最高裁は、1月11日、医薬品のネット販売に関する厚生労働省の規制には法的根拠がないと判断した。厚生労働省は、今後、薬事法を改正してネット販売の規制を目指すという。「ネット嫌い極まれり!」のこの対応は論外と言わざるを得ない。
ところで、この判決をネット選挙運動に対応させたら、どうなるだろうか。判決文(太字)を引用しながら考えてみよう。
新薬事法成立の前後を通じてインターネットを通じた郵便等販売に対する需要は現実に相当程度存在していた ネット経由で医薬品を購入する消費者がいたことを、判決は「需要は現実に存在していた」と表現している。一方、ネット選挙運動は全面禁止のため、「現実に需要が存在する」ことを明らかにするのはむずかしい。しかし、衆議院議員選挙の際の検索行動をビッグデータ解析したYahoo!の調査結果は、若者を中心にネット選挙運動に関する需要が存在する傍証といえるだろう。
郵便等販売を広範に制限することに反対する意見は一般の消費者のみならず専門家・有識者等の間にも少なからず見られ そうか、ぼくらはネット選挙運動をもっともっと要求すればよかった。司法も世論を意識するのだから。
憲法22条1項による保障は、狭義における職業選択の自由のみならず職業活動の自由の保障をも包含しているものと解されるところ 職業選択の自由が憲法に保障されているのと同様に、国民は選挙権と被選挙権を持つ。しかし、紙だけに依存する選挙制度は、たとえば視覚障害者の選挙権と被選挙権を大きく制限している。
新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が……明確に読み取れることを要する 公職選挙法が総務省にネット選挙運動の規制を委任していると明確に読み取れるだろうか。むしろ、ネット選挙禁止は法律の定めを超えた総務省の過剰規制だったと、医薬品のネット販売から類推できるではないか。
公職選挙法は改正すべきだが、この際、法律の定めを超えた過剰規制を撤廃することについても、政治に動いてほしい。
山田 肇 -東洋大学経済学部-