東京新聞の望月衣塑子記者と思想家の内田樹氏による共著『常識なき世界を生き延びるために』(朝日新書)に、事実と異なる記述が複数あったことが判明した。朝日新聞出版は10月27日、公式サイトに「お詫びと訂正」を掲載した。
【訂正情報あり】朝日新書の対談本『常識なき世界を生き延びるために』の複数箇所の訂正が掲載されています。訂正箇所の話者はいずれも望月記者で、日本中学生新聞・川中だいじ君に関する記述でしたが、そのことが訂正文に明記されていません。出版社Xアカウント @asahi_pub_PR やトップページでの告知もなされていません(28日10時現在)
→ https://t.co/wKkdFOfeFC— 楊井人文 Hitofumi Yanai ⏸️ (@yanai_factcheck) October 28, 2026
問題となったのは、「日本中学生新聞」を創刊した高校生の川中だいじさんに関する記述だ。川中さんは28日、Xで「望月氏がぼくに関して話をしている内容のほとんどが事実ではありません」と抗議した。
望月氏の記述は、詰めが甘いという次元を超え、捏造・歪曲すら疑われかねないものです。取材相手の発言を自分の息子の言葉にすり替え、ありもしない「老害」呼ばわりやエピソードまで書き込んでいます。本人に一本確認すれば防げた話で、しかも相手は10代の方であり言語道断と言わざるを得ません。本人からは今も説明も謝罪もないといいます。
これをそのまま通した朝日新書の編集と校閲もにも責任の一端はあります。訂正文で誤りの中身も話者も明示しないのでは、読者への説明責任を果たしたとは言えません。実在の人物に触れる箇所は当人への事実確認を必須とする。この基本を徹底すべきです。— 峯村 健司 / Kenji Minemuraメルマガ「峯村健司のインテリジェンスサロン」やってます! (@kenji_minemura) October 28, 2026
「老害と呼ばれた」「教師に新聞を剥がされた」は事実ではない
著書には、川中さんが周囲から「老害」と呼ばれていたとの記述があった。しかし実際には、若者の間で「老害」という言葉が使われることについて、川中さん自身が問題提起した話だったという。
さらに、川中さんの発言が望月氏の息子の発言として紹介されていたほか、小学生時代に学校で新聞を張り出し、教師に剥がされたというエピソードも事実ではなかった。
「日本中学生新聞」の創刊経緯についても、外務省への取材を断られたことがきっかけだったとの記述を川中さんは否定している。
川中さんは17日に出版社へ訂正を申し入れたが、28日時点では十分な経緯説明がないと訴えた。事実と異なる話を掲載されたショックに加え、訂正のために時間と労力を費やしたことへの憤りを表明した。
内田氏と望月氏が謝罪
内田氏はXで共著者として謝罪し、校正段階で誤りに気付かなかったことを認めた。
川中さま。こんにちは。内田です。望月さんとの共著の中に川中君について誤った記述があったこと、朝日新聞出版から連絡を頂きました。お詫びと訂正がなされましたが、僕も共著者としてお詫びを申し上げます。ゲラを読んだ時点で気付かずに申し訳ありませんでした。
— 内田樹 (@levinassien) October 28, 2026
望月氏もXで謝罪し、編集者を通じて直接説明と謝罪の機会を求めたと明らかにした。
川中さんについて事実と異なる記述を公表してしまい、深くお詫び申し上げます。
ご自身の発言や経験が違う形で記されたことに加え、先生や同級生にも関わる事実と異なる内容が広まったことへのショックと憤りを、重く受け止めています。著者として、公表前に一つひとつの内容を十分に確認すべきでした。また、訂正を求めるために多くの時間と労力を費やさせてしまったうえ、私からお詫びとご説明をお伝えすることに時間がかかってしまいました。誠に申し訳ございません。
編集者を通じて、直接お詫びとご説明をする機会をいただきたい旨をお伝えしました。川中さんのお気持ちとご意向を尊重し、真摯に対応してまいります。
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) October 28, 2026
一方、産経新聞の取材には、対談の編集過程で別の話と内容が混同された可能性があると説明。録音や書き起こし、文章化の経緯を確認しているという。
望月衣塑子「私が対談で話していた内容が、別の話の内容と混同されて表現されていたとみられる箇所があり、現在、対談時の録音・書き起こしと、それをもとに文章にまとめた経緯を含めて確認している」
このコメントから考えるに、書いたのは本人ではなさそうですね。
本人の口から経緯の説明が必要。— 石野つぶて (@tsubute_ishino) October 29, 2026
内田氏も著作を「出し過ぎ」ているという認識はあったようだ。自著のクオリティ・コントロールができていないという自覚まではあったのだろうか。
望月衣塑子さんとの対談本『常識なき世界を生き延びるために』(朝日新書)が重版になりました。累計17000部。みなさん、ありがとうございます。この後また『日韓連携』と『雑に生きる』が出ます・・・すみません。出し過ぎで。😥
https://www.amazon.co.jp/%E5%B8%B8%E8%AD%98%E3%81%AA%E3%81%8D%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%8D%E5%BB%B6%E3%81%B3%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB-%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%86%85%E7%94%B0-%E6%A8%B9/dp/4022953888/ref=sr_1_5?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=3MYAIWY8TSWWJ&dib=eyJ2IjoiMSJ9.83oe6fBhpiINr0UlQrXaBjDhT6AqelRwCwnpJhaQ28cfYsxo632O8eBF5GefpQQosJIrMUtlhPll62mtgQWPghzo13ezu1QWNzBWnDbDfDUFglU2iKABQbApowNidGV1k__Bi3gLFrEVNpdrxi42V991rcbWxt1sC3aGAFPfwXRlHvQ5dLMqLDsJFDNHyWa-w2BtDROAHe7UHme7LLnEalL0fcxFUMf-bHfGOK0qhxc8I89kRji3OXMgMQ48U9FPatGZAQcQQxmGPjWc0r5Glf2CzQ1N5bttkeX7ILZYp7I.Mgltws4b344feW-O38SH12ilZ_bCxJwaG5bAOffmcds&dib_tag=se&keywords=%E5%86%85%E7%94%B0%E6%A8%B9&qid=1789372293&sprefix=%E5%86%85%E7%94%B0%E6%A8%B9%2Caps%2C204&sr=8-5— 内田樹 (@levinassien) September 14, 2026
ジャーナリストとしての説明責任
今回の問題は単なる誤字脱字ではない。実在する高校生の発言が別人のものとして紹介され、存在しないエピソードまで掲載されたことは重大だ。
望月氏は日頃、権力者に説明責任を求めるジャーナリストとして活動してきた。その姿勢は、自らの著書に事実誤認があった場合にも当然求められる。
なぜ複数の誤りが校正を通過したのか。訂正と謝罪だけでなく、編集過程の検証と当事者への丁寧な説明が求められる。
9月新刊🔆『常識なき世界を生き延びるために』
内田 樹 著 / 望月 衣塑子 著知の巨人と闘う新聞記者が、政治・社会・メディアの末期的現状を徹底討論。この国に漂い続ける閉塞感を打開する一手はあるのか。
この国の向かうべき道筋を考える。
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『常識なき世界を生き延びるために』の書影






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