冷静に考えれば可能性はほぼ皆無なのだが、8月末にサウジアラビアの副皇太子一行が来日された際、もしかするとインタビューに参加できるかも知れない、という話が持ち込まれた。アニメ好きの副皇太子は、メジャーなメディアだけでなくSNSとのインタビューを望んでいる、という某PR会社の呼びかけがあったというのだ。
もし、本当に実現したら、何を聞こうか? 真剣に考えた。
もし、時間の都合で質問は一つだけ、と言われたら「サウジは石油需要ピークオイル論をどう考えているのか?」を聞こうという考えに落ち着いた。
もちろん、そんな僥倖は訪れず、この質問は宙を舞っているだけですけどね。
今朝、弊ブログのタイトル記事をFTに見つけて、思わず座り直した。誰が、どんなことを言っているのだろうか?
読んでみると、筆者が尊敬しているニック・バトラーの投稿だった。日本時間の今朝1:00amごろに掲載された “Will oil peak within 5 years?” という記事だ。
彼のFTへの投稿は、いつもは月曜日のはずなのだが、読んでみるとシェルの決算発表時のコメントに誘引されたものだということが判明した。
書き出しが「シェルのCFO、Simon Henryが第3四半期の決算発表の際、コンフェランスコールでアナリストに対し『石油需要は5年から15年の間に、供給より前にピークを迎えるかも知れない』と語ったが、私は5年以内、あるいは2020年までに起こるかも知れない、と考えている」となっているからだ。
ニックは、弊ブログ#216「エネルギー需要のピークに近づいているのだろうか?」(7月11日)で紹介したように、「10年以内にピークを迎えるだろう」と述べている。今回、石油についてはもっと早まるのでは、として緊急投稿したものと見られる。
彼は明記していないが、パリ協定が11月4日に発効した、ということも背景にはありそうだ。なぜなら、技術革新に加え、政策措置によりガソリン自動車(軽油使用のバス・トラックを含む)の使用に歯止めがより強くかかることになりそうだ、と指摘しているからだ。
あらためて詳細を投稿すると言っているが、ドイツと中国での動きが急だ、ということが判断根拠にありそうだ。次の投稿内容が気になるなあ。
ただ誤解してはいけないのだが、彼が賢明にも指摘しているように、需要がピークを迎えるということは、ピークのあと急激に減少するということではなく、ピークで1億バレル/日程度の横ばいとなり、数年から10年間くらいこの横ばい状態が続くだろう、ということだ。
ファーリハ・エネルギー相は最近、リヤドにおけるコンフェランスで「気候変動への対応が必要になるが、よほどの技術的ブレークスルーがない限り、再生可能セネルギーがコストの安い石油・ガスに代置することはないだろう」と語ったと伝えられている(WSJ “Saudi oil minister sees demand rising despite renewable” 20:00pm on Nov 1, 2016 Tokyo time)。
さらに「放置された資源(stranded reserves)という観念は間違いであり、市場をミスリードしている」とも発言しているそうだ。
サウジは、需要ピークが来るのはもう少し先、だから脱石油を「ビジョン2030」により実現する時間的余裕はある、と判断しているのだろうか?
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月4日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。