『文藝春秋』3月号で、渡辺喜美氏が「わが第三極宣言」を書いている。彼が昨年、自民党を離党してみんなの党を結成したころは冷ややかにみられていたが、民主党政権があっというまにボロボロになり、自民党も生まれ変わる気配が見えないと、彼らに期待せざるをえない。世論調査でも、公明党と並ぶようになった。その政策はかなり心許ないが、相対的にましな党として応援したい。
渡辺氏が公務員制度改革を政策のコアにすえているのは正しいと思うが、財政再建が「埋蔵金」頼りになっているのは困ったものだ。そんなに隠れ財源があるはずもなく、来年度予算の編成でも11兆円しか出てこなかった。埋蔵金とかリフレなどのゲテモノ的な政策は、党の信頼性を疑わせるのでやめたほうがいい。高橋洋一氏以外の経済学者の意見も聞くことを是非おすすめしたい。
ただ経済政策の基本戦略を「規制改革でイノベーションを促進する」という点に置いていることは評価できる。渡辺氏もいうように、民主党の所得再分配政策は「タコが自分の足を食っているようなもので、国富を食いつぶしているだけ」であり、「中長期の成長は供給サイドの生産性を上げなければ無理」なのである。この当たり前のことを認識している政党が、一つしかないのは情けない。
鳩山政権の最大の問題は、首相が資本主義をきらっていることだ。NYタイムズ論文で世界中から批判を浴びて「市場原理主義」というときは「行き過ぎた」という修飾語をつけることぐらいは学んだようだが、依然として「行き過ぎた金融資本主義」を批判し、「人間のための経済」という無内容なキャッチフレーズを繰り返している。こういう反企業的な姿勢が、どれほどマーケットの心理を冷え込ませているか、彼は考えたことがあるだろうか。
この点で、渡辺氏が分配より成長を優先しているのは民主党よりましだ。私が彼に提言したいのは、この精神で具体的な税制改革を提案し、財政再建の見通しを明記することだ。特に複雑化した社会保障を整理して負の所得税などの直接給付に集約し、消費税を上げて法人税を下げるなどの改革が必要だ。渡辺氏は「不況期に増税の話はしてはいけない」と考えているようだが、そんなことをいっていたら永遠に増税は論議できない。
ブレア英元首相の有名な言葉にならえば、今の日本に必要なものは3つある:成長、成長、そして成長である。経済が立ち直らない限り、福祉も財政再建も行き詰まる。みんなの党が成長に焦点を合わせた合理的な政策を提案すれば、心ある人々の支持を得ることができるし、経済学者も喜んで助言するだろう。