国民生活を守る方法が無くなっているフランスでいったい何が起きているのか?

フランス全土で26万人も参加する教育改革を求める抗議運動がニュースで放映されています。日本のニュースでは高校生らが激しく抗議し、警察や鎮圧隊が催涙ガスや手りゅう弾を使うなど強硬な手段に出たことからデモ側が余計に反発する事態になっています。しかし、なぜ全国レベルでそのような大規模な抗議運動が起きたのか報道は少ないと思いますのでそのあたりを今日は見てみたいと思います。

高校生が教育改革?不思議な話です。多分、一言でまとめようとするから理解できないのだと思います。もともとは昨年9月頃に高校の教職員が学校への予算配分が十分ではなく、一部の学校では老朽化やネズミが出る、夏の暑さに対してエアコンなしなどとても勉強できるような環境にはないことに対する抗議運動に生徒の不満も重なり同調し、全国規模の抗議が起きているものです。また、大学進学システムに不透明な手続きがあるとの疑義が生じ、一部の高校生が高校の場所や名前によって不平等な扱いを受けているのではないか、と不満を持っていることもあります。

更に移民増によって1クラスの生徒数が35-6人程度で欧州のスタンダードにしては「ぎゅう詰め」となり、授業も連続して行われず、待ち時間が発生することで「タイパ」が悪いことも不満でした。

これらの不満をフランスの急進左派党が「そうだ、そうだ!」と後押ししたことで高校生の抗議運動が政治色を伴うようになったとも言えるのです。

ではさらにその根本問題を探ると、結局はフランス国家の運営そのものの問題にぶち当たります。

フランス・マクロン大統領 同大統領Xより 2026年9月

おかしくなったのは2024年初頭からでした。首相がどれだけ変わったかを見ると、アタル9か月、バルニエ3か月、バイル10か月、ルコルニュ①14日間、ルコルニュ②1年で現在に至る、であります。何故これだけ首相が変わったかと言えばフランスの財政赤字がGDP比110%程度になり、EUから厳しい管理を要求され、それを実行しようと様々な歳出削減提案をするたびに首相が糾弾され、辞任するという負のサイクルにあるのです。

フランスは歴史的に手厚い社会保障を行ってきている国です。また従業員のクビも簡単に切れません。つまり左派層にとっては極めて都合のよい国家であり、それをEUの言いなりに「国家の効率運営」の目的で、歳出カット=自分たちの福祉への悪影響⇒絶対反対という極めて単純な図式が何十年と変わらく存在しています。ただ、ここにきて急激に本件が取りざたされたのは他でもない、金利の上昇とフランス国債の下落による資金調達コストの上昇が理由です。

カネがないのに自分たちの生活をよくしろ、と言われてもそれは無理なお願いです。その上、来年春に予定されている大統領選ではマクロン氏は制度上、立候補できないので新たに大統領を選ぶことになるのですが、最有力候補が極右のルペン氏でそれを極左のメランション氏が追う展開です。現在はルペン氏が支持率30%台半ばで圧倒し、メランション氏は10%台半ばです。ただ、フランスは歴史的にアメリカ同様、左派と右派が激突する対立軸があり、移民層や現在の高社会福祉に甘えている層は「左派政党がお好き」ですので、現時点で大統領選の行方を予想するのはまだ時期尚早だと思います。

世界はこのフランスの醜態をどう見ているのかと言えば金融市場が最もわかりやすいと思います。フランス国債とドイツ国債の10年債利回り差(スプレッド)は159ベーシスで欧州危機以来の水準です。世界の主要国で10年物国債が今年最も不人気(低調)な3か国はフランス、アメリカ、日本の順であります。フランスの株式指数CAC40は年初から約4%下落しています。他にも様々な金融指標でフランスの1人負け状態となっており、これによりフランスの利払い費用や金融コストの増大により、財政負担を更に加速し、国民生活を守る方法が無くなっている、というのが正直なところであります。

たった一言でいうならば財政問題が高校生の抗議運動につながった、ともいえるわけです。

福祉というのは一度貰うと絶対に手放せない仕組みです。嫌な言い方をしますと、政府が国民に甘えさせると既得権になる、ということです。よってカナダのように誰にもそれを均等にばら撒くのではなく、必要な人だけにそれを行うという仕切りラインは入れるべきなのです。この問題は海の向こうの話ではなく、日本が不人気国債の3位に「入賞」しているという事実を改めて考える機会になってほしいと思います。財政問題はそれぐらい意味がある深いものなのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年10月8日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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