突如 広東語を喋り出したAI女優ノーウッドから考える「人間にしかできない仕事」とは何か?

生成AIによって生み出された「俳優」が、映画に出演するだけでなく、テレビのインタビューにまで登場する時代になりました。しかも今回は、いかにもAIらしい「放送事故」まで起きました。

AI女優として注目を集めているティリー・ノーウッドが、著名司会者ピアーズ・モーガンとの対談中、突然、広東語とみられる言語で話し始めたのです。モーガンは米国時間18日午前、その様子をSNSで公開しました。

AI女優が起こした「放送事故」

ノーウッドは、人間の俳優ではありません。生成AIなどを利用して制作されたデジタルキャラクターで、すでに映画への出演が計画され、現実のメディアにも「本人」として登場しています。

今回の対談には、俳優トム・コンティも参加していました。ところが会話の途中、ノーウッドは突然、英語から別の言語へ切り替わりました。モーガンとコンティは困惑しながらも笑いを見せ、ノーウッド自身はその後、「ちょっとした不具合(hiccup)」だったと説明しています。

人間の俳優なら「失言」「放送事故」と騒がれるところですが、AIなら「バグ」で済んでしまいます。このあたりも、これまでの芸能界にはなかった光景です。

ティリー・ノーウッドさんインスタグラムより

24時間働き、老化もしないAI俳優

AI俳優には、人間にはない強みがあります。

疲れません。老化もしません。撮影スケジュールでもめることもなく、ギャラ交渉もしません。病気にもならず、スキャンダルで降板することもありません。設定を変更すれば年齢や容姿も変えられ、多言語への対応も容易です。

映画会社や広告会社から見れば、これほど扱いやすい「タレント」はいないでしょう。

だからこそ、俳優の仕事がAIに奪われるのではないかという懸念も強まっています。しかも、これは俳優だけの問題ではありません。翻訳、ナレーション、広告制作、文章作成、プログラミング、事務作業まで、生成AIはすでに人間の仕事の領域へ入り込んでいます。

「人間らしさ」までAIが演じる時代

さらに厄介なのは、AIが単純作業だけを代替するわけではないことです。

俳優という仕事は本来、感情を表現し、観客を笑わせ、泣かせるという、極めて「人間的」な職業だと考えられてきました。それさえAIがこなすようになれば、「創造性のある仕事なら安全だ」という楽観論も怪しくなってきます。

しかも今回、ノーウッドが突然広東語を話すという失敗をしたことで、かえって視聴者の笑いを誘いました。皮肉なことに、AIの「不完全さ」までがキャラクター性として消費され始めています。

完璧なAIだけが人間の競争相手になるとは限らないのです。

人間にしかできない仕事とは何なのか

これまで私たちは、機械に奪われない仕事を「人間にしかできない仕事」と呼んできました。しかしAIが文章を書き、絵を描き、演技をし、インタビューまで受けるのであれば、その領域はいったいどこに残るのでしょうか。

責任を取ることでしょうか。他人の痛みを本当に理解することでしょうか。人生経験から判断することでしょうか。それとも、人間同士が「この人にやってほしい」と思うこと自体に価値が残るのでしょうか。

ティリー・ノーウッドが突然広東語を話し始めた一幕は、今のところ笑って済ませられる「ちょっとした不具合」です。

しかし、その向こう側にある問いは意外に重いものです。

AIにできない仕事を探すのではなく、AIにもできる時代に、それでも人間がやる意味のある仕事とは何なのでしょうか。

これから本当に問われるのは、そちらなのかもしれません。

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