世界最大のゲームカンファレンス「GDC2013」開催~独立系開発者の時代に

新 清士

世界最大のゲーム開発者の向けのカンファレンス「Game Developers Conference(GDC、ゲーム開発者会議)2013」が、米国時間の3月25日から29日までの5日間、サンフランシスコで開催される。450もの講演やパネルディスカッション、また、ゲーム開発ツールなどの展示会が行われるなど、年々規模化が進んでいる。参加者は、時間のない中を会場を駆け回ることになる。

ビジネスの商談の場としての機能も強化されてきていることもあり、昨年、参加者数は2万5000人を超えた。2007年に1万2500名の参加者だったことから、この5年で倍以上に急激に増加している。私が、GDCに参加したのは、2001年からだが、当時は6000人程度だっただろうと思う。日本での知名度はゼロに等しく、日本人の参加者は手で数えることができた。

■80年代のハッカーカルチャーに近いところで始まったGDC


GDCがスタートしたのは1988年。シリコンバレー地域在住だったゲームデザイナーのリビングルームで始まった。当時は、27名の講演が行われたという。狭い部屋ですし詰め状態で参加者が集まったという伝説がある。シリコンバレーでは、頻繁に情報交換が行われており、それが後の90年代に大きく華開くことになるが、ゲームについても、すでにそうした側面が顔を出していた。アメリカではコンピュータとしてのゲームは、ハッカーカルチャーの発展に近いところに存在してた。翌年以降は、ホテルなどで開催されていたが、やがて、ボランティアでの運営が難しくなり、90年代に、現在のイベント会社に運営が任され、現在にまで至っている。

2万5000人という人数は非常に多い。昨年、コンピュータグラフィックス系の学会であり展示会であるSIGGRAPHの参加者数を上待った。家庭用ゲーム機の性能の向上によって、リアルタイムにコンピュータグラフィックスを表現することが可能になってきたゲームの分野に、映画の技術が応用可能になったことも大きい。映画の製作になれた人材の流入も、こうした参加者数の増加の一因となっている。

■ブロードバンドの普及が生み出した独立系開発者の登場

また、この5年あまりの参加者の急上昇には、08年に本格的に始まったソーシャルネットワームのフェイスブックでのソーシャルゲームや、スマートフォン向けゲームといった、ゲーム産業の裾野の広がりが進んだことが大きい。家庭用ゲーム機向けゲームの技術カンファレンスという側面が強かったGDCは大きく変化し、F2P(無料のアイテム課金型モデル)や、そのビジネスモデルを論じたり、それらの課金モデルにフィットさせるためのゲームデザインはどのようなものを行うべきなのかという議論が、積極的に行われるようになった。むしろ、最近の数年は、そちらの方が目玉になってきた様子さえある。

そして、GDCの魅力でもあり、一つの大きな勢力として台頭してきたのが、「インディペンデントゲーム開発者(独立系開発者)」と呼ばれる、特定の企業に属さないで、数人から10人程度で、非常に少人数でゲーム開発を行うゲーム開発者の登場だ。

これまでの家庭用ゲーム機用のゲームでは、小売店を通じたDVDなどのパッケージ販売しか、ゲームを流通させることができなかった。そのため、ゲームを販売するには、資本力が基本だった。アメリカには、ゲームショップや大手量販店、巨大スーパーなどに自社のゲームを置いてもらうためには、棚を買うという習慣がある。ゲーム会社が、置いてもらうために、専用のコーナーを作ってもらう費用がかかるのだ。また、ゲームは1本あたり50ドル程度だかが、それら全世界に流通させるためのコストも馬鹿にならない。

そのため、小さな企業にはチャンスがなかった。しかし、05年あまりから、ブロードバンド回線の世界的な普及によって、インターネットの回線を通じて、パッケージなしにゲームを販売する「ネット流通」というモデルが登場するようになった。それが、08年頃に登場したフェイスブックとiPhoneのApp Storeのオープンプラットフォーム戦略の登場によって加速化され、世界的に状況は一気に変化した。世界中に無料から、数ドルのゲームがあふれかえるようになり、家庭用ゲーム機中心だった市場が一変してしまったのだ。

■インディペンデントゲームの存在を後押ししてきたGDC

それらの市場の中でチャンスを得て、自分の作りたいゲームを販売していこうとする考えを持つ人々が、インディペンデント開発者だ。GDCは、この動きを後押しし、成長を牽引する役割を担ってきていた。GDCを運営する企業は、Gamasutraというゲーム開発者向けの専門のニュースサイトを運営しており、その中で、インディペンデントゲームの紹介をし続けるブログを持っている。

そして、GDCは、Indipendent Games Festival(IGF)というコンペを設定することで、このムーブメントを後押しししてきた。このイベントは2000年から、スタートしているが当時は地味なイベントに過ぎなかった。しかし、やはりネット流通が一般化する05年あたりから大きく注目されるようになってきた。

応募総数は明らかにされていないが、ノミネートされるだけでも、商品化が確定するというほどの激戦のイベントだ。審査は150名以上の世界中のゲーム開発者や教育者の投票により行われる。私自身も審査員を経験しているが、予備投票は、ランダムに割り振られたゲームに細かいスコアをつけるという仕組みで、非常に大変だ。そして、最終選考に残っているゲームはどのゲームも非常に魅力的なものばかりだ。すでに最終ノミネート作品は発表されており、アメリカ時間3日目の27日夜に開催されるIGFの式典で、受賞作品の各賞が発表になる。

■ゲーム産業のあり方に大きなインパクトを与えるインディペンデントゲーム

もちろん、これらのゲームのうち、どのゲームも成功するわけではない。家庭用ゲーム機向けゲームから、スマートフォンなどを中心としたゲームへと市場の中心がシフトし始める状況で、世界全体では、有力な家庭用ゲーム機を中心にしていたゲームスタジオの整理縮小が続いている。そのため、それらの企業に属していた人々が、インディペンデントゲーム会社を新たに始めるつつあり、競争は激しくなっているからだ。若い人たちだけではなく、経験を積んだベテランの開発者が参入してくることも少なくない。

ただ、インディペンデントゲーム開発者向けの関連セッションのみへの参加が認められる若干安めに設定されいてる参加パスは売り切れるほどの人気だ。これらのセッションは他の講演に比べて異様な熱気に包まれる。はっきりしているのは、ゲーム産業の形が大きく変わろうとしている現場をGDCでは見られるということだ。

■東京ゲームショウにも波及するムーブメント

これらのムーブメントを受ける形で、9月の東京ゲームショウでも、一般公開日の21~22日に「インディーズゲームコーナー」が新設されることが発表になっている。まだ、参加要項の詳しい発表は行われていないが、世界全体に急速にインディペンデントゲームの動きが広がろうとしている。

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新清士 ジャーナリスト(ゲーム・IT)、作家 @kiyoshi_shin