キャッシュレス決済は便利ですが、店側から見ると決して「無料のインフラ」ではありません。クレジットカードの決済手数料は3%前後で、営業利益率が数%しかない飲食店や小売店にとっては重い負担です。
国際比較すると、日本の手数料は低いとはいえません。問題は、決済サービスそのものに巨額のコストがかかるというより、カード会社、国際ブランド、ポイント制度などを支える料金体系が日本では高止まりしていることにあります。
日本ではいまだに「3%前後」が普通
クレジットカードの対面決済は店舗によって違いますが、中小事業者で2.5%、それ以外は3.25%からとなっています。iD、QUICPayなどの電子マネーは1.5~3%、交通系電子マネーも税込では2.5%程度です(図1)。オンライン決済ではStripeの国内カード決済が3.6%となっています。

店舗経営のオキテ
図1
最近は競争も始まっており、中小企業向けにはVisa・Mastercardで1.98~2.5%程度という低手数料プランも登場しています。Squareの小規模加盟店向け対面決済を比べると、日本は2.5%、英国は1.75%、オーストラリアは1.6%、米国は2.6%に1件15セントが加算されます(図2)。
図2
EUは「卸売価格」を0.2~0.3%に規制
カード手数料の核心にあるのがインターチェンジフィーです。これは加盟店と契約する決済会社から、カードを発行した会社へ支払われる手数料です。日本政府の調査では、加盟店手数料のかなりの部分をこのインターチェンジフィーが占めています。
つまり決済会社が3%を丸ごと利益にしているわけではなく、その一部はカード発行会社や国際ブランドへ流れます。EUはここに規制を入れました。一般消費者向けカードのインターチェンジフィーを、デビットカードで原則0.2%、クレジットカードで0.3%に制限しています。
オーストラリアでも規制と競争政策が進み、国内対面取引における加盟店の平均手数料は0.5%前後、クレジットカードでも0.9%前後まで低下しています。
日本ではインターチェンジだけで1~3%
それに対して、日本ではインターチェンジフィーにEUのような上限規制はありません。Visaが公開している国内標準料率では、中小加盟店向けで1.5%程度、一般的なカテゴリーでは2%台、カードの種類や条件によっては3%前後に達します。Mastercardも中小企業では1.5%程度ですが、一般的なカテゴリーでは2~3%です。
日本では、この「卸売部分」だけで1.5%以上になるケースがあります。これでは加盟店手数料を1%以下にすることは容易ではありません。
「1%ポイント還元」の請求書は誰が払うのか
では、なぜカード発行会社にそれほど大きな取り分が必要なのでしょうか。理由のひとつがポイント還元です。日本では「1%ポイント還元」といったカードが珍しくありませんが、このポイントはカード会社が手数料を原資として利用者に配っています。
つまり消費者が「無料でもらった」と感じているポイントのかなりの部分は、加盟店が手数料として負担しているわけです。加盟店側も、そのコストを自腹で負担することはできません。長期的には商品価格やサービス価格に転嫁されます。
その結果、カードを使わず現金で払う人まで、商品価格を通じてポイント還元のコストを負担することになります。高還元カードは利用者個人にとっては得ですが、社会全体で見ると、加盟店と現金利用者からカード利用者への所得移転なのです。
電子マネーまで3%なのはなぜか
不思議なのが電子マネーです。交通系ICカードなどは処理が高速で、クレジットカードのような貸し倒れリスクもありませんが、クレジットカードとほぼ同じ3%前後の手数料を取っています。QRコード決済では、直接契約によって1%台の決済手数料を実現しているサービスもあります。
この差を見ると、「電子決済には3%程度の技術コストが不可避だ」という説明には無理があります。料金は技術的コストだけではなく、決済会社と加盟店側の力関係で決まっているのです。
キャッシュレス推進の次は「手数料競争」
政府はこれまで「キャッシュレス比率を上げる」ことを政策目標としてきましたが、加盟店に3%前後の負担を残したままキャッシュレス決済だけを普及させると、決済事業者へ支払われる手数料総額も増えます。
必要なのは、ポイント還元キャンペーンに補助金を投入することではありません。インターチェンジフィーやブランドフィーなどの料金体系を透明化し、EUやオーストラリアのように卸売段階の手数料にも競争圧力をかけることです。
日本でも1%台後半から2%台前半の料金プランが登場していることは、従来の3%超という料金が「技術的に避けられない価格」ではなかったことを示しています。キャッシュレス推進の次の課題は、この見えない3%税をどこまで下げられるかです。






コメント