かつてもぼくもお仕事をさせて頂いたSPA!、ですが最近の軍事系ライターの質の低さは何なんでしょうかね。
前にダイアモンドオンラインでシン・ゴジラのアレな記事を書いたライター氏もSPA!でよくお仕事をしているようです。
ですが以下の梨恵華も大概なものです。
自衛隊が貧乏すぎる…制服が予算不足で足らない、給料・退職金カットも(梨恵華)
軍オタのブログならばまだしも、一般とはいえ商業媒体に載せるに値しない原稿です。
あぁ、御用媒体のMAMORならばお仕事があるかもしれません。
「自衛隊の制服なんて海外での大量生産品で何が悪いの?」という論調に当時びっくりしたものです。
自衛隊に限らず、軍の制服のデザインや素材は、その制服と同じものが第三者の手に渡ってしまえば、いくらでも軍の中に潜入することができてしまいます。
国産以外許さんとでも言いたいようです。
ですが欧州にしても他国では第三国に軍服を発注することは珍しいことではありません。
英国でもベルギーの業者に発注しているし、ドイツもトルコの業者などに発注しています。
無論、スイスなどのように日本同様に戦闘服などを払い下げずに処分する国はあります。それを無意味だとはいいませんが、精巧なレプリカや自衛官が私費で買う戦闘服や装備も民間で簡単に入手できます。89式のエアソフトガンもありますしね。それに多くの部隊では、私費で調達したマガジンポーチやらチェストリグ、バックパックの使用が許されています。
こういうものを禁止すべきでしょう。それは何故言わないのでしょうか。レプリカで一式揃うのに。
かつての南アフリカでは民間人の迷彩服着用は禁止、軍警察関係者でも勤務時以外は着用禁止でした。
そのような法律でも提案してはどうでしょうか。
更に申せば、自衛隊の被服、個人装備は高い。それは独占、寡占状態になっており、競争が働いていません。
単に国産品だから高いのでありません。中国で作ってもバングラデシュで作っても、独占、寡占の談合体制を取る限り値段は下がりません。ですからただでさえ少ない予算で買えるものが限られてくるわけです。
知らないのか、知らないふりをしているのか知りませんが。
長年使うと全体に色あせて繊維が薄くなり擦り切れてくるのでそこまで行くと交換してもらうことになります。
これも笑うべきところなのでしょう。
陸自の戦闘服は世界で既にどこも使っていないであろう、ビニロンを使っておりますが、これは染料のノリがわるくて、長年使わずとも直ぐに色落ちしています。これも2社寡占状態が長年続いておりますが、お値段が高いのは言うまでもありません。
ブーツにしても安全靴屋が作るコンバットブーツが本当に約立つのでしょうか。現場では不満が大きいのですが、他のメーカーが参入できないようです。
自衛隊装備の劣悪さ、本来支給すべきものが支給されていないのは、何も東日本大震災以降ではなくはるか昔からの伝統です。
制服が、予算不足でまったく足らない状況になっています。東日本大震災への陸自の大規模な派遣がありました。普段の演習などとは違い、荒れ果てた被災地で、泥水に体を浸しながらの救難活動を自衛隊は必死で行いました。瓦礫の山での作業ですから制服も切り裂かれたり、擦り切れたり、傷だらけになります。だから、自衛隊は通常時なら使い果たすことのない在庫をすべて使い果たしてしまったのです。東日本大震災で自衛隊も沢山の予算を使い、これまで持っていた多くの資材を使い果たしたというのに、震災の年の平成23年度予算は4兆6625億円、平成24年度予算は4兆6453億円と減っています。
以前からつらつら申し上げておりますが、セーターですら支給しておりません。
この人は戦闘服の上下さえ支給すれば軍隊は戦えると思っているのでしょう。
官給品が存在しない、あるいは劣悪なので、官給品はしまったままで私物を使う人が多いのも昔からです。
批判するのであればそもそもまともな被服を支給して来なかった自衛隊、防衛省を批判すべきです。
それに上記の批判も的外れです。
防衛省はかなりの額の補正予算、復興特会でお買い物をしています。
被服を充実させるのではなく、そのカネで開発中のC-2を2機買ったりしています。
でも、著者は防衛省や自衛隊を批判しません。
悪いのは自衛隊の予讃を増やさない「悪い政治家」や「悪いマスコミ」だというのでしょう。
その人のせいではなく、予算が無くて制服が交換できないためなのですから、とても可哀想だと思います。
その可哀想な状態を延々と是としてきたのは当の自衛隊ですが
他国の数倍から10倍以上の兵器を買っていれば、予算が足りなくなるのは当たり前の話です。国際的に見て非常識なほど高い装備を買っているから、被服や兵站、衛生、通信などにカネがまわってこないのはあたりませです。
「我々は東北が被災して大変な時だから、『君たちの給料もしばらく10%カットする』と国から言われ、退職金も値下がりしたんだよ」と説明したところ、何度説明しても米軍には「冗談だろう」と言われ、理解してもらえなかったそうです。
リテラシーの低い人間が読めば自衛官だけ給料を減らされたと思うでしょう。事情を全く知らない米軍関係者は自衛官だけ給料が下がったのだと思ったのではないですか?
あるいは著者がそう信じ込んでいるのかもしれません。ですが、公務員全体で給料を減らしたわけです。国民の相応の負担をしています。
それとも著者は普通の公務員の給料を減らすのは当たり前だが、自衛隊だけは特別扱いしろと言いたいのでしょうか。被災地の公務員も給料を減らされておりますがそれは良いのでしょうか。
更に輪をかめてひどいのは著者のブログです。
http://ameblo.jp/calorstars/entry-12232939973.html
正面装備だけでGDP1%近くになるために、本来なら装備品を運用するために必要な人員の拡大も、燃料費も維持費用もけずっている実態など、自衛隊の生活面や福利厚生、待遇面をみているとはっきり危機的な状況が浮かび上がります。
ばかも休み休み言って欲しいものです。
この著者は糧食人件費だけでも防衛費の4割を超ていることしも知らないわけですが、そのような人物がなんと「自衛官守る会」という団体の「顧問」だそうです。
この団体は政治家に陳情に行ったりしているようですが、政治家もいい迷惑でしょう。
主義主張を戦わせるのは無論否定しないし、どのような政治活動をしようとご勝手ですが、小学生レベルの知識の人間がトンチンカンな要求を出すために政治家に面会を要求するのは常識的にみて政治家の時間を奪うだけで、で有害でしょう。まあ、この手合も有権者だからと歓迎する政治家もいるんでしょうけども。
自衛隊は退職が一部を除き大部分が54歳~56歳で定年となります。これだけ定年が早いのですから、手厚い退職金や年金が本来はあるべきなのですが、激減しています。
諸外国では一定の年齢で一定の階級に達しない将兵は軍を去るシステムを採用している国は少なくなりません。
それは組織としてのピラミッドを維持するためにです。ところが自衛隊にはそのようなシステムが無いために、基本が定年まで自衛隊にいることになります。それが防衛省の人件費の比率を上げている一因になっています。
著者はそのようなことも知らないのでしょう。
また以下のような話は知らないのでしょうか。知っていても無視しているのでしょうか。
庶民マイナス金利でも…公務員の定期預金は“破格の高利”(若林亜紀:日刊ゲンダイ)
私は陸上自衛隊の予備自衛官に登録しています。民間人が年に5日ほどの訓練を受けて、有事の際の支援要員になる制度です。
先週、訓練で陸自の朝霞駐屯地で5日間を過ごしました。駐屯地には福利厚生棟があり、コンビニや図書室、喫茶店や床屋が入っており、職員の憩いの場となっています。そこの掲示板を見ていて驚きました。「定期貯金の利率2.46%」とあります。
自衛隊員のいわば社内預金にあたる共済組合貯金の利率は、普通貯金で0.99%、1年以上の預け入れが条件の定期貯金は2.46%です。来年4月から下げるそうですが、それでも普通貯金で0.49%、定期貯金で1.23%と、銀行預金や民間企業の財形貯蓄と比べて破格の高利です。私はため息をつきました。
随分と優遇されていませんか?
民間でも必要な人材ですら合理化で早期退職制度をひいてどんどん人材をカットするという動きですが、自衛隊も同じで優秀な人材が足らず、ブラック化しているのにもかかわらず、早期退職制度をつくってどんどん人材にやめてもらえるような制度も公務員横並びであります。
そこで、たくさんやめてさらに人手がたらないので、いつも寝不足で酩酊状態だから、演習訓練でも最後にはボロボロになるとこの記事でも確認されています。
まず士長以下の「兵隊」が足りないのはぼくが、何度も書いているように、人員削減をするときに、「正社員」である将官、幹部、曹クラスを減らさず、むしろ増やしておいて、「契約社員」の兵隊さんの採用を減らしたためです。このため1士、2士の充足率は4割台、士長を入れても7割です。兵隊が足りないのは当然でしょう。
また本来部隊を削減すべきところを、ポストが欲しいからそれをやらないがために、スカスカの部隊になっているわけです。ですから現場は常に人で不足です。
その上に他国の数倍から10倍以上も高い兵器を気前よく買っているわけです。これを適正化して人件費にまわせばいいでしょう。また自衛隊には非効率な組織運営、いわゆるお役所仕事で多くの人員が取られています。こういう無駄を削減すればいいのですがやりません
別に他人が悪いわけじゃなくて身から出たサビです。
予讃に応じて部隊規模を縮小すればいいだけの話です。
欧米先進国は勿論、中国ですらやっていることです。それが、当事者能力が無いからできないだけで、5倍に薄めるカルピスを10倍に薄めて飲んでいるのは防衛省、自衛隊です。
水増しで、人間も足りず装備も旧式で稼働率が低く、実戦で役に立たない部隊が100個あるのと、装備も人員も訓練も充実した部隊が70個あるのとどちらが有用でしょうか。
予算の現実に目を向けず、規模だけを維持しようとするから、使えない部隊ばかりになって、戦力を弱体化されているわけです。自衛隊弱体化の原因は当の自衛隊にあります。
解決するのは予算を倍増させることしかありません。
少額の予算増などでは何の役にもたちません。
全くの思考停止です。
まともにカネが使えない輩にカネをばらまけば、尚更無駄遣いをするだけですよ。いくら増やして満足ですとはいいません。
例えば悪いですが、オヤジがギャンブル依存症で、女房がブランド狂いの買い物依存症の家庭みたいなものです。
借金までして競馬やパチンコにつぎ込み、昼飯は5千円のコースを食べる。結果子どもの給食費も払えない状態が、自衛隊です。
著者がいっているのは、このサラリーマンの雇い主の社長に今の給料では足りないから給料を二倍にしてほしいというようなものです。仮に給料を二倍にしてもオヤジは更に多額をギャンブルに突っ込み、ランチに1万円を使うようになって、女房はこれまたバーキンやらダイヤの指輪やらを買いまくるでしょう。
子どもの給食費にはカネはまわりません。
また現状国の借金がGDPの2倍を超えるという異常な事態となっています。
このため国民はより多くの負担を求められています。社会保障費は上がり続け、間接税も上がりました。
当然国の「社員」である公務員も相応の痛みを分け合うのは当然でしょう。むしろ税金を使う側ですから尚更負担は必要でしょう。
民間に較べてまだまだ優遇されています。そんなことはないという人もいますが、それは上場企業など一部の例外的な「国民」をベースに比較をしているからです。特に地方自治体ではそれが顕著です。
この手の自称自衛隊の味方、自衛官の味方ほど胡散臭い連中はおりません。
はっきり申し上げて、こういう自衛隊におべっかを使う連中こそ、国防と自衛官の最大の敵でしょう。
別に愛国を商売にするなとまではいいませんが、あまりに胡乱であります。
もっとも余りアレとはいえないのかもしれません。自民党の世耕、丸川、佐藤正久氏らは「絶対に正しい自衛隊様、自衛官様を盲信することが文民統制である」てな、他の民主主義国家の議員が聞いたら卒倒するようなことを国会で平然と述べちゃうぐらい人たちですから、ある意味著者の見識は国会議員並であると言えなくもありません。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2016年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。