ワークショップコレクション9の会場で3月9日、デジタルえほんアワードの受賞作品の発表と表彰式が行われました。第2回の開催となります。
デジタルえほんアワードは、スマートフォンやタブレット、サイネージや電子黒板など、テレビ・PC以外の新しい端末での子ども向けのデジタル表現すべてを 「デジタルえほん」とし、応募作品の中から優秀な作品を表彰するものです。
われらがNPO「CANVAS」、われらが株式会社「デジタルえほん」の共催です。
昨年の第一回の模様はコチラ。
募集部門は「企画部門」「作品部門」「ブックウォーカー特別部門」の3部門。全体の中から大賞を選出します。審査委員は以下のかたがた。
・いしかわ こうじ 絵本作家
・角川 歴彦 株式会社角川グループホールディングス取締役会長
・香山 リカ 精神科医・立教大学教授
・きむら ゆういち 絵本作家
・小林 登 東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長
・杉山 知之 デジタルハリウッド大学学長
・水口 哲也 クリエイター・プロデューサー
・茂木 健一郎 脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学特任教授
今回の結果は以下のとおりです。
●大賞
みんなでつなげっと(スマートエデュケーション)
●作品賞
めがねはちょうちょにあこがれる(竜海中学校 宇野侑佑)
●作品賞・審査員特別賞
ひとりぼっちのりく(りく企画)
●企画賞
話せる絵本~どうぶつほうもん~(佐藤ねじ)
●企画部門・審査員特別賞
おっきの ちっさいの(アマゾンラテルナ)
●ブックウォーカー特別賞
ケロロとるるるるる!だいさくせん(絵本であります)(相沢いさな)
なんたって注目は、作品賞に輝いた現役の中学生、宇野くん。
部活で作成したというデジタルです。メガネがきれいなチョウチョにあこがれて、いろんな方法で蝶になろうとするお話。いま宇野くんは文化祭に向けて3Dのカーレースゲームを制作中だといいます。機能が豊富なので英語の勉強をかねて英語版のソフトウェアを使っているそうです。たくましいなぁ。
今回、慶應で表彰式が行われるため、仲間から「慶應大学おめでとう」というメッセージを受け取ったというお話を引率の先生がされていました。冗談じゃなくて、慶應に来てくれるといいな。
ブックウォーカー特別賞は、新設です。角川書店と協力し、ケロロ軍曹をモチーフとしたデジタルえほんのアイデアを募集したものです。受賞した相沢さんは、絵本作家になるのが夢とのことで、それに一歩近づいたと話していました。
デジタルえほんはこれから開発され、発展していく分野。そこで活躍する人を見出し、応援することもこのアワードの大事な役割です。
審査委員からコメントをいただきました。まずはデジタルえほんの可能性に着目するメッセージ。
香山さん「そもそもデジタルえほんなるものを操作できるのか心配だったが、スグにその世界に引き込まれた。」杉山さん「デジタルえほんは、新しい表現メディア。スマホ、タブレットの枠からも飛び出し、子どもから大人まで楽しむものが出てくるだろう。」
水口さん「親が参加して初めて完成するえほん。新しい仕組みのものが出てきており、多様化している。」角川さん「そしてこれからますます広がっていく。ジョブスもエラいが、この分野を切り開いているみんなもエラい。」
小林先生からは、さらなる宿題をいただきました。「産声を上げた赤ちゃんはまず周りを見回す。情報を求める存在。情報は脳や心の栄養。受賞者はその仕組みを研究してほしい。日本はアメリカや韓国に教育の情報化が遅れている。日本の将来のためにも「子どもが情報をとらえる力」を考えてほしい。」
絵本作家のいしかわさん。「デジタルえほんは、絵本をデジタル化したものじゃない。屋外でケータイ使ったフィールドワークものや、ドリル学習えほんなど、それならでは表現メディア。 90年代にマルチメディアが期待されていたころは、結局は定着しなかった。キーボード主体だったからだ。スマホやタブレットは、デジタルだがアナログ的なツールが出てきたことが大きい。中学生の受賞はうれしい。作る喜びをそこに見出すことができる。」
同じく絵本作家のきむらさん「そのとおり。絵本をデジタル化したものではない。全く違う発見があった。だが、まだまだ可能性がある。3年後は審査員ではなく、受賞者側に回りたい。」
最後に、茂木さんから、ハッパをかけられました。「”デジタル”という言葉は誤解されている。絵本は紙じゃなきゃダメだという意見には根拠がない。デジタルとはインタラクティブのことだ。考えてみれば、紙芝居はインタラクティブだった。それが進化したものだ見ればいい。しかし、日本はその対応が遅い。20年間眠っている。スピード感が必要だ。動画のYouTubeはアワードなんてなくてもスゲー、という存在になっている。デジタルえほんも、こんなアワードがなくたってスゲーとなるようなものにならなければ。審査員が選ぶというスキームではなく、みんなが選ぶといった手法で広げていきたい。」
がんばります。がんばりましょう。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年6月13日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。