お金の不安の原因は、年金破綻、ゼロ金利、長生き…?

写真ACより(編集部)

最近、週刊誌等でやたらと「お金関連の記事」が出ています。1冊丸ごと特集になっている雑誌も結構目にします。

どうして最近になって、にわかに「お金のこと」が注目されだしたのでしょう?
あくまで私の推測ですが、次のような理由が考えられます。

「年金に対する不安」がすべての世代に蔓延していることが大きな理由であるのは、おそらく誰しもが認めるところでしょう。旧厚生省は、かつて「平準保険料」という概念を用いており、経済成長率をゼロと仮定しながらも利子率を5%程度としていました。これは、「低成長経済では利子率も低くなる」という経済学の基本中の基本を旧厚生省が理解していなかったのでしょう。案の定と言うべきか、現在の日本はゼロ金利状態になって久しく、普通に5%前後の金利が付く見込みは皆無です。

また、自分で積み立てた分を自分が受け取るという「積み立て方式」ではなく、現役世代が積み立てたお金を高齢者世代が受給するという「賦課方式」であることも、少子化が進む現在の不安の大きな原因となっています。
つまり、支払ってくれる若年世代がどんどん少なくなっているので、「果たして自分が受給できるかどうか?」「受給できるとしてもいくら受給できるのか?」という不安が付きまといます。

ちなみに、「積み立て方式」を「賦課方式」に変更したのは田中角栄内閣の時でした。高齢者たちが、田中角栄を「天才」とあがめるのは当然です。自分が払ったお金よりもはるかに高額の年金を受給できているのですから。

次に考えられる不安の原因は、預金に利息が付かないということでしょう。
私が司法修習生だったのは25年以上も前のことですが、とあるベテラン弁護士さんが修習生たちに次のような教えを説いたのを克明に記憶しています。

「倹約生活をしてでも、ともかく2億円を貯めろ。そうすれば、税引き利息が年1000万円前後になるので、何もしなくても豊かな生活ができる」

当時の割引債は源泉徴収税引き後で5%以上の利息が付いたので、その弁護士さんの教えは(当時の状況では)正鵠を得ていました。

年収1000万円だとそこから税金が引かれるので、手取りはずいぶん少なくなります。こう考えると、税引き後の1000万円がいかに素晴らしいかご理解いただけるでしょう。ところが今や、2億円につく1年の金利で居酒屋で一回飲み食いできるかどうか、それさえ不安です(バカバカしいので計算する気も起こりません)。

バブル時代に多額の収入を得てたくさんのお金を蓄えた高齢者たちも、年金で足りなければ虎の子の資産を食いつぶさなければなりません。日々資産が目減りしていくのはとても心細いものです。

三番目の原因として考えられるのは「長生きリスク」です。
平均寿命はどんどん長くなっており、ベストセラーになっている「ライフシフト」によると、2007年生まれの日本人の平均寿命が107歳になるそうです。

長生きできるのは大変結構なのでしょうが、今までより20年余計に生きるとしたらその分の生活費が必要になります。年金では生活できないと言って新幹線の中で焼身自殺した放火犯のニュースを見て、「明日はわが身かも」と、ぞっとした人たちが多かったのではないでしょうか?

このように、今の日本人の多くは「いくらお金があっても安心できない状態」に陥っているのではないでしょうか?(あくまで「日本人の多く」です。何百億円も持っている人は例外でしょうね…もしかしたら…それでも不安だったりして^_^;)

ましてや、金融資産のない(もしくは住宅ローン等でマイナス資産を抱えている)現役世代にとっての「将来不安」は半端じゃないでしょう。AIにいつ仕事が奪われるかわからないという、オマケの不安も付いていますし…。

ということで、今の日本人の多くは「お金の不安」にさいなまれ、藁にもすがる思いで雑誌情報などに飛びついているのでしょう。ところが、今の時代、お金を確実に増やすウルトラCは絶対にありません(これは断言してもし過ぎることはありません)。いくら情報を集めても満足できる回答は得られません。満足できない状態ならまだいい方で、中には投資詐欺被害にあって大金を失う人がたくさんいるのです。

個人消費が盛り上がらないのは、ある意味当然の結果でしょう。

荘司 雅彦
2017-03-16

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年4月3日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は写真ACより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。