先日、竹中平蔵さんの動画を引用しながら、雇用の流動化について書いたブログには、かなりの反響をいただきました。
-竹中さんに賛同するとまた叩かれるのですが…「正社員特権」を見直すべき理由-
それでも、雇用の流動化は政治家としての私の持論の一つであり、この動画の中身にはかなり共感したので、書いておきたいと思います。
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まず、竹中さんの主張を整理します。
日本では1979年の東京高裁判決以降、正社員はよほどのことがない限り解雇できない、という運用が定着しました。
そうなると、企業にとって正社員の人件費は「固定費」になります。売上が半分になっても削れない。
だから企業は正社員の採用に慎重になり、その外側で非正規雇用を増やしてきた。
竹中さんはこれを「非正規が特殊なのではなく、正規雇用が特殊なのだ」と表現しています。
よく「派遣を解禁したから非正規が増えた」と言われますが、竹中さんによれば、非正規雇用のうち派遣が占める割合はごく一部です。
増えたのはパートやアルバイト、契約社員。
このあたりの事実関係は、もう少し冷静に共有されてもいいのではないかと感じます。
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私自身、以前から「雇用の流動化」には賛成の立場です。金銭解決のルールを整備して、いわゆる正社員の「特権」を緩やかにしていくべきだと考えてきました。
こう言うと「クビにされる人が増えるだけ」と反論されます。
しかし、今の「解雇できない仕組み」にも大きなデメリットがある。「どちらがよりマシか」で比べるべきです。
では、今の仕組みのデメリットとは何か。
典型例は就職氷河期です。景気が悪くなっても正社員を減らせないので、企業は新卒採用を絞る。
しわ寄せは、まさにこれから働き始める若者に集中しました。
平時も同じです。景気悪化に備えて人員を最低限にしておき、足りない分は残業で埋める。結果として、慢性的な長時間労働に。
人員調整の手段は転勤しかないので、転勤に応じられない人は評価されにくいということにもつながってきます。
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さらに重要なのが、このしわ寄せを最も受けてきたのが、女性だということです。
解雇できない正社員を前提にすると、賃金も昇進も「長く勤め続けること」が軸になります。いわゆる年功序列です。
この仕組みのもとでは、出産や育児でキャリアを一時的に離れた人は、その間の「年功」が積み上がりません。復帰しても同期から大きく遅れ、取り戻すのは困難です。
一度辞めてしまえば、正社員として再び採用される道はさらに狭くなります。だから多くの女性が、再就職ではパートや非正規を選ばざるを得ませんでした。
長く勤めた人ほど報われる仕組みは、裏を返せば、途中で離れた人ほど報われない仕組みです。
女性の活躍をさらに本気で進めるなら、この構造に手を付けないわけにはいきません。
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もう一つ、あまり語られない現実があります。
「日本は解雇規制が強い」と言われますが、それは主に大企業の正社員の話です。
中小企業では、事実上の解雇がすでに少なくありません。
突然「明日から来なくていい」と言われる。退職を迫られる。法律上は不当でも、労働組合もなく、裁判を起こす時間もお金もない人がほとんどです。
結局、わずかな解決金で泣き寝入りするか、何も受け取れずに終わるケースもあります。
つまり今の日本は、「守られすぎている人」と「まったく守られていない人」に分かれているわけです。
だからこそ、金銭解決のルールを明確にすることは、規制緩和であると同時に、守られていない人を守ることにもつながります。
解雇するなら、この水準の補償を払う。そのルールがはっきりしていれば、泣き寝入りは減らせるはずです。
ルールがないことが、一番弱い人を苦しめる。私はそう考えています。
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そして、雇用の流動性そのものがセーフティネットになる、という視点も大事です。
今の職場が合わなくても次が見つかりやすい社会であれば、一社にしがみつく必要はありません。転職しやすさは、働く人にとっての交渉力でもあります。
とはいえ、流動化だけを進めればいいとは思いません。
解雇されやすくなるリスクは、失業給付や再訓練の機会、所得保障でしっかり受け止める必要があります。
私が給付付き税額控除にこだわっているのも、この「会社ではなく制度で人を守る」仕組みが欠かせないと考えているからです。
雇用の流動化と社会保障の再設計は、セットです。
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竹中さんの主張すべてに同意するわけではありません。
ただ、「正規も非正規もなく、働き方の間に制度的な不平等がない社会をつくる」という方向性には、私も大賛成です。
誰を守り、誰が割を食っているのか。そもそも論から考えてみる価値はあると思います。
— おときた駿 / 元参議院議員、しゃほさげフェニックス (@otokita) October 10, 2026
読んでくださった皆さま、コメントをくださった皆さま、ありがとうございます。
反響の中身はというと、ざっくり2:8、よくて3:7くらいの割合で批判が多数でした。
「結局クビを切りやすくしたいだけだろう」「竹中の手先か」といった厳しい声もたくさんいただいています。
ただ、私はこれを「炎上」だとは思っていません。
一方的な批判だけでなく、賛成も反対も含めて、これだけ多くの人が自分の働き方や会社との関係について意見を書いてくれた。それ自体が、議論が起きている証左です。
批判の中にも、「中高年の再就職は現実に難しい」「セーフティネットが先だ」など、真剣に考えるべき指摘がいくつもありました。
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実は、この雰囲気には既視感があります。
3年ほど前、社会保障制度改革、とりわけ医療の窓口負担の引き上げについて発信していたときも、反応はほぼ同じでした。
「高齢者いじめだ」「弱者切り捨てだ」。発信するたびに、批判が圧倒的多数でした。
それが今はどうか。少なくともネット上では、賛否が5:5、あるいは賛成のほうが多いと感じる場面が増えています。
現役世代の社会保険料負担がこのままでいいのか。その問題意識が少しずつ広がり、潮目が変わったのだと思います。
潮目はなぜ変わったのか。
私は、特別な一手があったわけではないと考えています。
制度の数字や構造を、何度も、繰り返し、説明し続けた。現役世代の手取りが増えない理由を、具体的に示し続けた。その積み重ねで、「言われてみれば確かに」と感じる人が少しずつ増えていったのだと思います。
最初から賛成多数の政策は、たいてい誰かがもう実現しています。
まだ実現していない改革というのは、ほぼ例外なく、最初は反対が多いものです。
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雇用の流動化についても、私は同じ流れになると確信しています。
それがいつになるかは、正直わかりません。数年後かもしれないし、もっと先かもしれません。
ただ、前回の記事でも書いたように、今の仕組みで割を食っている人は確実にいます。就職氷河期を経験した世代、出産や育児でキャリアが途切れた女性、ルールがないまま泣き寝入りしている中小企業の働き手です。
この人たちの存在に光が当たれば、議論の前提は必ず変わっていきます。
批判の多い発信を続けるのは、楽なことではありません。それでも、賛成が多い話だけをしていては、改革は前に進みません。
コツコツと政策発信を続けます。引き続き、賛否どちらのご意見もお待ちしています。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年10月12日の記事より転載させていただきました。







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