校長「給食費4600万円を自腹で穴埋め」は公教育のダメさが全て詰まっている

京都府木津川市の市立小学校で、給食費や教材費などの徴収や会計処理が適切に行われず、校長と前事務職員が計約4600万円を私費で穴埋めしていたことが明らかになった。

前事務職員は2012年度から2024年度まで1人で経理を担当し、未納者への督促などを怠っていた。2021年度以降、約2000万円を私費で補填した。

2024年5月に問題を把握した校長も、「大ごとにしたくなかった」として教育委員会に報告せず、約2600万円を補填した。現在も約800万円の未払いが残り、市教委は校長に補填を求める方針だ。

「不祥事を起こさない」が管理職の最大目標に

この事件で最も注目すべきなのは、校長が2600万円もの私財を投じてまで問題を隠そうとしたことである。

一部では「給食費を学校の先生が補填している」と”美談”にもなっているが、背景にあると考えられるのが、教育委員会の歪んだ管理職評価制度である。

学校管理職にとって、不祥事は人事評価や昇進に響きかねない。問題を適切に発見して報告することより、問題を起こさず、教育委員会に迷惑をかけないことが優先される。

今回の校長が実際に人事評価を恐れていたかは不明だが、「大ごとにしたくなかった」という説明は、問題の解決よりも問題の隠蔽を優先する組織風土を象徴している。

一般教員に及ぶマイクロマネジメント

こうした管理職の心理は、日常の学校運営にも悪影響を及ぼす。

管理職は教員の行動を細かく監視し、些細なミスや保護者からの苦情すら起こさないよう、過剰な指示や報告を求める。

授業、保護者対応、学校行事、生活指導に至るまで、失敗を避けるためのマイクロマネジメントが広がる。

教員は子どもと向き合う時間より、管理職への説明や書類作成に追われる。教育の質を高めることより、問題を起こさないことが優先されるのである。

教育委員会にも問われる責任

今回、市教委は校長に管理監督責任があるとして、残る未払い金の補填を求めている。しかし、13年近くも1人の職員に経理を任せ、巨額の資金不足を見抜けなかった教育委員会の責任も重い。

必要なのは監査の強化だけではない。問題を早期に発見・報告した管理職を評価し、隠蔽した管理職を厳しく問う制度への転換ではないだろうか。

言うまでもなく最大の被害者は児童生徒

学校管理職の仕事は、教育委員会から高く評価されることでも、自分の経歴に傷をつけないことでもない。教員が安心して教育活動に専念できる環境を整えることである。

不祥事を起こさないことが自己目的化すれば、管理職は教員の監視に力を注ぎ、教員は管理職の顔色をうかがうようになる。その結果、教育現場は疲弊し、子どもたちのために使われるべき時間とエネルギーが失われる。また、教職が敬遠される最大の原因は、待遇などではなく、この「内向き過ぎる管理職の評価基準」に端を発していると思う。

そして、最大の被害者はいうまでもなく児童生徒である。

4600万円もの私費補填という異常な事件を、単なる会計処理の問題として片付けてはならない。

学校管理職の評価基準を「不祥事を起こさないこと」から「問題を適切に解決し、教育の質を高めること」へ転換すべきであるが、せめて「問題を隠蔽しようとするインセンティブ」がなくなるような教育行政を行うべきだ。

years/iStock

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