17~18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定をめぐり、メディアの間でテーパリングに予想が傾いております。
ロイターは「Fedは年末に花火を打ち上げる見通し(Fed could set off year-end fireworks)」と題し、米経済指標に強い結果が相次いでおり行動するなら「後倒しするより早い方が良い」と判断する可能性があると伝えています。その上で、ロイターがまとめた60人を対象とするエコノミスト調査では、20%に相当する12人が年内のテーパリングを予想していました。前月よりも増えたそうです。14年3月との回答は、約半分でした。
CNBCも、「12月のテーパリングに備えよ(Get ready, here it comes: A December taper)」で今週のQE縮小開始を予想。Fed番レポーターのスティーブ・リースマン氏が語る理由は、以下の3つになります。→以下は、筆者からの反対意見です。
1)雇用統計・NFPの11月分までの3ヵ月平均が19.3万人と9月FOMC時点で入手済みである8月分までの16.6万人から増加
株価および住宅の上昇で大きな資産効果を享受し、欧州の緊張も緩和
→雇用統計のNFPをみると、3ヵ月平均はQE縮小の地ならしを開始した5月FOMC時点で入手した4月分までの22.4万人以下、6ヵ月平均でも11月分で18.0万件となり5月FOMC時点の入手済みである4月分までの21.5万件に届かず。
2)財政の不透明感が後退
9月の段階でFOMCは政府機関の閉鎖などによマイナス効果を懸念していたが、今回は回避できる期待
→米議会には債務上限引き上げという大きな宿題を2月に予定も、合意は未知数
10月FOMC声明文でも、引き続き「財政政策が経済的な成長を抑制している」との文言を維持しており懸念は払拭しておらず
3)金利動向
Fedが「QE縮小と利上げは別物」と説明してきたおかげで、短期金利は安定的に推移
FF金利先物でみたFF金利織り込み度をみると、2015年6月限は9月FOMC時点に0.92%だったが、現在は0.27%程度に収まっている
米11月雇用統計が強含んだにも関わらず先物は変動せず、Fedの政策への信頼度を裏打ち
→米10年債利回りは2.84%付近で9月時点に「足元で金融状況のひっ迫(金利上昇)を確認しており、持続すれば経済と労働市場の改善を鈍らせる」との文言を組み込んだ9月時点とほぼ変わらず。
FF金利先物が変動しなかった背景は、①時間当たり賃金の伸び鈍化(10月の2.3%→11月は2.0%)、②失業率の低下は、家計調査の失業者・就業者数に表れていたように政府機関の反動、③米10月コアPCEデフレーター、前年比が1.1%と2011年3月以来の低水準で、インフレ目標値「2%」からさらにかい離──していた点が挙げられる。
では、Fed番記者ジョン・ヒルゼンラス氏を抱えるウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙はというと・・。12日掲載のこちらに加え、ヒルゼンラス記者の署名が入った16日の記事「Tough Question for Fed: Time to Act?(QE縮小はFedにとって苦渋の決断、行動する時か?)」、いずれもハト派寄りなんです。
ヒルゼンラス記者とペドロ・ニコラッチ記者によると、テーパリングにつき「議論が激しさを増している」といいます。6月に1)経済成長、2)雇用、3)インフレ動向──をQE縮小の3本柱とする半面、インフレのみが他と比較し低迷をたどっているからです。
左から失業率、GDP、インフレ。インフレは成長と反比例して右肩下がりなんですよね。
(出所 : WSJ)
記事では、コーンFRB前副議長は、12月FOMCの決断につき5分5分としながら「自分が現役ならば、14年まで待つだろう」との見解を紹介。FOMCが「成長と雇用の持続的な伸びに疑問を抱く」として、14年3月の開始を予想するBNPパリバのローラ・ロズナー米エコノミスの見方を取り上げています。
また、WSJ紙が実施したエコノミスト調査でも「43人のうち今週の会合で実施を予想するのは11人のみ」と指摘。14年以降との回答が「30人以上に上った」と補足しています。結びには、ちゃんとヘッジが掛かってましたけどね。「QE縮小はバーナンキFRB議長が開始しても、幕を閉じるのはイエレン新FRB議長」だなんて、お上手です。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年12月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。