薬局の対応に納得できず、繰り返し説明を求めた70代の男性が、カスタマーハラスメント(カスハラ)を理由に出入り禁止となりました。男性は処分を不当として50万円の損害賠償を求めましたが、裁判では薬局側の勝訴が確定しました。
男性は東日本に住む元県庁幹部。2026年10月から企業のカスハラ対策が義務化されたこともあり、正当な苦情と迷惑行為の境界を考える事例として注目されます。

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薬剤師の言葉遣いをめぐってトラブル
発端は2023年9月。男性は薬剤師の言葉遣いが非常識だったと主張し、薬局側に原因究明と説明を繰り返し求めました。
しかし薬局側は、男性の要求が通常業務を妨げていると判断し、出入り禁止を通告しました。
男性は50万円の損害賠償を求めて提訴しましたが、請求は認められず、薬局側の勝訴が確定しました。
苦情を言う権利と業務妨害は別問題
顧客が接客態度に不満を持ち、改善を求めるのは当然です。特に薬局は患者の健康に関わる仕事であり、疑問に丁寧に答える責任があります。
しかし、同じ説明を何度も求めたり、自分が納得するまで従業員を拘束したりすれば、他の患者への対応にも支障が出ます。
厚生労働省は、要求内容に妥当性があっても、その手段や態様が社会通念上不相当で、就業環境を害する場合はカスハラに該当し得るとしています。
元県庁幹部という肩書が注目されてしまう
今回注目されるのは、男性が元県庁幹部だったという経歴です。
もちろん、元公務員だからカスハラを起こしやすいということではありません。ただ、行政組織で長年管理職を務めた人物が、退職後も相手に詳細な説明や原因究明を求めることは考えられます。
しかし、民間の薬局には、顧客が納得するまで無制限に説明を続ける義務はありません。顧客と従業員は、上司と部下の関係ではないのです。
「お客様は神様」の時代は終わるのか
2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法に基づき、企業のカスハラ対策が義務化されました。
これまで日本のサービス業では「お客様は神様」という考え方が行き過ぎ、従業員が理不尽な要求にも耐えることを美徳とする傾向がありました。
しかし、従業員にも人格と権利があります。一方で、企業が都合の悪い苦情を何でもカスハラ扱いし、正当な批判を封じることも許されません。
必要なのは、苦情の内容と要求の方法を切り分けることです。今回の事例が示唆するのは、顧客であることも、かつて社会的地位の高い職業に就いていたことも、他人の時間を無制限に使う理由にはならないということです。
今回の事例が示唆するのは、顧客であることも、かつて社会的地位の高い職業に就いていたことも、他人の時間を無制限に使う理由にはならないということです。
もっとも、元県庁幹部も薬局も、現役世代が負担する健康保険料に支えられているという点では同じです。高齢者が薬局で言葉遣いをめぐって争い、薬局がその対応に追われる。その費用を間接的に支えるのは現役世代です。「お客様は神様」かどうかを争う前に、どちらも現役世代の保険料にたかるのはやめてほしいものです。







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