韓国主導の反日攻勢が漫画の世界まで侵入してきた。フランス南西部のアングレームで先月末から開催された国際漫画祭で「慰安婦の強制連行」をテーマとした韓国側の出展が認められた。一方、米バージニア州下院常任委員会では3日、「東海─日本海」併記法案が賛成多数で採択されたという。韓国は「日本海」の呼称を「東海」とするため久しくロビー活動を展開してきたことは周知の事だ。
韓国の反日活動が芸術絵画の世界まで拡大されたのは今回が初めてではない。ウィーン市の俳優ハウス(劇場)で2007年5月、ギリシャ悲劇の「トロヤ(古代小アジアの都市)の女たち」の演劇が上演された。
トロヤの壊滅後、トロヤの女たちが敵国の奴隷となって拉致されていく運命を描いたギリシャ詩人オイリピデスの最後の悲劇だが、トロヤの女たちの悲劇を朝鮮半島の日本植民地時代の慰安婦問題とリンクさせていたのだ。
監督は旧ユーゴスラビア出身の新進監督アイダ・カリッチ女史だが、慰安婦役の6人の女優を含め、舞台装置、音楽担当まで全てが韓国人演劇関係者が行った。その意味で、ギリシャ悲劇という枠組みを巧みに利用しながら、韓国の慰安婦の悲劇を描いた演劇だった。ちなみに、「トロヤの女たち」はオーストリア連邦首相府(文化省)がスポンサーだった。
それに先立ち、ウィーン大学法学部で韓国主催の「日本海呼称問題の国際会議」が開催された。欧米から学者や政治家、外交官が参加したが、日本からは誰も参加しなかった。主催者によると、「日本側も招待したが、参加しなかった」という。
国際会議場のウィーン大法学部から駐オーストリアの日本大使館まで10メートルも離れていない。日本外交官がその気になれば参加可能だった。
慰安婦問題を絡ませたギリシャ悲劇の場合もウィーン大学の「日本海呼称問題の国際会議」でも韓国側がかなり前から執拗に反日活動を展開させてきたことを証明すると共に、現地の日本大使館が抗議とか反論といった行動を一切行わなかったことに衝撃を受ける。
その意味で、在外日本大使館の行動力のなさと無策が中韓両国の反日活動をここまで拡大させてきたことは否定できない。日本外交官は韓国側の活動を久しく過小評価してきた。そのツケを日本は今、払わされているわけだ。
ところが、ここにきて微妙な変化がみられる。パリの漫画展示会で日本大使館や現地の日本の女性たちが署名運動を行い、展示会主催者に抗議したのだ。また、米国内の慰安婦像設置では現地の日本人たちが同様の署名運動を展開させたばかりだ。海外の日本人社会が立ち上がろうとしている。
東京からの情報によると、日本外務省もようやく重い腰を上げ、在外公館に韓国の反日活動に対して必要なら反論するように、という通達を送信したと聞く。官民が一体化して反日中傷に堂々と反対を表明すべきだ、という声が広がってきたのだ。
大げさに表現するとすれば、日本が戦後失ってきた国を思い、その名誉を守ろうとする愛国主義が台頭してきたのだ。それは偏狭で、攻撃的な愛国主義ではない。国とその未来の世代のために、根拠の乏しい中傷誹謗の反日に抗議する、といった愛国心の芽生えだ。それは特定のイデオロギーに基づくというより、日本人の心情の表現とでもいえるかもしれない。
反日活動を国家戦略として展開させてきた中韓両国にとって予想外の展開になろうとしているのだ。中韓は日本を攻撃しても反撃しないだろう、という前提で反日運動を行ってきた。日本国内で愛国主義の兆候が見られだしたら「軍国主義の復活」という脅し文句ひとつでも叫べば、日本側が引き下がるだろうと安易に考えてきた。実際、これまではそうだった。日本のメディアが中韓の手先に利用されてきたこともある。
今回はどうやらそうではないのだ。根拠のない反日活動に反撃、抗議しようとする愛国主義が日本社会で生まれつつあるのだ。中韓両国にとって文字通り、不味い展開となってきたのだ。
皮肉なものだ。「軍国主義の再台頭」「偏狭な愛国主義の台頭」と叫んで日本を攻撃した中韓が、日本で愛国主義が生まれてくると、その反日活動を制限しなければならなくなってきたからだ。
日本社会では戦後、愛国主義は一種のタブー・テーマだった。「国を愛せ」といえば、右翼の烙印を押されてきた。その日本の社会で、国を思う心、国の名誉を守ろうとする心が国民の中に芽生えてきたのだ。日本は中韓両国に感謝しなければならない。
安倍晋三政権がいくら巨額な資金を投入し、検定教科書の再考などに取り組んだとしても実現できなかったであろう国民の愛国心が生まれてきたからだ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年2月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。