今、日本では、グリーン・イノベーションあるいはWeb3.0とでもいうべき、新しい社会の到来を予感させる動きが見られます。それを一言でいえば、エネルギー・交通・水道などのハードインフラと、通信・金融などのソフトインフラの融合です。
Web3.0では、これまで人間同士だけのものだったインターネット端末が、機械と人間、機械と機械(M2Mといいます)を、ビッグデータを介し社会の隅々にまでロングテールで繋げていきます。これにより新しい公共・民間投資需要が生まれ、ハード・ソフトともに新しい産業が雇用を拡大するでしょう。
過去20年、中国やインドなどの新興国が石油・石炭を大量に消費し始め、気候変動防止やエネルギー安全保障の観点から、化石燃料だけに頼ることができなくなりました。原子力のイデオロギー論争はさておき、再生可能エネルギーや蓄電池、シェールガス発電・コジェネを軸とした分散型スマートグリッドの形成が世界の流れになってきています。
実は、東日本大震災が起きるまでの日本は、リードする欧米の後塵を拝してきました。しかし、福島第一原子力発電所の事故以来、それまで後ろ向きだった電力会社も日本政府も、猛然と力をいれはじめ、その結果、いまや日本は世界を主導する勢いです。
3年後にはスマートメーターが普及し、電力取引市場で活発に電力を売買できるようになります。外国為替証拠金取引(FX)などのように、個人もウエブで先物証拠金取引に参加する。電気自動車やHV車の電池に夜に安い電気を貯めておいて、昼のピーク時に電力会社に売る。デマンドレスポンス家電が普及し、遠隔でエアコンや冷蔵庫を管理する。そのようなビジネスが現実に見えてきています。
電力だけでなく、ビッグデータを使った自動運転や渋滞管理などの交通、公共サービスの遠隔制御など、社会全体のスマート化が急速に進んでいます。
ガラパゴスと揶揄される日本ですが、馬鹿がつく位真面目で、誠実で、清潔で、几帳面で、商品やサービスがハイスペックで、そのかわり高い値段でも我慢する国民社会。新幹線東京駅のお掃除隊などを見て、外国人は感嘆しますが、半ばあきれ顔です。こうした今までの「弱点」は、スマート化という新しいゲームでは圧倒的な強みになります。
グリーン・ニューデールというフレーズでこのゲームを始めた米国は、シリコンバレーの「頭脳」は優秀ですが、社会インフラが古く「体」がついていけず、いまやオバマ大統領もあきらめモードです。実はグーグルもこうした社会の到来を予見してスマートメーター事業に2年前に参入しましたのですが、既に撤退しています。相手は、情報という世界中の誰も がどこにいても手にいれられるものではなく、ヘビーデューテイなマシンです。商材と市場がなければさすがのアップルもグーグルもアマゾンもビジネスはできません。
過去15年、IT革命と世界的金融緩和は、グローバリゼーションによる新興国の台頭をもたらしました。インターネットがあれば世界中どこでも分業ができる。アメリカのシリコンバレーでアイデアをひねり、中国でものを作る。日本は出遅れ、韓国や中国・台湾が世界の工場の流れに乗りました。最近ではサムソンがスマートホンでわが世の春を謳歌しています。
しかし、スマート社会の技術のコアは、製品を「作る」ことではなく「動かす」ことです。スマートフォンのような代替可能な量産製品ではなく、社会に即した、ソフトとハード一体型の注文生産です。相手にするのは、テキストや音声ではなく、絶対に暴走しない車や、ショートしない電気機器です。
韓国などの新興国企業がいくら模倣してもかないっこありません。製品の制作から運転まで、絶対の安全・安心スペックが求められます。韓国国内市場は日本ほど成熟していません。いまや新興国は米国の金融引き締め(QE)で投資資金も絞られてきているし、そもそも、国民の意識や文化などはそう簡単に変えられません。
既に成熟した市場をもつ日本企業が圧倒的に優位です。それに最近では、ASEANやインドなどの新興国も、安かろう悪かろうの中国・韓国製品にさすがにうんざりし始めていて、このような社会のスマート化を待ち望んでいます。初期費用は多少高くても、ライフサイクルでペイするものがほしいと。
国内でいい商品を作ってJAPANブランドでシステムとしてサービスとパッケージにして輸出すれば大きなビジネスチャンスです。クールJapanだけでなく、クール&スマートJapanで日本の文化と社会システムを売り込んでみてはいかがでしょう。
技術はあるのに、ばか真面目だからずる賢い相手にすぐに真似されて、価格競争に持ち込まれて、円高のダブルパンチで煮え湯を飲まされてきた日本企業。やっと、日の目を見る時がきたようです。日はまた昇る。
Japan As No1 Again!!
Nick Sakai
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NPO法人リージョナル・タスクフォース、代表理事