
昔の若者より、今の若者の方が社会保険料負担は重い。
これは若者の生活実感や将来不安にもとづく印象論ではない。総務省統計局『家計調査』によれば、1985年と2025年の同じ年齢層を比べると、実収入に占める社会保険料の割合は明らかに上昇している。
若い現役世代を代表する35~39歳では、負担率が1985年の6.94%から2025年の9.82%へ上昇した。40年間で2.88ポイントの上昇である。
その原因は明確である。
実収入も増えたが、社会保険料はそれを大きく上回る速さで増えたのである。
実収入は約61%増、社会保険料は約128%増
35~39歳の実収入は、1985年、いわゆる団塊の世代は41万2868円だったものが、2025年時点では66万4955円となっている。40年間の増加額は25万2087円、増加率は約61%である。
同じ期間に、社会保険料は2万8646円から6万5276円へ増えた。増加額は3万6630円、増加率は約128%である。当時の団塊の世代の保険料負担は現在の同じ世代よりもはるかに軽かった。

図表1 35~39歳の実収入と社会保険料
実収入が約61%増える間に、社会保険料は約128%増えた。社会保険料の増加率は、実収入の増加率を大幅に上回った。そのため、負担率は6.94%から9.82%へ上昇した。
現在の若者の問題は、収入が増えても、社会保険料がそれ以上の勢いで増えたことにある。
40年前は、すべての年齢層が6%台だった
社会保険料が重くなったのは、35~39歳だけではない。
1985年には、35~64歳のすべての年齢層で負担率が6%台だった。
2025年には、35~39歳が9.82%となり、40歳以上ではすべて10%を超えた。50~54歳では11.58%、55~59歳では11.51%、60~64歳では11.43%に達している。

図表2 年齢階層別の負担率
1985年から2025年までの上昇幅は、35~39歳で2.88ポイント、40~44歳で4.05ポイント、45~49歳で4.26ポイント、50~54歳で4.98ポイント、55~59歳で4.83ポイントである。
最大は60~64歳であり、6.18%から11.43%へ5.25ポイント上昇した。
40年前には、どの年齢層でも6%台だった負担率が、現在では10%前後から11%台となっている。
社会保険料の負担増は、若者だけに起きた変化ではない。現役世代全体から、以前より大きな割合の実収入が差し引かれるようになったのである。
負担率は11%前後の水準に定着した
35~64歳の負担率を単純平均すると、1985年は6.63%だったものが、1995年には7.65%、2005年には9.03%、2015年には10.91%、2025年には11.00%となった。40年間で4.38ポイントの上昇である。

図表3 現役世代の負担率の推移
とりわけ上昇幅が大きかったのは、2005年から2015年までの10年間である。負担率は9.03%から10.91%へ1.88ポイント上昇した。
2015年から2025年までの変化は0.10ポイントにとどまる。しかし、負担が軽くなったわけではない。1985年の水準へ戻らず、11%前後に張り付いている。
負担増は解消されたわけではなく、高い水準で固定されたのである。
社会保険料が現役世代全体を直撃した
昔の若者より今の若者の方が負担は重い。しかし、負担増は若者だけに集中していない。
40歳以上では、1985年から2025年までの上昇幅がすべて4ポイントを超える。35~39歳の2.88ポイントに対し、50~54歳では4.98ポイント、60~64歳では5.25ポイントである。
社会保険料の膨張は、現役世代全体を直撃し、その上昇幅は中高年層でさらに大きい。
これは、若者、中高年のどちらの負担が重いかではなく、現役世代の実収入を上回る速さで膨張してきた社会保険料こそが問題なのである。
給与明細では見えない事業主負担
ここまでの数字が示しているのは、家計の実収入から差し引かれた社会保険料である。
健康保険や厚生年金には、これとは別に事業主負担がある。事業主負担は本人負担分として給与明細に表示されないが、企業にとっては従業員を雇用するための人件費である。その増加は、企業が賃金や雇用へ配分できる余地にも影響し得る。
事業主負担の全額がそのまま労働者へ転嫁されるとは限らない。賃金や雇用への影響は、労働市場、企業収益、価格設定、雇用形態などによって異なる。
それでも、今回の数字が社会保険料負担の全体ではないことは重要である。
給与明細に直接現れる家計側の負担だけで、すでにこれほど重くなっている。
社会保険料が賃上げを台無しにする
「40年前より収入は増えた。だから暮らしも豊かになった」という説明は、社会保険料を無視している。
この40年間、社会保険料は収入より速く膨張し、賃上げを台無しにしてきた。
収入は増えた。だが、社会保険料はそれ以上に増えた。
これが、昔の若者より今の若者の負担が重い簡単な理由である。
編集部より:この記事は財政学者・島澤諭氏のnote「市民経済論で読む日本」2026年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は島澤氏のnote「市民経済論で読む日本」をご覧ください







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