに厄介なのは、AIが単純作業だけを代替するわけではないことです。
俳優という仕事は本来、感情を表現し、観客を笑わせ、泣かせるという、極めて「人間的」な職業だと考えられてきました。それさえAIがこなすようになれば、「創造性のある仕事なら安全だ」という楽観論も怪しくなってきます。
しかも今回、ノーウッドが突然広東語を話すという失敗をしたことで、かえって視聴者の笑いを誘いました。皮肉なことに、AIの「不完全さ」までがキャラクター性として消費され始めています。
完璧なAIだけが人間の競争相手になるとは限らないのです。
人間にしかできない仕事とは何なのか
これまで私たちは、機械に奪われない仕事を「人間にしかできない仕事」と呼んできました。しかしAIが文章を書き、絵を描き、演技をし、インタビューまで受けるのであれば、その領域はいったいどこに残るのでしょうか。
責任を取ることでしょうか。他人の痛みを本当に理解することでしょうか。人生経験から判断することでしょうか。それとも、人間同士が「この人にやってほしい」と思うこと自体に価値が残るのでしょうか。
ティリー・ノーウッドが突然広東語を話し始めた一幕は、今のところ笑って済ませられる「ちょっとした不具合」です。
しかし、その向こう側にある問いは意外に重いものです。
AIにできない仕事を探すのではなく、AIにもできる時代に、それでも人間がやる意味のある仕事とは何なのでしょうか。
これから本当に問われるのは、そちらなのかもしれません。







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