菅首相のもとでどんな情報通信政策が出てくるのかはよくわからないが、たぶん優先順位はあまり高くないでしょう。1日の慶応のシンポジウムでもみんなこぼしていましたが、ITというのはオバマ政権では重点政策になっているのに、日本では民主党も自民党もあまり関心をもってくれない。その中で、民主党が政策インデックスに入れている数少ない政策が、周波数オークションです。
これは高井崇志議員も「情報通信八策」に入れており、岸本周平議員も「VHF帯でやってはどうか」と提案していましたが、電波部は「もうドコモ=フジテレビ組で決まりなので、今さら蒸し返さないでほしい」という感じなのだそうです。
しかし3日、KDDIが電通、テレビ朝日などとともにマルチメディア放送の新会社を設立しました。これはVHF帯でクアルコムのMediaFLOを使って携帯端末むけに放送するもので、7月の最終結論に向けて巻き返しをはかっているようです。
VHF帯は、最初は60社以上が応募したのを電波部が「一本化」工作したのですが、それに応じないクアルコムだけが残り、ドコモなどの日の丸技術(ISDB-Tmm)との「美人コンテスト」が延々と続けられてきました。途中の段階では2社がサービスを行う案もあったのですが、結局は一本化することになり、最終段階の書類審査が行われています。
しかしワンセグとMediaFLOのどちらが技術的にすぐれているかなんて決めても、意味がありません。ウィルコムやIPモバイルのように、電波部が選んだ技術がこけた例はいくらでもあります。問題はビジネスとしてどっちが勝つかだから、市場でやらせてみないとわからない。それができないのなら、オークションで高い価格を出したほうに落札すればいいのです。
本来はUHF帯の300MHzをすべてオークションにかければいいのですが、いきなりそこまでやると失敗したとき困るので、14.5MHzのVHF帯でまず練習してみればいい。オークションの目的は、電波部のいうように電波の「経済的価値」を反映させることではなく、行政が介入しないで市場で決めることによって新規参入を自由にすることです。
電波の開放はベンチャーや外資も含めた競争を促進し、通信インフラへの投資を増やして成長率を引き上げる効果もあるでしょう。「環境」や「健康」などの個別企業に補助金をばらまくターゲティング政策より、こうした規制改革が成長率を引き上げる決め手です。財政再建も、成長率を上げないとどうにもならない。新政権はぜひ成長戦略として周波数オークションを考えてほしいものです。