チーム内でAさんとBさんが対立した。さあどうする?

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画像は講演中の吉田氏

「中間管理職はストレスばかりでいいことなんてない」「上にも下にも気を配らなくてはいけないので大変」。実際に管理職は落ち着けるポジションではない。責任ある立場ではあるが、役員ほどの決裁権限が付与されているわけでもない。

とはいえ、いまの役員クラスも管理職を経て昇格するか、仮にヘッドハンティングされるにしても、相応のポジションで実績をあげていなければオファーはかからない。現状を憂いているのではなく、能力向上に注力したほうが得策ではないのか。

今回は、リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)の著者であり、人材育成などを手がける、吉田幸弘(以下、吉田氏)に話を聞いた。

■双方の言い分の落としどころは

――中間管理職はどのようなストレスを抱えているのか。私の経験では、上からの指示(暴言の場合も多いが)はどうにか堪えられる。困るのは、マネジメントを邪魔する存在だ。部下にマネジメントを邪魔されて「またか!」と思ってしまうような経験はないだろうか。

ここに、ある課題を提示したい。皆さまならどのように対応するか考えてほしい。自分のチームに所属するAさんとBさんが対立してチーム内の雰囲気が悪くなってしまった。話を聞けばどちらにも言い分があり対処が難しい。

Aさんの言い分
レガシー・ファースト商事(仮称)は、私の重要顧客です。私の提案どおりに来期の予算を確保し普通の提案をすれば120%受注できるのに、Bさんが指示どおりにしなかったため失注しました。この数ヶ月、忙殺されたことでかなりのスペンディングが生じています。

Bさんの言い分
Aさんは、レガシー・ファースト商事から信頼を獲得できていませんでした。事前のオリエンテーションもメチャクチャで話になりませんでした。そのため会社のことを思い、私が徹夜で企画書を作り直したのです。文句を言われるのは筋違いで心外です!

「チーム内の敵対的ライバル関係をどうするか、チームとしてはなかなか難しい問題です。2人はチームにとって大きな存在でしたので、何とかしなければならないと、リーダーは頭を抱えていました。このようなケースでやってはいけないのは、2人を別々に呼び出して注意することです。」(吉田氏)

「また、仮に10年目の社員と2年目の社員が対立している場合、弱い立場の2年目の社員につけばいいという考えも非常に危険です。」(同)

――明らかなパワハラの場合は別だが、そうでなければ公平な視点で見ていく必要があるのだろう。どうすべきなのか。

「最初に、2人を呼んで3人で話し合う場をつくる必要があります。その際に言葉を投げかけます。Aさんには『新規開拓でチームを引っ張ってもらっていて助かっているよ』『Bさんには、わかりやすい提案資料を作ってもらい感謝しているよ』。このメッセージは、私を主語にした言い方で、自分の気持ちや感じたことを伝えるのみです。」(吉田氏)

「そして、次のように呼びかけてお願いをします。『今日は相談なんだけど、おかげさまで、チームはいい状態だが、さらにいい状態にもっていきたい。そんなときに2人の力が合わさると、すごく強力なチームができると思うんだ。力を貸してくれないか。」(同)

――コンフリクトが生じたときには、無理やり和解させようとしても知らない間に対立状態になっていく危険性がある。それなら、共同プロジェクトをさせるなどして、2人のコミュニケーション量を増やすことで解決に向かう場合がある。

■早期対応が解決の要件

――さらに、お互いの仕事のベクトルが同じ方面を向いていれば解決は近いだろう。傷は浅いうちに対処しなければいけない。

「お互いのことを知らないから、主観や思い込みによる嫌悪感や嫉妬が生まれてしまうのです。そうした事態を防ぐためにも、2人がお互いを知る場を設けていきます。リーダーは3人で仕事を進める機会をつくります。その際、リーダーは2人に相談を持ちかけるといいでしょう。」(吉田氏)

――人間関係の対立は、会話量を増やす機会をつくれば、たいてい解消できるものだ。しかし、気がつくタイミングが遅いと「憎しみ」「恨み」という感情が芽生える。早期対応が必須であることは言うまでもない。なお、本書には多数の事例が紹介されている。特に新入社員や新任管理職などの環境変化があった方には参考になるのではないかと思う。

参考書籍
リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)

尾藤克之
コラムニスト

<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―

第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
講義の様子「アゴラ出版道場第2回目のご報告