青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース。
総務省にて議論が行われています。
因果で、主査を務めています。長いので「安心TF」と呼びます。
青少年ネット対策のため、フィルタリンク機関「EMA」ができて8年、産学官プラットフォームの「安心ネット協」ができて7年になります。
騒動の当時、福田総理は「ケータイは青少年に百害あって一利なし」と発言しました。「百利あって一害ある」と考えたぼくらはカウンター活動を広げた次第です。
その後、いったん安心感は広がりましたが、それからすぐ、子どものネット環境は一変しました。ケータイはスマホに、コンテンツはSNSに、ウェブはアプリになりました。そしてまた新しい問題が発生しています。
一方、政府は2020年には子どもがタブレットで勉強できるようにする、つまり「持つな」から「持て」に姿勢を転換しました。この運動もぼくらが進めました。逆に、普及を推進するという課題も発生しています。
安心TFの冒頭、総務省から状況説明がありました。
・高校生の94%、中学生の46%がスマホを所有。
・コミュニティサイト原因の犯罪被害は増加傾向。
・フィルタリングはケータイ65%、スマホ45%。
・フィルタリングしなくても適切に管理できると考える親が多い。
そこで安心TFのアジェンダは、
1)リテラシー教育
2)フィルタリング対策
3)体制整備。
これまでの安心ネット対策を総点検して、具体的なアクションを設計しようというものです。政治からの対策プレッシャーもあり、重いです。
委員から多数の意見がありました。
1) リテラシーに関しては、教育が最重要対策であること、子どもより保護者の問題が大きいこと、意識が高くない人への対応が課題であること等の指摘。特に学校現場での対応状況を問う声に強いものがあります。
2) フィルタリングに関しては、設定が煩雑で、仕組みがわかりにくいことの改善策を求める声が多数。販売代理店からも「お客さまへの説明はフィルタリングだけで15分を要し、全体で2時間に及ぶ」という実態が報告されました。確かに、じゃぁいいや、ってなりますよね客も。
でも、スマホのフィルタリングを改善しようとすると、OS事業者(AppleやGoogle)の対応が必要だったりしますが、そうなると一国の要請じゃムリかもしれない。ここが今の課題の悩ましいところです。
3) さて、リテラシーやフィルタリングの対策を踏まえて、じゃあ改めてどんな体制で進めるのかが課題になるのですが、これが難問。青少年ネット対策は、利害関係者、ステイクホルダーが実に多いのです。
安心ネット協、EMAなどの第三者機関。通信キャリア、メーカ、販売代理店、SNS、OS事業者といった提供者。保護者や学校といった利用者。政府も内閣府、総務省、文科省、経産省、消費者庁、警察庁が関わる。そして各地方自治体。
ハード・ソフトにまたがる対策であり、グローバル問題でもありますが、これ単独では利益にならないコストセクターです。ビジネスにも関連するが公益性も高い。さて、これをどう再設計するか。改めてみなさんの知恵を集結させています。よろしく。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。