インターンシップをめぐる有識者会議の無価値な提言

まもなく6月1日だが、この日の夕刊には就職活動が本格化したとの記事が必ず載る。昨年の場合、朝日新聞の夕刊は「就活、企業の面接解禁」だった。毎日新聞には、熊本地震で被災した学生に焦点を当てた「熊本地震:就活出遅れ焦り 企業側も事情考慮」が出た。一方で、産経新聞は、本年5月15日付で、来春卒業の大学生・大学院生の内々定率が23.0%であると伝えている。

6月1日というのは、日本経済団体連合会が『採用選考に関する指針』で選考活動の開始日と定めた日付である。これに呼応して、国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校関係団体の申し合わせが文部科学省から発表されている。

多くの学生も多くの企業もこれらを無視している。経団連に加盟していない中堅・中小・スタートアップ企業は、大企業の落穂拾いになるのを避けるために、採用活動を先行させている。大学生の多くも大企業に就職するわけではないので積極的である。

3年夏の段階でインターンシップ生を集め、その中から内定者を実質的に決めておく、インターンシップを活用した採用活動も盛んである。これについても、文部科学省はインターンシップが採用につながらないことを求めている

2016年6月に『規制改革実施計画』が閣議決定された。その中に「インターンシップ活用の推進」という項目があり、インターンシップに関する大学等・学生・企業のニーズ、企業がインターンシップで取得した学生情報の取扱いの在り方、中小企業が多様なインターンシップ・プログラムを有効かつ柔軟に活用できる方策の在り方について検討するように、文部科学省・厚生労働省・経済産業省に求めた。

これについて、文部科学省の有識者会議は「インターンを直接の採用活動として認めない現行の考え方を維持すべきだとした提言を、大筋でまとめた。」と、時事通信が報じている。『規制改革実施計画』は「インターンシップ・プログラムを有効かつ柔軟に活用できる方策」という表現で直接的な採用活動への利用をやんわり求めたのだが、有識者会議はこれを門前払いした。

6月1日が有名無実なのと同じように、採用に直結しないインターシップも建前に過ぎない。現実に目をつむった提言は、6月1日がまるで無視されているように役に立たない。

現実を直視しない提言に価値はないことを有識者会議は気づくべきだ。