ラトビア大統領「単なるアンチ・ロシア感情ではない」

ラトビアのヴィーチェ=フレイベルガ大統領「単なるアンチ・ロシア感情ではない。国民はソ連共産主義の圧政下で苦しんできた。共産政権時代に経験した様々な痛みが依然国民の記憶から払拭されずに残っている」

ウィーンを実務訪問したラトビアのワイラ・ヴィーチェ=フレイベルガ大統領が2003年7月12日、宿泊先のホテル内で当方との会見の中で吐露した言葉だ。今月3日に実施されたラトビア議会選をフォローしていた時、同大統領が「国民は欧州連合(EU)に加盟を希望している」と会見の中で何度も強調していたことを懐かしく思い出した次第だ。

当方とのインタビューに応じるヴィーチェ=フレイベルガ大統領(任期1999年7月~2007年7月)写真は、2003年7月撮影

2003年9月、ラトビア国民はEU加盟を問う国民投票を実施する予定だった、会見はその2か月前に行ったものだ。だから必然的に会見ではラトビアのEU加盟問題が主要テーマとなった(ラトビアは2004年5月、EUに加盟。それに先立ち、2004年3月29日に北大西洋条約機構(NATO)に入った。

ヴィーチェ=フレイベルガ大統領は1999年7月、バルト3国初の女性大統領に就任。当方がインタビューした時は、同大統領が再選を果たしたばかりだった。大統領の強い信念と指導力は「ラトビアのサッチャー」と呼ばれていた。5か国語を駆使し、ラトビアの外交を主導していた。

ラトビア国内のロシア系住民の人口は2026年現在、約42万6,000人で、これは全人口の約23%、バルト三国の中で最も高い割合だ。首都リガや、東部の第2の都市ダウガウピルスなどの都市部に特に集中して暮らしている。

当方の質問がラトビア国民の強いアンチ・ロシア感情に及んだ時、大統領は上記の言葉を述べた。大統領自身、7歳の時に西側に亡命、カナダのモントリオール大学心理学教授を経て、祖国に帰国した経歴がある。ラトビア国民は共産主義世界が如何なる社会かをよく知っている。国民には反ロシア感情が根深い。

大統領は「わが国民は共産主義の圧政下でダブル犠牲者だ。独立を放棄させられ、ソ連に強制的に併合させられたからだ。そして多くのロシア人がわが国に入ってきた」と説明した。そのうえで「ラトビアの独立に忠誠を宣言したロシア人に対しては国籍を供与してきた。ラトビアの国籍とは、欧州の国籍を意味するのだ」と強調した。

あれから23年が経過する。ロシアのプーチン大統領が2022年2月末、ウクライナに武力侵攻して以来、バルト3国の政情も緊迫してきた。NATO加盟国のラトビアは、選挙を安全に実施するために同盟国に支援を要請。これを受け、ドイツ空軍はノイブルク・アン・デア・ドナウに拠点を置く第74戦術航空団から、ユーロファイター4機と約40人の兵員を派遣した。彼らは1週間余りにわたってラトビアに駐留し、NATOの統合防空・ミサイル防衛体制を支援する任務にあたってきた。

冷戦時代、旧ソ連・東欧共産圏で大統領や首相、外相らとはインタビューを重ねてきたが、ヴィーチェ=フレイベルガ大統領は当方にとって初めての女性大統領だったこともあって今も記憶に残っている。特に、大統領のジャケットの青色が強烈に当方のマインドパラスに刻み込まれた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年10月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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