- よかったところ:高市首相は国連総会の演説で、日本はICC(国際刑事裁判所)を一貫して支持してきたし判事も出してきた、とはっきり言った。トランプ政権が制裁でICCを締め上げてる真っ最中に、これを言ったのは評価していい。
- 物足りないところ:8月18日、米国はICC所長の赤根智子さん(日本人)本人を制裁対象にした。どうせICCに触れるなら「日本人所長への個人攻撃は即刻やめろ」まで言ってほしかった。首相の発言は国内で「日本の立場と相いれない」と言ったところで止まってる。
- 突っ込みたいところ:「旧敵国条項を早急に削除すべき」に拍手喝采してるネトウヨ諸君。国連憲章を変えるには、総会で加盟国の3分の2(193カ国なら129カ国)が賛成し、さらに常任理事国5カ国すべてを含む3分の2が批准しないといけない。65カ国がそっぽを向けばそれで終わり。その票を集める道具がODAなのに、「ODAは無駄」「外国に金使うな」と叫んでるのはキミたちでしょ。
- 正直な但し書き:敵国条項が消えない最大の理由は、ODAではない。憲章改正が安保理改革とセットで扱われていて、常任理事国が動かないことだ。それに条項自体は日本政府も「死文化」と言っている。ただ、いざ採決となったときに票が集まるかどうかは、日頃どれだけ途上国とつながっているかで決まる。ここは間違いない。もう一つ。よく聞く「日本はODAを半減させた」は一般会計予算の話で、実際の支出額は名目ドルでほぼ横ばい〜微増。問題は「減らした」ことより、他国が4〜6倍に増やす中で「増やさなかった」ことだ。
9月22日(日本時間23日朝)、高市首相がニューヨークで国連総会の一般討論演説をやった。全文は最後に転載している。日本が国連に加盟して70年の節目。柱は三つ。
- エネルギー・重要鉱物のサプライチェーン強靱化
- 核軍縮・北朝鮮・拉致
- 法の支配に基づく国際秩序
最後に国連改革。安保理改革と、旧敵国条項の削除を強く求めた。
全体としては外務省の作文らしく手堅い。ホルムズ海峡について「追加的費用のない形で」全船舶が通れるべきと言い切ったのは、じつはイランだけでなく、7月に20%の通航料をぶち上げて翌日引っ込めたトランプにも刺さる言い方で、ここはなかなかうまい。
一方で「力による一方的な現状変更は世界のどこであっても認めない」と言いながら、2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃には一言も触れていない。中東は主語のない「緊迫化」。まあ、同盟国相手だとこうなる。
で、今日わたしが書きたいのはこの2点。
演説のこの部分。
あっさり流してるけど、いまICCがどういう状況かを知ってると重みが違う。
トランプ大統領は2025年2月の大統領令で、ICCへの制裁の枠組みをつくった。制裁対象は主任検察官から次席検察官、裁判官へとどんどん広がり、2026年8月18日には、ついにICCのトップである赤根智子所長本人が対象になった。米国内の資産凍結、入国禁止、事実上米国の金融システムからの締め出し。背景にはイスラエル関係者をめぐる捜査がある、と人権団体は見ている。
赤根さんは1982年に検事になった、日本の検察出身の人。2018年に日本人で初めてICC判事になり、2024年3月から所長。ICCが2023年3月にプーチン大統領の逮捕状を出したあと、ロシアは赤根さんを捜査対象にして、同年7月には指名手配までした。ロシアに狙われ、今度は同盟国の米国に狙われる。
高市首相は8月25日、この制裁について「日本の立場と相いれるものではなく、大変深刻に受け止めている」と言った。でも報道によれば、米国にどう働きかけるかは言及を避けた。
だから国連演説は絶好の機会だった。世界193カ国の前で「ICCを支持する」と言うなら、あと一文、
「日本人であるICC所長への個人攻撃は、即刻停止されるべきだ」
と言えばよかった。米国を名指ししなくても意味は全員に伝わる。「法の支配」を演説の柱にしておきながら、自国出身の国際裁判所トップが制裁されてるのに名前も出さない。そこはやっぱり弱腰と言われても仕方ないでしょ。

国連総会議場で一般討論演説を行う高市首相 首相官邸HPより 2026年9月
さて本題。
演説のこのくだりで、SNSのネトウヨ界隈は大喝采だった。
背景を説明しておくと、2025年11月21日、在日中国大使館がXで旧敵国条項(国連憲章53条・77条・107条)を持ち出した。第二次大戦の戦勝国は、旧敵国(日本やドイツ)に対して安保理の許可なしに軍事行動をとれる、という趣旨。高市首相の台湾答弁で日中関係がこじれてた時期で、日本の外務省は「既に死文化している」と反論した。
だから今回の演説は中国への意趣返し。それはわかる。気持ちもわかる。
でもね、拍手してる人たちは、どうやったら条項が消えるかわかってるのかって話。
国連憲章108条。改正には次の二つが必要。
- 総会で加盟国の3分の2の賛成で採択
- 常任理事国5カ国すべてを含む加盟国の3分の2が、それぞれ国内で批准
いま加盟国は193。3分の2は129カ国。つまり65カ国が賛成しなければ(反対でも棄権でも欠席でも)それで終わり。
そして憲章が実際に改正されたのは、1960〜70年代に安保理と経済社会理事会の理事国を増やしたときの数回だけ。半世紀以上一度も変わってない。
2005年の世界サミットで「敵国条項を削除する」と全首脳が決意したのは事実。でも決意は決意、改正は改正。21年たっても消えてないのは、憲章改正が安保理改革とセットで扱われていて、常任理事国がそこを動かしたくないからだ。
じゃあ仮に、敵国条項の削除だけを単独で採決にかけたらどうなるか。で、仮に拒否になったら日本は永遠に敵国だ。
中国が表向き「賛成」と言ったとしても、中国と経済的に深く結びついた国が65カ国集まって賛成しなければ、条項は残る。中国は自分の手を汚さなくていい。
これは妄想じゃない。2020年、香港国家安全維持法をめぐって国連人権理事会で共同声明の数合わせがあった。中国を批判したのは日英など27カ国。中国を支持したのは53カ国。支持側の内訳は、アフリカが25カ国、中東11、アジア8、中南米6、欧州2、大洋州1。アフリカだけで半分近い。エジプト、ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、カメルーン……中国マネーでおなじみの国がずらっと並んだ。これでは仮に中国が日本に対して何かしてきた場合も国連で中国が正しいとする国ばかりになってしまうわけだ。
しかも、この支持側アフリカ25カ国のうち23カ国は中国からお金を借りてる。2000〜2024年の合計で約572億ドル。中国の対アフリカ融資全体の約3割がこの23カ国に流れてる。

中国がアフリカに貸したお金は、2000〜2024年で約1,809億ドル・1,319件(ボストン大学の集計)。ピークは一帯一路の2013〜18年で、2016年は1年で288億ドル。いまはだいぶ絞ってるけど、25年かけて積み上げた関係は消えない。

それ全部が「借金漬けにして言うことを聞かせる」目的とまでは言えない。研究者の間でも「債務の罠」論には異論がある。でも、お金でつながった国は、国連の票でもつながりやすい。これは香港の数字を見れば明らか。
日本は1990年代、世界一のODA大国だった。トップドナーだった最後の年は2000年。
ここでよく言われるのが「日本はODAを半分に削った」。でもこれ、半分になったのは一般会計のODA予算の話。1997年度の1兆1,687億円がピークで、2025年度は5,664億円(▲52%)。

一方で、実際に途上国へ出ていったお金(ODA実績)は減っていない。支出総額は2023年に240億ドル、2025年(暫定)でも184億ドル。名目ドルで見れば、1997年よりむしろ多い。一般会計が減った分を、財政投融資を原資にした円借款や、過去の円借款の回収金で回してるからだ。
じゃあ日本は頑張ってるのか。問題は、ほかの国がもっと伸ばしたこと。
外務省の資料によると、2000年の日本のODAは135億ドルで世界1位。2024年は168億ドルで約1.2倍。同じ期間に米国は100億→633億ドル(約6.4倍)、ドイツは50億→324億ドル(約6.4倍)、英国は45億→180億ドル(約4倍)。日本だけほぼ横ばいで、1位から4位に落ちた。国の経済規模に対するODAの割合(対GNI比)は0.39%で、DACの中で13位。国連目標の0.7%には遠く及ばない。

つまり日本は「削った」というより「増やさなかった」。世界が援助を積み増す20年間、日本は財布のひもを締めっぱなしだった。2025年の実績は前年比14%減で、今度は本当に減りはじめてる。

で、この間ずっとネット上で言われてきたのが
- 「ODAは無駄」
- 「外国に金をばらまくな」
- 「日本人のために使え」
だよね。
中には海外にばら撒く(貸し付けだと分かっていない)のは左翼とまでいう無知丸出しのヤツもいて笑ってしまう。安倍さんはよく分かっていてアフリカとの連携を強めていた。再三の安倍氏のアフリカ諸国の探訪を中国は警戒し、日本はアフリカを抱き込もうとしているとしていた。それはあんたらに対抗していたのよ。つまりODAは武器を買わない防衛政策なのだ。

でも日本のODAは、ほかの先進国と比べて円借款、つまり貸し付けの比重がとびきり高い。DAC諸国の援助は平均で8割以上が返さなくていい贈与だけど、日本は道路・鉄道・港・発電所みたいなインフラを円借款でつくるのが基本スタイルで、ODA全体の半分以上が貸し付け。DACでこれは日本だけだ。利子をつけて返してもらう。
実際、2024年に日本がODAとして出したお金は総額199億ドル。そこから途上国が返してきた分を引くと152億ドル。差し引き約47億ドルが、1年で返済として日本に戻ってきてる計算になる。ばらまきじゃない。しかもそのお金で、日本は途上国との関係と、国連での票を積み上げてきた。
「外国に金使うな」と叫んで日本のODAを増やさせなかったのと同じ口で、
「敵国条項を消せ」と拍手する。お前らバカかよ。
条項を消すのに要るのは、首相の演説じゃなくて129票。その129票は、日頃アフリカやアジアの国々と、どれだけ本気でつき合ってきたかで決まる。中国はそこにお金を積んできた。日本は横ばいで、しかもアジア中心。アフリカにはろくに届いてない。そりゃ敵国のままでしょ。

ついでに箇条書きで。
- ODAを誇りながら、増額の話はゼロ。米国が援助を大きく削ってドイツが初めて最大援助国になった今は、日本が存在感を出すチャンスなのに。
- 「専守防衛……この方針は今後も一切変わらない」。反撃能力の保有との関係は説明なし。
- 核はNPT体制の話だけで、核兵器禁止条約には触れず。「唯一の戦争被爆国の使命」と言うわりには。
- 「先週に内閣改造を行い、国際防災協力担当大臣を新たに任命します」。新しい大臣ポストができたように聞こえるけど、実際は細野豪志さんが防災担当などと兼務。
- ICC支持をはっきり言ったのはいい。でも赤根所長への個人攻撃を止めろとまで言えなかったのは惜しい。
- 敵国条項を消すのは演説じゃなくて票。票を集める道具を削れと言ってきた人が拍手するのは筋が通らない。
- 「日本の誇りと名誉」を本気で取り戻したいなら、ODAを増やせ。話はそれからだ。
高市首相 国連総会一般討論演説(2026年9月22日)全文:朝日新聞デジタル
Human Rights Watch「米国がICC赤根智子所長を制裁対象に追加」(2026年8月19日)
愛知県弁護士会 会長声明(2026年8月)
NHK「高市首相 ICC赤根所長への制裁は日本の立場と相いれず」(2026年8月25日)
国連広報センター「国連憲章の改正」「2005年世界サミットの成果」
CGTN(2025年11月21日)在日中国大使館の旧敵国条項投稿
Boston University Global Development Policy Center「Chinese Loans to Africa Database」(2025年版データ)
外務省国際協力局「政府開発援助(ODA) Q&A集」(令和7年9月)
外務省「OECD/DACにおけるODA実績」
霞関会「予算と実績の面から開発協力の未来を考える」
霞関会「予算と実績の面から開発協力の未来を考える」
財務省「2024年(暦年)における日本の開発途上国に対する資金の流れ」
JANIC「2025年のDAC諸国によるODA動向分析」
外務省「2023年版開発協力白書」
西岡省二「中国の香港弾圧を支持した53カ国」(Yahoo!ニュース エキスパート)
議長、そしてご列席の皆様、国際秩序に、大きな揺らぎが生じています。私たちがこれまで培ってきた法の支配に基づく自由で開かれた秩序が、幾多の方向から厳しい挑戦を受けています。パワーバランスが変化し、地政学的競争が激化する中、世界各地では、日々、無辜(むこ)の市民が命を失っています。
「冷戦後の安定した時代」は既に過去のものとなりました。物流は停滞し、各国の国民は物価高に苦しみ、開発目標の達成は遅れ、各地で人権をめぐる課題が生じています。
こうした中、国連は、創設から80年を経て、世界の平和と安定のための役割を果たせていないのではないか。そうした声すら聞こえてきます。
議長、しかし、世界に平和と安定をもたらし、国際社会が新たな課題を乗り越えて繁栄する上で、今ほど、国連が重要な時代はない。そして、日本は、国連のために大きな責任を果たしていく。本日、私は、その決意を申し上げるために、この場所にやってまいりました。
今年は、日本が国連に加盟してから70年目の年に当たります。この節目の年に、私はまず、国際社会が直面する課題について、日本が国連とも手を携えながら、どう取り組んでいるのかをお話しします。その上で、皆様と共に、国際社会における国連の役割を見つめ直したいと思います。
議長、まず、国際情勢の緊迫化に目を向けてみましょう。
中東情勢が緊迫化し、国際公共財たるホルムズ海峡において、自由で安全な航行が困難になっています。日本は、国際社会と連携し、中東地域全体の事態の沈静化のため、外交努力を継続しています。
また、燃料や化学製品、医療品の供給不安が生じ、人々の生活や企業の活動に、大きな影響が生じています。肥料の供給停滞により、食料危機のリスクが広がり、特にアフリカ、アジアがその影響を大きく受けています。私たちは長年、太平洋からインド洋にかけて、自由で開かれた海でダイナミックな交易を行い、共に強く豊かな地域をつくってきました。それは、大西洋でも、地中海でも、同じです。これをアフリカにもつなげ、成長と繁栄の大動脈にしていきたい。そのため、ちょうど10年前、安倍晋三総理は、ケニアで開催されたTICAD(アフリカ開発会議)で、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPを提唱しました。
しかし、最近の地政学的対立の先鋭化により、自由な交易が妨げられ、エネルギーの安定供給やサプライチェーンに支障が生じています。そのような中、今年5月、私は、「進化したFOIP」を発表しました。自らの運命を自らの手で決めるために必要な「自律性」と「強靱(きょうじん)性」と、これを経済・社会・安全保障という全ての面で各国が身につけていくことが不可欠であると訴えたのです。この理念を具現化するものとして、日本が特に注力している三つの柱をお話しします。
一つ目の柱として、日本は、エネルギー・重要物資のサプライチェーンの強靱化に取り組んでいます。
世界のエネルギー安全保障にとって、自由で透明なエネルギー貿易の確保、石油備蓄の強化に関する国際協調、そして、生産国と消費国の連携強化が重要です。日本は、アジアにおけるエネルギー・資源供給力の強靱化のために、「パワー・アジア(アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ)」を立ち上げ、備蓄システム構築や与信供与などの協力を進めています。また、現在、日本は、中東の湾岸諸国の経済・エネルギー強靱化に向けて、包括的な協力計画をまとめています。この取り組みを通じ、世界的なエネルギーの安定供給のために、日本を含むアジア太平洋と湾岸諸国の連携を一層強化するべく取り組んでいきます。さらに、国際社会全体で恣意(しい)的な輸出規制に対する懸念が強まっています。日本は、代替供給源の形成に加えて、重要鉱物等の供給断絶に対する各国の対応能力の向上を含めた、サプライチェーンの強靱化のための構想を提案しています。例えば、通称「RISE(強靱で包摂的なサプライチェーンの強化)パートナーシップ」。この取り組みでは、重要鉱物産出国が、採掘・精錬・加工に関して、より大きな役割を果たせるよう、協力をしていきます。6月には、それに必須となるインフラ整備支援のため、世界銀行グループに「RISE+」を創設し、2千万ドルの拠出を表明しました。
二つ目の柱として、日本は、平和と安定に向けた連携の強化に取り組みます。
日本は、戦後一貫して、核軍縮・不拡散に、真剣に取り組んできました。「核兵器のない世界」に向けた志の原点は、核兵器の惨禍は二度と繰り返されてはならないという、被爆者の方々の願いにあります。「核兵器のない世界」に向けた国際社会の取り組みを主導するには、唯一の戦争被爆国である我が国の使命であり、核兵器国と非核兵器国の双方が参加する「NPT(核兵器不拡散条約)体制」の維持・強化に向けて、国際社会の連帯を強く呼びかけます。また、日本としても、核戦力の透明性向上や被爆の実相の理解促進といった、現実的かつ実践的な取り組みを粘り強く前に進めていきます。ウクライナ、そして北朝鮮情勢は、核のリスクと脅威の増大を世界に再認識させました。ロシアと北朝鮮の軍事協力の強化を通じた、核・ミサイル関連技術の拡散も懸念されます。インド・太平洋と欧州・大西洋の安全保障は、不可分なのです。北朝鮮が、暗号資産窃取を含む悪意あるサイバー活動も資金源にしながら、核・ミサイル開発に邁進(まいしん)していることは、明確な安保理決議違反であり、国際社会の平和と安全に対する重大な脅威です。北朝鮮の完全な非核化という原則の下、安保理決議の完全な履行が不可欠です。また、北朝鮮による拉致問題は、今もなお拉致被害者の自由が奪われていて、ご家族が苦しんでいるという、現在進行形の問題であり、人命に関わる問題です。日本のみならず、国際社会の重大な関心事項でもあります。拉致被害者やそのご家族も高齢となられる中で、この拉致問題を一刻も早く解決しなければなりません。日朝双方の未来のためにも、日朝平壌宣言に基づき、互いに実りある関係をつくるべく、私には、対話し、具体的に行動する用意があります。
三つ目の柱として、日本は、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の維持・発展に貢献します。力また威圧による一方的な現状変更の試みは、国連憲章に掲げられた原則に反するものであり、世界のどこであっても認めることはできません。その最たる例が、ロシアによるウクライナ侵略です。国際社会の平和と安全に特別な責任を有するはずの安全保障理事会の常任理事国が、他国を侵略し、その自国の行為に係る決議に拒否権を行使するような状況が起きています。このような現状では、安全保障理事会は、国際社会の平和のために機能していないと言わざるを得ません。戦後の日本は、平和国家として、いかなる紛争の解決においても法の支配を重視してきました。それは、日本が、ICJ(国際司法裁判所)、ICC(国際刑事裁判所)、ITLOS(国際海洋法裁判所)などの様々な国際裁判所を一貫して支持し、判事を輩出していることにも表れています。今年3月に、日本政府内に和平調停の担当部署を創設しました。日本は、紛争の平和的解決により積極的な役割を果たしていきます。また、今、ホルムズ海峡において、法の支配に基づく海洋秩序が、大きく揺らいでいます。従来どおり、追加的費用のない形で、全ての船舶が自由かつ安全にホルムズ海峡を通過できることは、中東地域の安全のみならず、国際経済全体の安定のためにも、極めて重要です。同様に、バブルマンデブ海峡の安定確保も、不可欠です。日本は、中東地域の海洋秩序の維持に向け、引き続き、関係国やIMO(国際海事機関)と緊密に連携していきます。
議長、次に、国連や多国間主義に対する日本の取り組みと決意をお話しします。
1956年の国連加盟以来、日本は、二国間や国際機関を通じたODA(政府の途上国援助)によって、貧困の撲滅、経済・社会開発、女性のエンパワーメント、気候変動、国際保健といった地球規模課題の解決に果敢に取り組むことで、グローバルサウスとの連帯を深めてきました。日本はこれまでに、途上国・地域に対して、総額6700億ドルを超えるODAを支援し、99カ国に6万人規模でJICA(国際協力機構)海外協力隊員を派遣してきました。また、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成に向けた取り組みを、世界各地で推進しています。日本が1993年から国連と共に開催してきたTICADは、アフリカの声をSDGs(持続可能な開発目標)に反映させたり、初めてFOIPを提唱する場にもなりました。アフリカは、若者人口の成長活力と大きな経済潜在性を有しており、日本は、「共に、強く、豊かに」なるためのアフリカ外交を推進していきます。例えば、アフリカの産業発展、雇用創出、そして連結性強化を促進します。また、来年には、1997年以来、太平洋島嶼(とうしょ)国と一緒に開催してきた太平洋・島サミットを日本の横浜で開催します。海洋安全保障や気候変動といった共通課題を含め、太平洋島嶼国地域との連携の更なる強化や同地域の安定と繁栄を目指します。
本年も、日本を含め世界各地で、極めて深刻な被害をもたらす災害が発生しており、自然災害が激甚化・頻発化しています。日本は、世界一の防災大国を目指しています。日本の防災の知見や技術を共有し、世界の防災対策に貢献するべく、先週に内閣改造を行い、国際防災協力担当大臣を新たに任命します。私自身、2015年には、総務大臣として国連防災世界会議に出席しましたが、そこで採択した「仙台防災枠組」の推進は、今も最も重要な取り組みの一つです。その仙台で、来年10月にアジア太平洋防災閣僚級会議を開催します。今を生きる人々の命と未来を生きる人々の命を守るため、全ての国が、地球温暖化対策に真剣に取り組む必要があります。私は、気候変動対策と経済成長は両立できると信じています。日本はこれまで、グリーン鉄を始めとした生産・技術基盤の構築、世界最高効率のガス火力発電の活用、更には、省エネ型データセンターの普及など、日本の技術力を生かし、2050年のネット・ゼロを目指して、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の取り組みを進めています。
これらの取り組みを、エネルギー需給構造の強靱化の視点から更に強化し、「パワーGX(エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ)」として強力に進めます。そして、脱炭素化とエネルギー安全保障、経済成長を同時に進める「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)」といった取り組みを通じて、世界の気候変動対策に貢献していきます。まさに来年、グリーン技術の産業見本市であり、持続可能な開発の在り方にも焦点を当てる2027年国際園芸博覧会を横浜で開催します。ぜひ、多くの方にお越しいただきたいと願っています。
技術革新から生じている課題もあります。AI(人工知能)の進歩は、人類に飛躍的な機会をもたらす一方、安全保障上の挑戦にもなっており、事実に基づかない情報やプロパガンダの拡散への対策も急務です。日本は、「広島AIプロセス」を立ち上げ、生成AIを規律する初の国際規範を策定すると同時に、同志国やグローバルサウス諸国と「安全、安心で信頼できるAI」エコシステムを共につくろうとしており、高性能AIのリスクに対応するため、安全性に関する協力も強化してまいります。これらの取り組みを加速すべく、AIサミットを早期に日本で開催したいと考えています。
議長、日本は戦後、先人のたゆまぬ努力と多くの国からの善意の手により、今日の平和と繁栄を築いてきました。その過程で、日本自身も多国間主義の下、国際社会の課題解決に向けて一貫して行動してきました。しかし、これらの課題解決は1カ国だけでは実現できません。今こそ、国連の旗を高く掲げ、その下で加盟国が力を結集して、ルールを練り上げ、協力の枠組みを築くことが必要です。地球規模でそのかじを取ることができる唯一の存在が国連だと、私は確信しています。そのためにも、国連の改革が不可欠です。国連は一つの「器」であって、その中身を決める責任は、私たち、加盟国にあります。国連の制度疲労を嘆くのではなく、加盟国が心を一つにして、国連改革を力強く進め、より強靱かつ実効的な国連に変革していくべきです。グテーレス事務総長の成果を礎として、歩みを進めましょう。同時に、81年を経た国連憲章も、見直されなければなりません。「旧敵国条項」について、2005年には、全加盟国首脳の決意として、国連憲章から「敵国」への言及を削除するとの国連総会決議が採択されています。この決議に従い、同条項は早急に削除されるべきです。70年間にわたり、国連の取り組みに大きく貢献してきた日本の誇りと名誉にかけて、強く申し上げておきます。そして、極めて重要な課題として、安全保障理事会の改革が、緊急に必要です。国際社会の平和と安全の維持を任務とする安全保障理事会の現在の構図は、1945年当時の国際情勢を反映したものであり、現代の国際社会を真に反映した構造へと変革することが急務です。そのためには、常任理事国・非常任理事国の双方を拡大して、その正統性・代表性を確保することが不可欠です。過半数を超える加盟国が、双方の拡大を支持しています。日本は、これら国連の改革においても大きな責任を果たしていく決意です。
議長、日本は、国連加盟以来70年間、専守防衛の考え方の下、平和国家として、国際社会の平和と繁栄に一貫して貢献してきました。また、ルール・制度づくりと現場の支援の両輪で、国連と歩みを重ねてきました。そして、この方針は、今後も一切変わりません。この歴史を踏まえ、日本は、国連の理念という希望の灯を守り、その光を未来につないでいく責任を感じています。そのため、国連と多国間主義へのコミットメントを新たに、これからも着実に行動していきます。国連自身も、世界が揺らぐ今こそ、より強靱かつ実効的な国連に生まれ変わり、信頼を取り戻さなければなりません。日本は、そのような「国連と共に、インド太平洋を、そして国際社会を、より強靱に豊かにして、平和と繁栄をつくる」決意です。
雨が続きましてノースフェイスの防水スニーカーではびしょびしょになったため、ついにコレが出動しました。柔らかい素材でコンパクトにまとめられるパッカブルです。安いし1足はもっておきましょう
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年9月24日の記事より転載させていただきました。









コメント