先日、2020年の東京オリンピック・パラリンピックではボランティアの活躍にも期待したいという記事を書いた。そして、その際には毎年1万人のボランティアが支えている東京マラソンのボランティア運営の経験が役立つであろということにも触れた。東京マラソンは国内最大であることはもちろん、2013年にはワールドマラソンメジャーズの仲間入りをし、ロンドンマラソンやニューヨークマラソンなどと並ぶ世界最高峰のマラソンのひとつになった。
これらの海外の有名なマラソン大会の特徴として、かなりの規模の寄付を集めるチャリティマラソンであることも見逃してはいけない重要な要素だ。最高額を集めるロンドンマラソンにもなると、3万5千人の市民ランナーのうち4分の3がチャリティランナーとして参加し、なんと60億円もの寄付を集めているのだ。チャリティイベントとしても世界最大規模といえよう。
東京マラソンも2011年からチャリティランナー枠を導入し、10万円の寄付をすれば、競争率10倍の抽選を経ずとも確実に東京マラソンを走ることができる。もちろん、その寄付は各種のNPOに寄付されることになる。このチャリティランナー形式も年々少しずつ定着しており、2013年には2200人のチャリティ参加があり、2億2500万円の寄付金が集まった。ロンドンマラソンのレベルには届かないが、国内のチャリティマラソンとしては最大であり、寄付の集まりにくい日本ではそれなりの実績を挙げている。
そういったなか、私が最も注目したいのは、クラウドファンディングを活用して友人などから10万円の寄付を集める「Run with Heart」という仕組みだ。東京マラソン財団が指定している、難病の子ども支援や障害者スポーツ支援、難民支援などから自分が応援したい活動を選び、そこへの寄付をインターネット上で知人などに呼びかけ、10万円が集まればマラソン参加できる。今年も30万人近くの方が落選されたが、ぜひ東京マラソンを走りたい!という方、自分がマラソンを挑戦することで寄付を集めたい!という方は挑戦してみてはいかがだろうか。自分だけで10万円寄付するのはハードルが高いが、家族や友人にも声をかければ決して手が届かない数字ではない。ロンドンはじめ海外のメジャーマラソンでも、そのような仕組みと文化がかなり定着している。
私もボストンマラソンを走ったことがあるが、マラソンは単に走る人だけが楽しむものではなく、ボランティアとして支える人、応援する人、あらゆる人たちが一体感を味わうことに醍醐味がある。そこに応援したいNPO活動への寄付やその呼びかけという要素が入れば、そのコミュニケーションや挑戦を通してさらに楽しくて社会的に大きな意味のあるイベントになるのではないだろうか。
以前、チャリティ番組としての24時間テレビの募金は何に使われているかという記事を書いたが、さすがにテレビの影響力を最大限活用し毎年の風物詩となっているだけあり、毎年10億円近くの寄付を集めている。東京マラソンも、これを超えるだけのポテンシャルを持っていると私は思っているが、さらに、視聴率の取れる芸能人だけでなく、クラウドファンディングで市民ランナー一人一人が呼びかけて参加するという新しい仕組みが定着することを期待したいし、応援したい。
学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。