いつも日本の政治家を酷評するEconomist誌が、珍しく「ショッキングな事実」として「戦略をもつ国家戦略相」を紹介している。もちろん仙谷由人のことだが、このインタビューによれば、彼の主張は次のようなものだ:
- 20年間の長期停滞から脱却するには、経営の破綻している企業は破綻するにまかせ、政府が救済すべきではない。――これは他国では常識だが、日本の政治家としては驚くべき発言だ[Economist]
- 政府債務は危険な水準になり、長期金利が上がると大変なことになる。日本がすぐギリシャのようなことになるとは思わないが、財政当局はこれまでの10倍ぐらい財政赤字に注意すべきだ
- 政府が不況に有効な手を打てない責任を日銀に転嫁して、金融緩和の圧力をかけるのはやめるべきだ。それは国債市場を攪乱する要因になる。市場では追加緩和を求める意見があるが、金融政策は日銀にまかせるべきだ。
仙谷氏は、学生運動で東大をドロップアウトした異色の経歴の持ち主だ。小沢氏と距離を置く「七人の侍」の一人である。自民党の与謝野馨氏と親しい一方、鳩山由起夫氏や菅直人氏とは意見が合わない。彼は消費税の引き上げを含む税制改革が必要だと考えており、党内で影響力を増している。
民主党政権の初期には、亀井静香氏の引き起こした無意味な騒動が政策論争の焦点になったが、ようやく経済政策は正常な軌道に乗ったようだ。それはデフレと財政赤字と生産性の低下をどうするかということだ。仙谷氏がその解答を知っているとは思えないが、正しい問題を立てることは大きな前進である。
鳩山邦夫氏などの意味不明な「政界再編」より、現在の混乱した民主党政権をまともな軌道に乗せることが現実的だろう。鳩山由起夫氏の賞味期限はもう切れたと思うが、岡田克也氏や前原誠司氏も経済政策にくわしいようには見えない。この記事を読むかぎり、仙谷氏の経済政策は、もっとも常識的だ。彼が官邸の混乱を収拾すれば、民主党政権も安定を取り戻すかもしれない。
コメント
日本には、国際感覚を備え、世界で通用する戦略家が何人もいると思うのですが、そういう人達が、なかなか政治家になってくれないのが残念です。
海外のメディアで、日本人があほな国民のように語られることはとても残念ですが、今の政情では仕方がないですね。
リフレ的な政策は、いよいよ安全性の面からも全く通用しなくなるということですね。これは多くの国民の感覚と一致していて常識的な意見なはずなんですが、しかし一方で、破綻は確実だと聞くわりには、その時に具体的にどのようなことになるのか?というイメージが(まあどの道、酷いものであるに違いないだけに)報道などにも出てこないということで、日常性に安住するしかないのが現状です。とりあえずその時にはハイパーインフレーションは確実なのかな?とは思いますが。