「国内でシェルターの注文が殺到している」というニュースを目にして、一瞬目を疑いました。
よくよく読んみると、コンクリートで地下に設置するようなものではなく、有害物質を除去する空気清浄機のようなシェルターで、値段もさほど高額ではない装置とのことでした。
北朝鮮の不穏な動きなどから、人々が危機感を抱いているのでしょう。
そもそも、国防というのは経済学では「純粋公共財」として扱われています。「純粋公共財」というのは、「非排他的」かつ「非競合的」な財のことです。
誰かが独占することもできなければ(非排他的)、誰か利用していると自分が使えなくなるといこともない(非競合的)財であり、最もわかりやすい例が空気です。
核爆弾を自衛隊の迎撃ミサイルが撃ち落とす際、一定の人たちだけがその恩恵を独占することはできませんし(非排他的)、その恩恵を受けるために競争する必要もありません(非競合的)。
そういう意味で、国防というのは「純粋公共財」なのです。
近代市民主義における国家の最低限の機能として、国防、警察、裁判、外交の4要素が挙げられます。今日では、貧富の格差是正のような福祉国家的要素も重要な機能になっていますが…。
社会契約論的に考えれば、個々の国民が国家に税金を支払って権力を与える代償として、国家は国民の安全を守る義務があるということになります。国防はその最たるものでしょう。
かつてのISによる邦人人質事件で政府が悩み抜いたのは、国家には国民の安全を守る義務があるという点でした。
身代金を支払うとテロ活動を助長し、ひいては将来における国民の安全を脅かすので国家としては身代金支払いはできません。かと言って人質を見殺しにすることは「国民の安全を守る」という国家としての義務を放棄することになるので、これも出来ません。
身代金を支払うことなく、最大限の救済措置を講じるしかなかったのです。あらゆる方面から救済措置が講じられたであろうことを想像すると、当時の担当者の方々のご苦労は大変なものだったと思われます。
話をシェルターに戻すと、シェルターは「純粋公共財」ではなく私財であり「排他的」で「競合的」です。
本格的なシェルターを装備している家があるとしたら、ミサイル発射が報じられた途端、周囲の人々が「われわれも入れてくれ」ということになって大混乱になるのではないでしょうか?
もし本格的なシェルターを装備している人たちがいるとしたら、絶対に口外せずに秘密にしておいて下さいね。
さもないと、自分たちだけでなく周囲の人達もパニックに巻き込んで副次的な災害につながりかねませんから。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。