サントリー金麦が「ビール」になった!:酒税の歴史に残る「悪税」の後始末

2026年10月、ビール業界に大きな変化が起きました。ビール、発泡酒、第三のビール(新ジャンル)の酒税が、350ml当たり54.25円に一本化されたのです。

これを受け、サントリーは10月6日から「金麦」「金麦〈糖質75%オフ〉」をビールとして発売しました。長年「ビールではないビール」として親しまれてきた金麦が、ついに本物のビールになったのです。

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しかし、このニュースは単なる商品リニューアルではありません。日本の酒税がいかに企業活動をゆがめてきたかを示す、経済学の教科書に載せたいような事例だという指摘も頷けます。

税金を逃れるために生まれた技術革新

そもそも、なぜビールと発泡酒で税率が違っていたのでしょうか。

日本の酒税は、麦芽の使用比率や原材料、製法などによって商品を細かく分類し、異なる税率を適用してきました。味も用途も似ているのに、法律上の分類が違えば税金も違うのです。

そこでメーカーは知恵を絞りました。麦芽比率を下げながらビールに近い味を実現する発泡酒を開発し、さらに税負担の軽い第三のビールを生み出しました。

ところが商品が売れると、政府は税制を改正して税負担を引き上げます。企業が新たな商品を開発すれば、また税制が追いかけてきます。

まさに税制の「後出しジャンケン」です。

社会全体でどれほどの無駄が生まれたのか

問題は税負担だけではありません。

本来、企業の研究開発は消費者が求める味や品質を改善するために行われます。しかし酒税の税率差は、「いかに税金の安い区分でビールらしい味を再現するか」という開発競争を生みました。

そのために多大な研究開発費、技術者の労働力、設備投資が投入されました。

もちろん、有益な醸造技術も生まれたでしょう。しかし税率差がなければ必要とされなかった投資も少なくないはずです。これは税制が市場の資源配分をゆがめる典型例です。

今度は居酒屋で「生ビール」が金麦に?

皮肉なのは、税率が統一されると金麦そのものがビールになったことです。

サントリーは麦芽比率を高め、従来の味わいを維持しながらビールとして発売しました。飲食店向けの樽生も展開する予定です。新ジャンルは今回の改正で増税となりますが、サントリーは価格帯を据え置きに近い形に抑えつつ、麦芽比率を引き上げることで「デイリービール」として価値を高める戦略をとっています。

「簡素・公平・中立」とはほど遠い酒税

ビール類の税率一本化は前進ですが、酒税全体を見れば問題は残ります。

焼酎、日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、リキュール、みりんなど、酒類には今なお複雑な分類と税率が存在します。

税制の基本原則は「簡素・公平・中立」のはずです。ところが日本の酒税は、そのいずれからも遠いものです。

今回の金麦のビール化は消費者にとって朗報ですが、政府が作った複雑な税制のために、企業が何十年も余計な競争を強いられてきたことを忘れてはなりません。

酒税の一本化は改革の成果というより、長年の政策の失敗をようやく修正したものではないでしょうか。

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