事業経営において、自転車操業とは、直前の入金によって、辛うじて出金が可能になっている状況だが、必要資金額の最小化とは、滞留資金の最小化であって、要は、事業活動の継続のなかで、順次に入金してくる資金は、長く滞留することなく、速やかに出金されていくわけだから、自転車操業と全く同じことになる。
自転車操業は、入金が少しでも遅れれば、直ちに出金が不可能になるものとして、危険なものだと考えられているが、見方を変えれば、資金の無駄な滞留を最小化するものとして、優れた効率経営であるとも評価され得るのである。

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事業活動においては、原材料在庫であれ、製品在庫であれ、在庫の保有を最小化するのは経営の基本だが、他方で、こうした効率経営のもとでは、事故等によって物流が一時的に断絶すれば、容易に事業活動の中断が生じるという危険性がある。しかし、世の常識においては、効率経営の利点が強調されて、それに付随する危険については、注意が促されるのみである。
これに対して、金融の常識は世の非常識というのは、ここでも妥当していて、資金という特殊な在庫の保有を最小化することについては、危険性が著しく強調されて、効率経営の利点は顧みられることが少ないのである。これは、いうまでもなく、出金が不能となる事態は、直ちに経営破綻につながるので、特別な危険として位置づけられているからであるが、実は、この危険に備えるために、資本があるのである。
現実世界は不確実性に満ちていて、計画は常に狂い続けて、出金の必要あるときに、手元資金の枯渇する事態は避け難く生じるから、一定の資金の余裕は不可欠で、その際、弁済や利払いの必要のない資本は非常に重要な役割を演じている。そして、事業の異なるのに応じて、事業に内包する不確実性の程度も異なるから、必要な余裕資金額や資本額も異なってくる。いうまでもなく、事業に伴う不確実性が大きいほど、より大きな余裕資金や資本が必要になるわけである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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