SMAPと吉野家のブランド力の違いを考える --- 岡本 裕明

アゴラ

日本にたまに行くとニッチなマーケットで市場シェアを確立している商品をよく目につきます。大手が手を出さないとか、市場原理や効率性を無視したビジネススタイルがワークした例などもあります。その結果、ブランド名を確立することで売り上げが飛躍的に増大するのだろうと思います。今日はこのあたりについて考えてみたいと思います。


以前、私のいとこと車の話になり、「とどのつまりは普通に乗るならどの車も一緒。日本車ならメーカーの違いで性能が特段劣るということはない」ということに帰着し、「では何が市場シェアとなって表れるかといえばセールスとマーケティングの力」という結論に達しました。車の場合は用途やスタイルによって個人の好みが出てきますが、例えばパソコンとなってくるとヘビーユーザーはともかく一般の人が使いこなすには差異はもっと出にくくなるのではないでしょうか?

私が以前、ロードバイクを買おうと思ったのですが、30万円と10万円の自転車の差は何か、といえばついているパーツや軽さ、硬性、耐久性などの差ではないでしょうか? ですが、速いスピードで走るには何が大事かといえば結局脚力と体力が7割であってプロのレーサーが競技で1秒を争う話をしているわけではありませんので基本を満たしていればどちらでもよく、それより頻繁に乗って体力増進をしたほうがよいわけです。まったく同じことはゴルフクラブにも言えるわけである程度の技量の人がある程度の水準のものを使えばどれも差はない、と感じるのは私だけでしょうか?

それでも人はなぜ、高い価格のブランド商品を買うのかといえばそのブランドを持つことによる優越感、商品価値、満足感、安心感なのだろうと思います。そしていかに多くの人にブランド力を共通にシェアしてもらえるかがポイントということになりそうです。

ブランド力は圧倒的な市場支配力が伴い、何が何でもこれ、と思わせることだとすればそれは性能、品質よりも確立されたイメージ先行という気がしてなりません。私がブランド力と思う例としてバッグならルィヴィトン、シングルモルトウィスキーならマッカラン、時計ならロレックスがぱっと浮かぶのですが、それは迷ったときはこれにしておけば間違いないという意味でもあります。

ではもう少しくだけてみましょう。知らない外国の街で食事をする際にどこに入るかといえば案外、マクドナルドを選んだりする人は多いものです。コーヒーならスタバ。なぜなら失敗せず、価格もわかっているという安心感がそれらのブランド力の根源です。ハワイに行って案外、マックばかり行っていた、という人が多いのをよく耳にしませんか?

更に日本のもうひとつのブランド力は地方の駅弁や銘菓、食材ではないでしょうか? 仙台に行けば牛タン弁当を食べないわけにはいかなくなるのは仙台にしょっちゅう来るわけではないのでそれなら一番有名なものを食べるということなのです。あるいは同じ仙台の土産なら萩の月は避けて通れないわけです。なぜなら土産で渡すともらった人が「これ、おいしいんだよね」と嬉しそうにもらってくれるからです。知らない銘菓ですとせいぜいありがとうで終わってしまいます。

つまりブランドは自己満足のみならず、相手がその価値をわかってくれているということではないでしょうか?つまり失敗がないという非常にコンサバなポジショニングともいえると思います。

ではマクドナルドと吉野家ではなぜ、ブランド力が違うのでしょうか? それは取り込む市場の大きさが違うということです。マクドナルドはかなり幅広く、性別にかかわりなく、そして地球規模で顧客を拾いこむことが出来ます。一方、吉野家は男性のひとり客主体という狭さが大きいと思います。店のゆったり感もないですよね。最近のマックは店内がおしゃれになりましたし心地よく長居も出来るよさがあります。一方、吉野家で30分粘るのは厳しいと思います。

昨年の紅白でトリは昨年もSMAPでしたがなぜ今でもSMAPなの? という話になり、結局、非常に広い年齢層からの支持があるからと結論しました。50歳のおっさんがAKBのファンというのは恥ずかしいといったらお分かりになっていただけるでしょう。SMAPはそういう点ではブランド力なのだろうと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。