コミュニケーション英語は、一般人が世界中の人と交流をするのに必要な程度の英語と定義したい。試験英語のような正確さもBusiness Englishの様式美もいらない。たどたどしくても、ブロークンでも構わない。世界中の人と意思疎通し、心を通い合わすための、世界の一般人が使っているInternational Englishだ。東京オリンピックを迎えるにあたり、日本人も、是非このコミュニケーション英語をお勧めしたい。そこで日本人のコミュニケーション英語の速習向上に、押さえておきたいポイントを6つご紹介する。学習法は問わない。上級を目指す人も、最初にコミュニケーション英語のコツを押さえておけば、その後が楽なことは言うまでもない。
1 文法:英語は5文型が命
「はがにを」で主語、目的語等の役割を示す日本語と違い、英語は5文型の単語の「位置」で単語の役割を示す。だから5文型が命。これを使いこなせなければ意味あるコミュニケーション成立など不可能だ。他の応用文法は全部5文型の上に成り立つもの。にも関わらず日本人はこの5文型が怪しい人が多すぎる。怪しいのは大抵第4文型第5文型だが、特に問題が第4文型 SVOO。
例えば、日本人がホテルのフロントでCall me taxi と言ったら、ホテルフロントマンが彼の顔を見る度に笑ってTaxi!と声をかけた、という有名な小話がある(第4文型を間違い「私をTAXIと呼んでくれ」と言ってしまった)。
①第4第5文型は重要だ。理由は使う動詞は少ないのだが、(一般的なもので20弱)call、make, keep, think, find、等使用頻度の高い動詞ばかりだからだ。しかもこれらの動詞は多義に使われるので、「少し」でも間違えば、簡単に他の意味になりやすい。先の例のように。
また第5文型の応用で同様に押さえたいのが、2番目のOに動詞原型がくる2パターン。
②知覚動詞。 SVO+動詞原型
押さえたい理由は、「見る」「聞く」「感じる」とか一般会話で頻繁に使う動詞だからだ。
I saw you yesterday (昨日見たよ)
I saw you walk along that street yesterday (昨日あの道を歩いていたのを見たよ)
後者の方が、コミュニケーション感が出るというものだ。
③使役動詞。 SVO+動詞原型
使役と聞くと難しそうだが、~させてという表現は、日本語の謙遜語と感覚が同じだから、日本人には使いやすい表現。せめて let くらいは押さえたい。
Let me have a look at your map. あなたの地図を見せて。(道を聞かれてその説明に)
繰り返すがこれらが大切な理由は、日常的に多く使う表現であり、でありながら正確に使わなければ、間違った意味で解釈されやすいからだ。集中的に練習して使えるレパートリーを増やしていくしかない。
●命令型+OR/AND構文は便利
それから押さえたいのがこれ。命令形と言うと偉そうだが、要は他人に行動を勧める/促す言葉とその動機づけがセットになって大変に便利な表現。
Eat it and you will like it. (それ食べてみなよ。絶対好きになるよ)
Don’t eat it or you will have a stomachache. (それ食べたらダメ。おなか壊すよ。)
2 発音:rの発音は簡単。問題は母音
日本人が苦手意識の強いrの発音は、rを「うら」と一度に早く言えばOK。子音は他にg/z,t/th区別も日本人は苦手だが、子音の発音は、舌の位置と息の出し方の筋肉トレーニングで習得できる。
問題は母音だ。
英語は日本語より母音が多い。日本人はそれをカタカナ変換のアイウエオで覚える。だからカタカナで単語を知っていても、正確な母音で発音できずに通じない単語が多い。この簡単な単語が通じないという状況は本当に辛い。が母音は間違えやすいバリエーションを理解していな限り、ランダムに試しても正しく発声出来るものではない。諦めて表現を変えるか話題を変えるしかない。筆者も未だに母音のアヤフヤさで苦しんでいる。
3 時制:時間の感覚が違うことは知っておこう
過去形と現在形と未来形だけでも、十分に意思疎通ができるが、日本語になくて英語にある時制が、完了形だ。現在完了形だけでも使えるとかなり英語らしくなる。例えばイギリス英語は、have をほぼhave got で表現する。
Have you got a pen? (ペンある?)
Have you got the time? (時間わかる?)(what time is it now?ではない。)
完了形は奥が深い。日本語の時間感覚とは違う。筆者も久しぶりに日本語モードから英語モードに切り替えると、しばらく時制の切り替えに苦労する。
4 日本語の単語の意味と英語の単語の意味は1対1ではない
これが理解できていない日本人が少なくないのだが、日本語と外国語とでは一つの単語の多義の範囲が違ったり、語彙の豊富な領域が異なったりするのが普通だ。同じ意味に見える単語でも、言葉の背景イメージが異なることも少なくない。だから単語の1対1対応など、「無い」と心得た方が早い。
例えば英語の「shit」という単語に、「外人って「うん○」「うん○」って言うのね」と感想を述べた日本人女性がいた。この人は日本語の「くそ!」という言葉を知らないのかと感心したことがある。
この認識が大切な理由は、コミュニケーション英語では、正しい単語を探すよりも、とにかく色々表現を変え言葉を重ねて通じる表現を探した方が、コミュニケーションが成立するということだ。
5 相手の質問を、自分主語で確認をしてから答えよう
英語コミュニケーション初級者に、これは絶対にお勧めの方法。コミュニケーション効果が高く、かつ練習効果も高い。
相手の質問を、自分主語で確認をしてから答えるとは、
“Are you Japanese?” と聞かれたら、
“Am I Japanese? Yes, I am Japanese.”と、相手の質問を自分主語でまず質問を確認してから、次にフルセンテンスで質問に答える答え方だ。
教科書的にYes, I amと答えるよりずっと丁寧にコミュニケーションしている感じがしないだろうか。しかもほとんど相手の文法と単語を借りているから、自分では難しい単語や文法を考える負担なしに、フルセンテンスを話す練習ができる。またこれをしようとすると相手の言葉に集中をするので、相手もコミュニケーション感を感じて、次の話を話しやすくなる。
この対応が身に付くと、そのうち応用して
“Excuse me, Can you tell me where the station is?” (駅はどこですか)と聞かれても、
“Do you want to get to the station? I can take you to the station. I am on my way to the station. Come with me!” (駅に行きたいのですか。連れていってあげましょう。私も駅に行く途中なんです。)と相手の意図を察して確認をした上で、「相手の為」になる「おもてなし」が発揮出来るようになる。
6 日本の説明はほどほどに
以前にイギリスのコメディー番組で、英国人コメディアンが日本人を演じて、こう言って笑いを取っていた。
As being Japanese myself, I would like to take any opportunities to teach
you Westerns about our culture.
外国人の目から見て、日本人というのは、やたら日本文化を語りたがる人達だと思われているらしい。
実際外国人とみると一生懸命日本の特殊性を「説明」をしたがる日本人は多い。が、「説明」はコミュニケーションではない。「説明」は相手に聞かれた時に聞かれたことに答える程度で十分。「説明」より前にまず、目の前の相手が何の話に感心があるか、何の話を欲しているかに注意を払うのが「コミュニケーション」だ。
以上だ。日本人は基礎単語力も基礎文法力もある。普通のコミュニケーション英語なら、上記6つを押さえて少し練習をすれば、外国人と意思疎通ぐらいはできるようになる。なにしろ日本人は、相手に対する気遣い、おもてなしの心、という繊細さを持っている。だから、英語コミュニケーションだからと緊張せずに、自然に繊細な気遣いを発揮できるようになれば、外国人との心を開いたコミュニケーションは、決して難しくないでしょう。
江本 真弓
江本不動産運用アドバイザリー 代表