4Kテレビは失敗する

山田 肇

読売新聞によると、ワールドカップを照準に次世代高画質テレビ(4K)のCS放送を2014年7月に開始する方針を、総務省が固めたという。地上デジタル移行で一巡したテレビ需要を喚起するのが狙いだそうだ。

この記事は謎だらけだ。そもそも家電業界の主管は経済産業省だが、総務省が需要喚起施策を打てるのだろうか。4Kを楽しむには大きなテレビが必要だが、高額の、巨大な100インチを購入できる世帯数には限りがある。それでも、総務省は需要が喚起できると考えているのか。視聴を誘うコンテンツが必要だが、ワールドカップは魅力的なのだろうか。ほかに、どんなコンテンツが期待できるのか。高騰間違いないコンテンツ制作費用を賄うことができるのだろうか。


3Dがブームになり始めた2009年ごろを思い出すがよい。たとえば、パナソニックは2009年11月に投資家向け説明会を開催し、3D市場に乗り出すことを大々的に宣言している。そのころも、ワールドカップの3D映像こそキラーコンテンツと強く期待されていたが、誰かワールドカップの3D中継を見たか。3D市場は、今、どこにあるか。

総務省には電波監理という強い権限がある。201×年に4Kへ全面移行し現行デジタルテレビは廃止と旗を振れば、アナログからの移行と同様に強制的に市場を生み出せる。ただし、それが成功するのは、前回5兆円以上を負担しデジタルテレビを購入した国民がもう一度買い直してくれる場合に限られる。国民の多くがネット経由で映像コンテンツを楽しむ方向に動けば、この強制施策も失敗に終わる。

4Kはリスクが高い、展望の見えない計画だ。総務省が旗を振るのは疑問だ。それでも家電メーカは追随するのだろうか。

山田肇 -東洋大学経済学部-