日本経済新聞(12月12日)は「乗用車、10年で2割高く 安全装備費上乗せ」と報じている。自動ブレーキなどの安全装備費用で乗用車の価格が上昇し、1500cc以下の平均価格は10年前より約2割高くなった。消費者の購入意欲が下がり、若者を中心とした車離れの加速やカーシェアなどへの移行が進みそうだ、というのが記事の要旨である。
車両の減価償却、駐車場代、ガソリン代に車検・点検費用を加えれば、東京都区内では月6万円以上の負担になる。たまにしか乗らないなら、レンタカーやカーシェアのほうが安く済む。記事が予測する通り乗用車は所有から利用へと移行していくだろう。すでにカーシェアリングの会員数はうなぎ登りである。
そんな折、ホンダがシンガポールに本拠を構える配車アプリのGrab(グラブ)との協業について報道発表した。東南アジアではグラブがUber(ウーバー)を押さえて最大手で、9月にソフトバンクグループなどから760億円を調達し、12月には東京センチュリーと提携するなど、日本企業にモテモテである。
報道発表では二輪車シェアリングが強調されている。東南アジアでは都市に二輪車があふれている。環境問題は深刻で、解決に各国は乗り出している。インドネシアやベトナムは二輪車の排気ガス規制を始めた。規制に適合しない二輪車が修理か破棄される一方、規制に適合した新しい二輪車は価格が上がるから、消費者の購入意欲が下がる恐れがある。日本の乗用車市場で起きている現象から推測できる、所有から利用への転機となるかもしれない、この兆候を逃さないためにホンダはグラブとの協業に乗り出したのだろう。
カーシェアリングが急上昇していることはすでに言及した。自転車のシェアリングは各地で実施されている。それに二輪車が加わり、交通分野でのシェアリングエコノミーは拡大の方向にある。環境性能の高い二輪車を持つホンダが、シェアリングエコノミーへの進出を考えた点が興味深い。