ソフトバンクの新採用制度についての私の投稿に、多くの方からレスポンスをいただき非常に良い勉強をさせていただいています。この「アゴラ」上でも複数の角度からご意見を頂き、一語一語にいちいち頷かされる私でした。松本さん、渡部さん、安冨さん、菅野さんにお礼を申し上げます。
しかしながら、今回の「ソフトバンク問題」について、結局私の考え方は変わりませんでした。その基本線は「学生は与えられたチャンスを活かせばよい」という簡単なものです。
今回の問題に際して、私がまず気になったのは学生の「受け取り方」でした。元々、ソフトバンクの新採用制度がニュースとして取り上げられるきっかけになったのは、実際にソフトバンクから通知を受け取った学生がメールをコピー・ペーストしてブログに公開したことだそうです。そのブログ記事には「これはひどい」とあったそうですが、私はそのブログこそ「これはひどい」と思いました。
他人から受け取ったメールを、相手の了承もなく公の場に晒してしまうことは言うまでも無く重大な「マナー違反」です。それも、企業とのやり取りであれば尚の事。一部の上場企業では情報管理の観点からか「このメールの内容は勝手に公開しないで下さい」などと注釈がついていますが、そんなことは言われなくとも分かる「社会人としての常識」ではないのでしょうか。メールの内容を勝手に暴露する「マナー違反」を犯しておいて、一方で企業にマナーやモラルとやらを説くのはおよそ健全な姿とは言えません。
そんな学生が、会社の面接では「御社の成長性に魅力を感じて・・・」などと言っている姿を想像すると、人事担当者や経営陣は背筋に冷たいものを感じるのではないでしょうか(まさに「ブラック企業」ならぬ「ブラック学生」です)。学生がこんな体たらくだから”実績で示せ”と言われるんだ ― とまで言うと暴論になりますが、こんな「コピペ体質」が私たちの世代全体を「ゆとり世代」「シュガー社員」などと呼ばせる根拠とされるなら恥ずかしいことです。
採用制度の問題に話を戻すと、渡部さんがおっしゃるように基準が不明確だったという問題はあるかもしれません。現在のようなものでない、何かしら明示的な基準があれば不公平感も生まれないでしょう。ただ、”営業力”は数値だけで測れるものではないでしょうから、ソフトバンクとしても示しにくかったのだろうという想像はつきます。
報道を総合すると、ソフトバンクは営業実績だけでなく、実績獲得に至るプロセスをレポートとして提出するよう求めているようです。これであれば、不明確な数値基準を補う要素になると考えます。「論より証拠」というと語弊があるかもしれませんが、「販売戦略について」などと文章を書かせるよりも実践を求める点は「採用試験」として妥当なポイントを押さえています。
その他に、今回の制度には自社(ソフトバンク)の利益につながるような数々のポイントがあるのも事実だとは思います。が、日本でも一般的なインターンでは学生は社員でなくともその会社の業務に関わり営利に貢献するわけですから、今回の制度が厳密にルール違反だとも言えません。
それより何より、学生に必要なのは与えられたチャンスを活かすことだと私は思います。私とて講釈を垂れるような立場ではとてもありませんが、与えられたチャンスを活かせない人間が自分でチャンスを獲りにいかなければならないような競争社会で生き残れるものかどうか、といった感じがします。制度が企業の社会的モラルに反していないかどうか、などという議論はもとより学生に相応しいものではなく、その筋の専門家に任せればよいことです。その意味では、菅野さんが仰る「まず実践」という言葉はまさに正鵠を射たもので、私自身も胸にしまいたいと思います。
私としては、今回の問題についての投稿はこれを限りに締めるつもりでおりますが、最後に松本さんの投稿について申し上げたいと思います。
前回の私の投稿はまさに駄文拙文の類で、自分で読み返しても分かりにくいものでした。が、私が言わんとしていたことは松本さんが全てわかりやすく書いてくださいました。加えて菅野さんにも補っていただいたように感じています。本当にありがとうございました。
米重 克洋(株式会社JX通信社CEO/学習院大学経済学部経営学科2年)