「リフレ政策は不要」と言いながら積極財政を続ける高市首相の自己矛盾

高市早苗首相が、これまでの経済政策を修正するような発言を始めた。

10月8日の衆院本会議で、高市首相は「リフレ政策が必要な局面ではない」と述べた。雇用や所得の増加によって経済の好循環を実現し、税収を増やす政権の方針は「いわゆるリフレ政策と異なる」と説明した。

しかし、その一方で政権の看板政策である「責任ある積極財政」は維持するという。一体どういうことなのだろうか。

所信表明演説を行う高市総理 自民党HPより

リフレ政策と積極財政は何が違うのか

リフレ政策とは、金融緩和などによって需要を刺激し、デフレから脱却して緩やかなインフレを実現する政策である。

厳密にはリフレ政策と積極財政は同じではない。しかし、アベノミクスでは大規模金融緩和と財政出動を組み合わせてデフレ脱却を目指してきた。

高市首相の「責任ある積極財政」も、政府支出によって需要を刺激するという点では、従来のリフレ政策と共通する部分が大きい。

問題は、経済環境が変わったことである。デフレの時代には需要不足を補う財政出動に合理性があった。しかし、インフレ下で同じことをすれば、供給能力が追いつかない限り、物価をさらに押し上げる。

政府支出を「成長投資」と呼び替えても、短期的なインフレ圧力が消えるわけではない。

円安と国債安は市場からの警告

高市首相は「市場の信認を確保する」と繰り返している。しかし、市場の信認は首相が宣言すれば得られるものではない。

現実には円安と国債安が進み、10年物国債の利回りは3%前後まで上昇した。金利上昇は国債価格の下落を意味する。

もちろん、円安や金利上昇には日銀の金融政策や海外金利など複数の要因がある。しかし、積極財政による国債増発への懸念が市場の不安を強めている可能性はある。

政府は財政規律を守ると言いながら支出を拡大する。投資家が将来のインフレや財政悪化を警戒するのは当然だ。

「責任ある積極財政」という言葉のごまかし

高市政権は財政支出によって経済成長率を高め、税収増によって財政を健全化すると説明する。

しかし、名目GDPはインフレでも増える。物価上昇によって政府債務の実質的な負担を減らせても、国民の購買力が増えるとは限らない。

しかも、インフレが続けば国債金利が上昇し、政府の利払い負担も増える。成長率を上回る金利上昇が起これば、財政はかえって悪化する。

政府が巨額の補助金を投入すれば経済成長するという保証もない。重要なのは支出額ではなく、投資がどれだけ生産性を高めるかである。

リフレをやめると言うなら積極財政も見直せ

高市首相がリフレ政策を不要と判断したこと自体は正しい。インフレが定着した日本に必要なのは、需要刺激ではなく、生産性の向上と財政規律の回復だからだ。

そのためには日銀の金融引き締めを妨げず、政府も歳出拡大を抑える必要がある。

政府がアクセルを踏み、日銀がブレーキを踏むような政策を続ければ、金利上昇による財政負担が増し、市場の不信も強まる。

「リフレ政策は不要」と言いながら「責任ある積極財政」は続ける。この矛盾を解消しない限り、円安や国債安の背景にある不安は消えないだろう。

市場の信認は政治家の言葉ではなく、政策の整合性によって決まる。高市首相が本当にリフレ政策と決別するなら、まず決別すべきは「政府がお金を使えば経済は成長する」という発想ではないか。

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