年間282万円に見合わない効果の認知症治療薬「レカネマブ」皮下注射剤まで保険適用

厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は11月6日、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)の皮下注射剤について、11月13日からの公的医療保険適用を了承しました。薬価は患者1人当たり年間約282万円です。

従来は2週間ごとに通院して点滴を受ける必要がありましたが、今後は自宅で投与できます。患者の負担が軽減される一方、高額な治療薬の普及によって医療保険財政の負担が膨らむ懸念があります。

レカネマブ(製品名レケンビ)の注射剤 エーザイHPより

利用者が5倍になれば年間3100億円

皮下注射剤の年間薬剤費は約282万円。体重50kgの場合、従来の点滴剤の約253万円より約29万円高くなります。

エーザイはピーク時の投与患者数を2万2000人、販売額を555億円と予測しています。しかし、自宅投与によって利用者が増える可能性があります。

仮に患者が5倍の11万人となり、全員が1年間使用すれば、薬剤費だけで年間約3100億円に達します。実際の対象者は一定の条件を満たす患者に限られますが、自己注射の指導管理などの費用も別途発生します。

健康な1年を延ばすのに約1700万円

問題は価格に見合う治療効果があるのかという点です。

レカネマブは認知症を治す薬ではなく、進行を遅らせる薬です。従来の点滴剤の費用対効果評価では、生活の質と生存期間を考慮した健康な1年(1QALY)を追加的に得るために、約1700万~1800万円かかると推計されました。

患者や家族にとって治療効果には意味がありますが、限られた医療財源をどう配分するかも重要です。

高額療養費の差額は現役世代が負担

75歳以上で一般所得の1割負担の場合、高額療養費制度によって月額負担が1万8000円程度、住民税非課税世帯では8000円程度に抑えられるケースがあります。

しかし、患者が支払わない医療費が消えるわけではありません。差額は公費や医療保険で賄われ、現役世代の保険料や税金にも負担が及びます。

高齢者の3割負担と保険適用の見直しを

高齢者も原則3割負担とするなど、年齢ではなく負担能力に応じた改革を急ぐべきです。ただし、高額療養費制度があるため、それだけでは解決しません。

費用対効果が著しく低い高額医薬品については、薬価の大幅引き下げや保険給付の厳格化、場合によっては保険適用からの除外も検討すべきです。

エーザイの新薬開発は評価できますが、その費用を日本の医療保険が際限なく支える必要はありません。年間300万円近い認知症治療薬を現役世代が支える一方、若者は旅行や子育てに使うお金さえ十分に確保できません。

医療技術の進歩による費用を無制限に社会全体へ転嫁する制度は持続しません。医療保険の給付範囲と世代間負担を根本から見直す必要があります。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント