【天丼500円→730円】てんやは「客離れ」より「価値がわかる客」を選び始めたのか

庶民の味方として親しまれてきた天丼チェーン「天丼てんや」で、客数の減少が続いています。2026年8月の既存店客数は前年同月比9.4%減、9月は10.9%減と、2か月連続で約1割減少しました。

【参照リンク】500円だった天丼が730円…「てんや」深刻な客離れ 「庶民の味方」も値上げ続いて2か月連続で客数約1割減

かつて500円だった看板商品の天丼は、現在730円です。もちろんこれを「値上げによる客離れ」と見る向きもありますが、別の見方もできます。てんや自身が、安さだけを求める客から、価格に見合う価値を求める客へと、顧客層を転換しようとしているのではないでしょうか。

てんやHPより

値上げは単なるコスト転嫁ではない

飲食業界では原材料費や人件費、エネルギー価格の上昇が続いています。「値上げすればいい」と簡単に言う人もいますが、それほど単純ではありません。値上げしなければ利益が出ず、値上げすれば客が減るというジレンマがあります。

しかし、てんやは単に従来の商品を値上げしているわけではありません。国産食材の活用やメニューの充実、ゆっくり食事を楽しめる店舗への改装など、ブランドの刷新を進めているといいます。

つまり、安さを最大の魅力とするファストフードから、品質や食事体験にも対価を払ってもらう業態への転換を目指していると考えられます。

客数より客単価を重視する経営

てんやの9月の客数は10.9%減少しましたが、客単価は8.0%上昇しました。売上高は3.8%減少しており、現時点では客単価の上昇で客数減少を補えていません。

ただし、客数が減ったからといって、経営戦略が失敗したとは限りません。

外食ビジネスアナリストの三輪大輔氏によれば、例えば、改装店舗では売上が増加したという実績もあるといいます。重要なのは、客数だけではなく、客単価や利益率、改装店舗の収益性を総合的に評価することです。

2019年から店舗数が減少したことも、コロナ禍による不採算店の整理を考慮すべきで、値上げだけが原因とはいえません。

「庶民の味方」を卒業するのか

さらに食品の消費税減税が実施され、外食の税率が10%に据え置かれれば、スーパーの弁当や総菜との価格差が広がります。低価格競争を続ける外食チェーンには厳しい環境です。

そうした中で、てんやが目指しているのは、単に安い天丼を大量に販売するビジネスからの脱却という面もあります。

もちろん、顧客層の転換が成功する保証はありません。従来の客を失い、新しい客を獲得できなければ、経営は苦しくなります。

しかし、すべての客に安さを提供する時代が終わろうとしている現在、てんやの変化は、外食産業全体が直面する構造転換を象徴しているのではないでしょうか。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント