日経BPコンサルティングが毎年実施している「ブランド・ジャパン」の消費者部門で「餃子の王将」が大躍進したことが報道されていました。
またユニクロが昨年の7位から一躍トップに、またマクドナルドが4年連続ランクアップしたのをはじめ、ニトリやPBであるトップバリュー、しまむらなどが大きくランクをあげ、ブランド戦線に異状ありという様相となってきました。
日経ビジネスによれば、グーグルやユーチューブも評価が高く、「不況にあえぐ消費者は、自分の日常生活のちょっとした満足につながる手軽なブランドを評価し、支持する傾向が強まっている」としていますが、確かにデフレ不況が、こういった勝ち組企業、勝ち組ブランドに追い風となっていることは間違いありません。
しかし、これらのブランドの躍進の底流には、もっと大きな消費の変化や産業の構造の変化が起こってきているという視点を見失うと変化の本質が見えてきません。なぜなら、これらはデフレ不況にあえいでいるわけでもない海外でも起こっていることであり、別に日本だけに限った話ではないからです。
その変化が、流通業、外食チェーン、またITで顕著にでてきたわけですが、この流れを止めることはできません。なぜならもう経済のグローバル化をストップさせることはできないからです。
当然ながら、ITには、国境がありません。新しいしくみができれば、あとは言語や文化にあわせてローカライズすればいいだけ、しかもそれはユーザーが何を投稿するかでやってくれます。小売業は、かつては店舗や地域という制約にしばられていましたが、今や国境を越え、グローバル化してきています。
西友という名前がついていても、世界最大の小売業であるウォルマートはすでに日本に進出し、つるかめランドを買収したイギリスのTESCOは、今年にはいって、いよいよTESCOの名前で店舗展開をはじめました。アパレルでも、GAP、H&M、ZARAなどが日本にすでに進出してきています。ホームファッションでもIKEAが、ネット通販でもアマゾンが定着してきています。
そういった世界の巨人たち、また日本の勝ち組企業やブランドは、確かに価格破壊を武器に躍進してきています。
しかし、いずれも安かろう悪かろうではないことです。そこに見るべきはバリュー革命、価値革命というべき流れが起こっているという現実です。
経済学的な話はさておいて、価値は、その商品やサービスがどう役立つか、どんな幸せをもたらしてくれるか、そして品質がどうかで決まります。そして購買するかどうかは、その価値と価格の値踏みで決まってきます。
この価値がいかほどのものかを決めるのが、かつては供給側でしたが、今や、消費者の側に移ってきました。この変化は、決して今に始まったことだけではなく、インターネットによるクチコミ効果でさらに拍車がかかってきているということです。
供給側の変化は、ITの発展や経済のグローバル化で、原材料の調達から販売、あるいはアフターサービスにいたるプロセスに大きな変化を起こしました。
廃棄や在庫のリスクを軽減し、品切れによる機会ロスを低減し、さらに回転率を高める、さらにグローバルな市場から調達すれば、効率性で勝てるということです。
その変化は、競争の概念すら大きく変えてしまいました。日本の企業は売上と、業界シェアを追いかける競争に駆られて成長してきたのですが、今や、企業間の競争は、そういった同業種の競争、つまりヨコのシェアだけで起こっているのではないのです。
原材料や部品から最終製品、販売、アフターサービスという全体の生態系というべきなかで、どこがもっとも付加価値を手に入れるのかという、タテのシェアの競争も始まっています。
流通業だけでなく、それはアップルiPodやiPhone、iPadのビジネスモデルでもいえます。ついにiPadからは日本の部品もほとんど姿を消してしまいました。そんなタテのシェアで日本企業は苦戦しはじめてきています。しかも、そういった傾向は消費財だけで起こっているわけではありません。産業財の分野でも起こってきています。
こういった変化を直視しないで、苦し紛れの安売り、機能や品質競争だけをやっていると、やがて市場からのしっぺがえしが返ってきます。そして自らの首を締める悲劇が待ち受けているということは言うまでもありません。
バリュー革命というべき消費と産業の変化を直視したビジネスの再構築のなかにチャンスは潜んでいるのではないでしょうか。そのことを勝ち組企業、勝ち組ブランドは示しているように感じます。
株式会社コアコンセプト研究所 代表 大西宏