新卒採用で「内部者」が「情報発信」するための方法とは --- 池田 信人

アゴラ

前回の「新卒採用における「内部者」の問題を考える」というエントリに続いて、内部者の一人として、「何をまず変えれば変化の歯車が動き出すのか」「現実的にどうすれば変わるのか」というボタンの位置特定に役立てられる情報発信をしようと思いましたが、そういえば、内部者(※)からの情報発信って難しいですよね。
※例

  • キャリアセンターで学生対応をされている方
  • 3・4年生向けに講義を持っている大学教授
  • 企業の新卒採用担当者
  • 就活サイトを運営企業の平社員 など


●自分の身を守るために。情報の鋭さを増すために。

内部者は個人であり、その多くが所属組織の制約を一身に受けることになります。ここに、情報発信の難しさがあります。制約と言っても、就業規則に明文化されているものから暗黙知レベルのものまで様々ですが、とにかく、制約を無視した情報発信はラフプレーのようなもの。所属組織への不利益を与える危険性が生じます。当然、自分の身(雇用や立場)も危うくなります。

「自分の身を守ること」と「ボタンの位置特定に役立てられる情報発信」を両立することは実に難しい問題です。私自身、この問題に対する明確な答えを持っていないのですが、期待値調整を丁寧にやれば大丈夫。という仮説は持っています(今回のアゴラへの投稿も、社内で期待値調整をした上で実行しています)。働く皆様におかれましては、期待値調整なんて日常風景そのものであると察します。息をするように、上司や部下、関連部署に顧客、外注先との間で研鑽し続けていらっしゃる期待値調整スキルを発揮するには良い機会ではないでしょうか?

ここは一つ、「就活・新卒採用・大学教育を上手く噛み合わせるためのボタン探し」を目的に置き、その上位目的の達成のために、個人の情報発信によるメリット(組織の認知度向上、運営サイトのPV数増加、等)とデメリット(失言のち炎上、ときどき電凸)を天秤にかけて、意思決定者の「やりましょう」の一言を引き出そうではありませんか。

調整する側と調整される側。お互いのコミットメント(約束・決意・覚悟)を引き出すのが期待値調整ですから、そういった期待値調整のプロセスによって、内部者が発信する情報の中身は磨かれていき、やがて、人の心に突き刺さるまでに鋭さを増していくことでしょう。

発信する情報は、「ボタンはここにありそうだ」という推測でも良いと思います。「こういったところに問題がある気がする」というのも大歓迎。「ボタンはここにあって、こうやって押すべき」という具体的な提言も素敵です。

とにかく、内部者たる自分の言葉で、情報発信をできていればOK。

●内部者の情報発信にこだわる、たった一つの理由

私が、内部者からの情報発信にこだわる理由は「就職内定率ェ・・・ 」というエントリの文中にある、

「正しい現状把握の土台にこそ正しいアプローチが見つかる」

という認識が全てです。

政府や経済三団体。そして、そういったトップに提言する立場にある有識者の方々も、多くの内部者から集めた情報を土台に、議論や意思決定をされているのであろうと思います。ですが、情報は発信者たる内部者の手元を離れた瞬間から、「データ」や「分かりやすい形式の情報」に加工されていき、本来の意味を失ってしまいます。

内部者が持っている情報は、本人から直接(本人の言葉で)、然るべき場所に鮮度そのままにお届けしないと、いつまでたっても、就活・新卒採用・大学教育を上手く噛み合わせるためのボタンは見つからない。

そう思います(次回以降は、私も一人の内部者として、とれたてぴちぴちの情報を発信していきます)。

池田 信人
株式会社ジョブウェブ 
個人ブログ