教育情報化を推進するエンジンになります。

OECDの国際学力調査「PISA」2015年版が発表されました。デジタル教科書教材協議会DiTTが発足したのは、2000年版で数学・科学が1位・2位だった日本がその後大きく順位を落としたことも背景にありました。今回、それらが順位を戻してきたのはうるわしい。

一方、今回、読解力が低下したことが指摘されています。これに対し文科省は「問題表示や解答が紙での筆記からコンピューターの使用に変わった」ことを要因として挙げているとのこと。だとすれば、教育情報化の後れが学力の差となって現れたということでしょう。
「読解力低下、科学・数学順位は過去最高に 国際学力調査」
http://www.asahi.com/articles/ASJD25TN6JD2UTIL04D.html

教育情報化は待ったなしです。これを推進するため、DiTTはパワーアップ策を進めることになりました。

「デジタル教科書教材協議会DiTTは、パワーアップすることにしました。」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2016/11/ditt.html

「デジタル教科書教材協議会DiTTの成果」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2016/11/ditt_17.html

そして昨日、DiTT臨時総会が開催され、社団法人化が正式に決定しました。法人化決議に当たり、小宮山宏 会長から以下の演説がありました。

「米英、伊仏など混乱が続いている。米国は0.1%が富の30%を保有するなどバランスを欠いている。共産主義は敗れたが、資本主義も限界を見せている。一方、日本は近江商人の三方良し(売り手、買い手、世間)に見られるように、利益最大化ではなく、全ステイクホルダーの幸福を目指してきた。いい社会だ。

しかし、「遅い」。世界の速さに負けている。思いのある人が「動く」ことが必要。国主導から自律・分散・協調に向かう中、国にも向き合って進む主体が重要だ。

私は東大総長を終えた後、国の仕事のオファーを10以上断り、自分がすべきことを進めている。学生たちから、小宮山は間違っていると言われてもかまわないが、ウソをついていると言われることはがまんがならなかった。正直に、自立して、正直に、すべきことをしていく。

DiTTの事務局メンバーの「眼」を見て、理事たちの活動を見て、私も新法人の会長を引き受けることを決意した。DiTTは日本にとって不可欠である。」

政府・知財計画でのデジタル教科書に関する記載、IT本部等での教育情報化推進の記載、2020年度の一人一台整備の政府決定、デジタル教科書の制度化、電波利用料の活用、プログラミング教育の必修化など、DiTTが提言してきたことが現実となってきており、この分野を先導してきたと自負しています。

民間企業が本分野のビジネス対応に本腰を入れる一方、先進的に取り組む自治体の首長や全国の学校・先生との連携、超党派の国会議員連盟の結成などの広がりも見せました。このたび、超党派議員連盟は「教育情報化推進法案」を策定することとなりました。設立6年にして、国会、政府、自治体、学校現場、産業界への成果は現れたと考えます。

それでも日本は後進国のままです。この分野の取組はOECD加盟国中、最低レベルの状況です。いよいよ動き始めたからこそ、この時期に一段の高みに持ち上げなければいけません。国会や政府が動いている中で、改めて民間サイドの姿勢が問われます。

一昨日、議員連盟の法案策定WGの場で、関連団体からのヒアリングを受けました。DiTTメンバーは事務局サイドで聞いていたのですが、民間の別の教育情報化団体の代表が「紙の教科書をデジタルに移行することに反対する」と強く表明され、驚きました。

この国で教育情報化を「推進」するエンジンは当面DiTTしかないのではないかと感じた次第です。

教育情報化の一層の普及と発展を促し、産業の拡大を図るための法人化にご理解をいただき、引き続き業界活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年12月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。