
(前回:今日の一行は、半年後に効いてくる)
AIは、とにかくアドバイスをしたがります。「今日の会議、なぜか疲れた」と一行送っただけで、「こうしたほうがいいですよ」と提案が返ってくる(こちらは、聞いてほしかっただけなのですが)。あるいは「そうですね、よくわかります」で終わってしまう。どちらも、もったいない使い方です。
『AI「自分データベース」』(永松ゆり著)standards
そういえば人に話を聞いてもらうときも同じではないでしょうか。愚痴をこぼした相手から正論を返されて、かえって疲れた経験のある人は少なくないと思います。話を戻すと、AIにも最初に「質問する係」をお願いしておけばいいのです。
おすすめしたい指示文(プロンプト)はこれです。
「これから、その日に感じたことや気づきを話します。私が話し終えたら、内容を深掘りする質問を、2~3個してください。アドバイスは、しなくていいです。私が自分で気づけるよう、問いかけてください」
ポイントは「アドバイスは、しなくていいです」の一文で、これがないとAIはすぐ提案を始めます。GeminiでもChatGPTでもClaudeでも同じように使えて、同じ会話を続けるあいだは、あとはその日に感じたことを書くだけです。
新しい会話のたびに貼り直すのが面倒なら、指示をあらかじめ登録しておく機能を使う手もあり、Claudeの場合はすべての会話に効く個人設定の指示と、プロジェクトごとの指示があります。
たとえば「友だちと会って、楽しかったのに、なぜかどっと疲れた」と書くと、AIはこう聞いてきます。「疲れを感じたのは、どんな瞬間でしたか?」「その疲れは、人数や場所から来るものですか? それとも、会話の内容のほうですか?」
ここで少しだけ自分の奥に潜ると、大人数の集まりのあとはいつも疲れていることや、今日もずっと聞き役で、本当は自分の話も聞いてほしかったのかもしれないことに思い当たります。たった一行から、5分ほどで自分の価値観の輪郭が見えてくる。この瞬間が、私はいちばん面白いと思っています。
書き始めはひと言、終わりは「今日の話はここまでだな」と思ったところ。書く力はいりません。今日の一瞬を流さずにすむかどうか、それだけの違いです。
尾藤克之(コラムニスト、作家)
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