富良野・麓郷へ。「北の国から」黒板五郎が遺したもの

富良野に来たわけで。

富良野に来たのなら、やっぱり富良野ワインを飲みたいと思ったわけで。

富良野ワインは富良野の町のちょっと北の小高い丘で醸造されており、

その近くにはワインの原料になるブドウが植えられているわけで。

ブドウ園の上にはラベンダー畑があって、季節外れの花が少しだけ僕の目を楽しませてくれたわけで。

…なわけで。

富良野の旧布部駅に来ました。ここは倉本聰さん脚本の大人気ドラマ「北の国から」の始まりの場所。1981年、連続ドラマの第1話で、東京から富良野に移ってきた黒板五郎と純、蛍が列車を降り立った駅です。

布部駅、駅舎は今も残されていますが列車はもうここには来ません。2024年4月1日、根室本線の富良野駅から新得駅までの間が廃止されたことにより、この駅も廃止されました。

綺麗に整備され、ハロウィンの時期らしくホーム状のテーブルにはかぼちゃが飾られています。

今も地元の方が保存に努めており、この日も駅前で駅そばを振舞うイベントが行われるとのことでした。

駅には布部駅に関するグッズも販売されています。「子供がまだ食ってる途中でしょうが!ラーメン」は「北の国から ’84夏」で黒板五郎が店員に放った名セリフをもとにしたラーメン。残念ながらしょうがは入ってません。ちなみにドラマ中のラーメンも1杯500円でした。

おりしも9月28日、「北の国から」の脚本を手掛けた倉本聰さんが亡くなったことが発表されました。彼を追悼する献花台が旧布部駅にも置かれ、彼の死去を悼んでいました。

旧布部駅から、彼ら3人が住んだ麓郷地区に向かいます。1981年の連続ドラマから2002年の最終話までの間に何度も家を建て替えてますが、それらの家々は麓郷地区の3か所に分けて展示されています。まず最初に訪ねたのは「麓郷の森」。ドラマで使用された丸太小屋と、五郎の3番目の家が展示されています。

丸太小屋の内部。

入口に倉本聰さんのメッセージ。
黒板五郎役の田中邦衛さんが語りかけているよう。

丸太小屋は『北の国から』の初期を象徴する建物のひとつ。黒板五郎が、純や螢と暮らすために自ら建てた家です。第17話から建築が始まり、最終回の第24話で完成します。自分たちの暮らしに必要なものを自分たちの手でつくる。そんな五郎の生き方は、その後も『北の国から』を貫く大切なテーマのひとつとなっていきます。

丸太小屋の先には「五郎の3番目の家」があります。丸太小屋は純とその友人の失火により焼失してしまい、その後移り住んだ農家の廃屋です。屋根の上に乗る風車はドラマ中で純が五郎の誕生日にプレゼントしたもの。ドラマ中では雪で壊れてしまいますが、この家の象徴的な存在となっています。

道中の景色は秋一色なわけで。

「麓郷の森」から少し車を走らせて、今度は「五郎の石の家」と呼ばれる施設に向かいます。

「五郎の石の家」のある林にはテントウムシがたくさんいました。10年分のテントウムシをいっぺんに見た気がします。レンタカーの中にも1匹入り込んで最後まで車の中を飛んでいました。

林を抜けると広場があり、その向こうに一軒の家があります。これが「五郎の石の家」。1989年に3番目の家に住んでいるさなかに建て始めた五郎の家です。丸太小屋の次は石の家。五郎は自動車整備士だったんですが建築の知識はどこから仕入れたんでしょうかね。

石の家の中にあるのは五郎自慢の石の風呂。水漏れもさせずこんな風呂も作れる五郎の家づくりの能力の高さには頭が下がるばかりです。こんなお風呂入ってみたいですね。

石の家の外にエゾシカがいました。里と山の区別がつきにくくなっている昨今、野生動物が町中に現れることが珍しくなくなりましたね。「ルールルル」と呼んでいる人がいましたが、すみません、それは蛍がキタキツネを呼ぶ時の声です。

石の家の先には一軒の木造家屋がありました。ここは五郎たちが富良野に来て最初に住んだ家。電気もないような生活は、東京で生活していた純や蛍には考えられず当初不平不満を漏らしていました。2006年、「北の国から」の放送25周年を記念して再現されたものです。

石の家から市街地の方に車を走らせ、最後に訪ねたのは「拾ってきた家」。「北の国から」最後の作品、「北の国から ’02遺言」で登場した廃材を拾い集めて作った家が展示されています。五郎の家づくりの集大成のような存在で、大量廃棄時代にたいする批判が込められています。

現代風のおしゃれなカウンターキッチン。
吊革なども使用されています。

これは純とその妻、結の新居としてつくられた家。廃車となったバスが半分に切って作られています。ほかにも乾燥機の窓や廃車の窓なども活用して作られたまさに廃材を改装して作られた家です。

こちらは有人の中畑の娘、すみえの家として建てられたもの。こちらも金庫やゴンドラなどの廃材を使って建てられています。捨てるくらいなら、拾ってきてもう一度生かす。丸太で家を建て、廃屋を直し、畑から出た石で家を造ってきた五郎。その家づくりが最後には「捨てられたものを生かす」という思想にたどり着いたのです。

五郎の石の家のそばには黒板五郎の墓があります。ドラマの中で黒板五郎が亡くなる場面はありませんが、2021年に五郎を演じた田中邦衛さんが亡くなり、翌年、一周忌にあたって倉本聰さんが黒板五郎に対する思いにけじめをつけるために建てられました。

アーアーアアアアアーア

放送開始から45年、最新作からも25年が経とうとしている「北の国から」。四半世紀を経た今も五郎らの住んだ家には多くの観光客が訪れ、伝説のドラマを懐かしんでいます。倉本聰さんが生んだ黒板五郎、純、蛍らの世界は今もドラマを見た私たちの心に生き続けています。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2026年10月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。

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