黒坂岳央です。
「日本は安い国になった」と言われる。訪日外国人が牛丼やコンビニ弁当の安さに驚くのは、もはや珍しくないし、逆に日本人が海外へいくと「高い!」と感じる。
ところが、そんな安い日本で異様に高いものがある。それが「タクシー」だ。
東京23区で高いタクシー運賃は2026年4月からさらに高くなった。初乗り500円は据え置かれたが、初乗り距離と加算距離が短縮されたため、実質的な値上げである。これは韓国・ソウルと比べると約3-4倍になる計算だ。
タクシーだけが異常に高いのは歪な力学がそこにあるからである。筆者は旅行や出張でタクシーをよく使う立場なので、その視点から話したい。

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高いのに、サービスの質が安定しない
まず、日本のタクシーは正直、全体的に見て値段が高いのに質がいいとは言いづらい。
先日乗ったタクシーもそうだった。車内がタバコ臭いし、乗り込んで「よろしくお願いします」と挨拶しても返事がない。急ブレーキや急な車線変更が多く、後部座席で体が振られた。
行き先を告げても道を間違え、そのぶんメーターが上がっていくこともある。自分はイチイチ文句をつけることはしないが、当たりが悪いとせっかく旅行や出張で高まっていた気分が下がって残念な気持ちになることもある。
もちろん、日本のタクシーは良い運転手が多い。しかし、高額な料金に見合う品質が安定して保証されているとは言い難い。当たり外れが大きい問題が残る。
ホテルなら接客が悪ければ次から利用しなければいい。ところが、タクシーではそう簡単にはいかない。おそらくここに質が安定しない最大の理由があるだろう。
客が運転手を選べない
理由の一つは、客がタクシーを自由に選びにくいことだ。
駅やホテルのタクシー乗り場では、基本的に先頭の車に乗る。この車はタバコ臭そうだから次の車にしよう、あの運転手は接客が悪そうだから別の車にしよう、とはなかなか言いにくい。特に観光地だと目の前で止まったタクシーしか選択肢がないことも多い。
つまり、サービスの良し悪しが、次の仕事の獲得に結びつきにくい構造になっている。
丁寧に接客する運転手も、無愛想で乱暴な運転をする運転手も、同じ乗り場で順番を待っている。これは値段は同じで完全なるガチャになる。
普通の商売なら、接客が良ければ客が増え、悪ければ客が離れるので愛想もよくなるが、タクシーでは、その仕組みが十分に働きにくい。
言い方を変えると真面目に接客する運転手が、必ずしも報われる仕組みになっていないのだ。
インバウンドで需要が増えても競争は増えない
自分はタクシーに乗ると、運転手の人と話をする。運転に忙しそうならじゃまはしないが、行き先を告げて「お仕事ですか」みたいに返されると嬉しくなって相手の話を聞きたくなる。
そして最近、タクシーの運転手から「インバウンドでバブリー」「転職してきたが、正直思った以上に稼げる」という話を聞いてきた。
これはその人だけが潤っているのではない。業界統計を見ても、東京の法人タクシーの1日1台あたり営業収入はコロナ前より増加していることから間違いない。自分は需要が増えたり、運転手の収入が増えることにも異論はない。だが、利用者としては疑問が残る。
需要が増え、運賃も上がる。だが、利用者がサービスの質で運転手を選びにくいままでは、品質改善への圧力は十分に働かない。規制によって参入や価格競争も制約されている以上、競争を通じた改善には限界がある。
2024年に始まった「日本版ライドシェア」も、タクシー会社の管理下で一般ドライバーが運行する仕組みだ。既存業界から独立した事業者が自由に参入し、価格やサービスを競争させる制度ではない。これでは競争による改善に限界がある。
海外のライドシェアには「評価される仕組み」がある
海外でライドシェアを使うと、日本のタクシーとの違いを感じる。特に海外によく行く人は同じ意見を持っている人も少なくないだろう。
アプリで乗車前に料金の目安や運転手の情報を確認できるし、決済もアプリで完結し、乗車後には運転手を評価できる。
もちろん、海外のライドシェアにも問題はある。需要が集中すれば料金が跳ね上がるし、評価制度だけですべてのトラブルを防げるわけではない。だがサービスの質が記録され、次の仕事に影響する仕組みがあるのは安心だ。
仮に乱暴な運転や不快な接客が繰り返されれば、低評価として蓄積される。運営会社がその評価を配車や利用資格に反映すれば、サービスを改善する動機が生まれる。
一応、日本の配車アプリにも評価機能がある。しかし、評価の高い運転手を乗客が積極的に選び、良いサービスを提供するほど仕事が増えるという仕組みは十分整備されているとはいえない。結局、次回乗る時はやはりガチャになるためだ。
◇
規制が必要な産業はあると思う。国家安全保障に関わる部分や食料や文化については保護の手がなければ、トータルで危ぶまれることもある。
だがタクシーについていえばここだけバブル期でほとんど時代が止まったままに感じる。値段は高く、サービスもばらつきがあり、使いたいのに使えない。日本のタクシーの品質は高いとは言えない。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)






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