参院選が告示され、選挙戦が始まったが、今ひとつ盛り上がらない。昨年の総選挙には「政権交代」という大きな争点があったが、その結果生まれた鳩山政権の迷走ぶりに有権者が白けてしまい、菅政権には大した期待をもっていない。
最大の争点だった消費税も、自民党が10%という数字を出して「責任野党」のカラーを出したと思ったら、民主党がそれに相乗りして「超党派で協議しよう」と言い出した。「消費税みんなで上げれば恐くない」というわけだろうか。他方、法人税も民主・自民両党が引き下げを言い出し、これも争点にならない。
そんな中で注目に値するのは、自民党がマニフェストで「解雇規制を緩和すると同時に、企業における柔軟な経営を行える環境を整備するなど、企業の持続による雇用の安定につなげます」という政策を打ち出したことだ。
みんなの党も「民主党政権の派遣禁止法案は、かえって働き方の自由を損ない、雇用を奪うものであり反対」と、昨年の総選挙で派遣労働規制に賛成したのに比べて少しスタンスを変えている。労働市場の問題はこれまでタブーであり、「クビを切りやすくする制度改正はけしからん」という労働組合の攻撃を受けるため、両党ともおっかなびっくりの慎重な表現になっている。
実は、財政赤字と労働市場の問題は表裏一体である。今まで自民党政権が増税を先送りして国債を増発してきたのは、実質的には若い世代から老人への巨額の所得移転である。派遣労働規制も、老人の「終身雇用」を守るために労働市場から若年労働者を排除するものだ。それは投票率の高い老人に迎合する、政治的には合理的な戦術である。愚かなのは、選挙に行かない若者だ。
このような政治家の「老人バイアス」は、どこの国でも多かれ少なかれ見られるが、急速に高齢化が進む日本では、世代間の利害対立がもっとも激しい。生涯収入が世代間で7000万円以上違う国というのは、世界でも例をみない。老人のため込んだ資産は消費されないので需要は低下し、若者は「自分の年金は出ないかもしれない」と心配して節約する。このまま放置すると、日本が老人大国になって活力を失うことは確実だ。
そして団塊の世代が首脳陣を占める民主党は、明らかに社会保障の食い逃げをねらっている。「強い社会保障で強い経済が実現する」という支離滅裂な話は、老人の既得権を隠すレトリックだ。私は、選挙で争うべき本当の争点は、右翼とか左翼とかいう冷戦時代の対立ではなく、この世代間対立だと思う。特に労働市場の問題をどう扱うかは、政党の試金石だ。不公正で非効率な所得移転を阻止する系統的な政策を打ち出さないかぎり、自民党も公明党もみんなの党も、政権を取ることはできないだろう。
コメント
こうしてみると、民主党って、すでに何の取り柄もない政党ですね。菅政権も政策論争を一段進めるための踏み台くらいには、なってくれたのかもしれないですが。しかし明らかに、もう一度、政権交代が必要ですね。解雇規制の緩和などは絶対に必要な改革ですし、今できなかったら日本は終わってしまうでしょう。
>それは投票率の高い老人に迎合する、政治的には合理的な戦術である。愚かなのは、選挙に行かない若者だ。
まさに。。。数で負けている上に投票率でも負けたらいいようにされてしまう。
それに都市と地方の一票の格差がのっかると更に厳しい状況になる。
>明らかに社会保障の食い逃げをねらっている。
生涯年収で7000万円の差という試算は、人口構成とデフレが効いていると思います。
それと労働市場の問題は違うと思います。
社会保障と終身雇用制の話は分けて考えるべきだと思います。
社会保障(主に年金)という意味では、老人に人口構成の責任はありません。
またインフレリスクと国債のデフォルトリスクを取って勝ち切りつつあるわけですから、リスクを取った勝者に対して食い逃げという表現は納得しかねます。
その理屈なら株を高値で売っても、食い逃げでしょうか?
リスクを取ってその対価のリターンを受けつつある老人に対して、「お前ら、勝ちすぎだから返せや」というのは理屈が通らないと思います。
普通のインフレが15年続いていたら彼らに対する社会保障費は十分に減価していたはずです。
彼らがリスクを認識していたかどうかは別の話です。
年金はきっちり払うべきでしょう。
終身雇用制は単なる暗黙の制度なので、これは話が別。
食い逃げとまでは言いませんが、逃げ切りを狙っている人は多いでしょう。
私は更に破壊すべき制度だと考えていますが、なかなか進みませんね。
私は現在の人口構成を制約条件とする問題において、若者から老人への所得移転を止める政策は、現実的ではないと思います。
今のルールで世代間対立なら、若者は完敗してしまうでしょう。
私はもう一度、若者の数を増やさないと難しいと思います。
時間はかかりますけどね。
現在の人口構成に老人達には責任があると思います。
彼らが社会の中核を担っていた時代から現在の人口構成は予測されていたはずです。
それに対して、将来の労働人口の増加の為の手だてを何ら講じなかった不作為は非難されて然るべきです。
現在の年金システムは労働人口の増加を前提にしており、少子高齢化した社会においては、システムの見直しは不可避です。
現在の日本の問題は大抵、過去の不作為を原因としており今、将来を見据えた構造改革を避ける事は、過去の失敗を繰り返す不作為に他ならない。
若者から老人達への所得移転を妨げるのは現実的でないのはその通りです。
若者はあまりに無知で無力です。
だから若者ではないわたし(44歳)達の世代が将来を見据えた構造改革に着手すべきでしょう。
微力ではあっても、構造改革の必要性をブログで啓蒙活動しています。
雇用の流動性や構造改革が正しいと言う結論ありきの議論が進んでいますが、もっともっと、なぜ必要なのかを、掘り下げた建設的な議論と証明が求められているのではないでしょうか?
私の勉強不足かもしれないので、何方かご指導ご鞭撻願います。
解雇規制の緩和は、必要条件ではあったとしても、十分条件とは思えません。
お客がサービスの質を選ぶ権利を最大化しようと思えば、サービスの事業者にはある程度の解雇権を認めるのは当たり前のことだと思いますし。これは、あらゆる業種に言えることじゃないかと思ったりもしますが。
年功序列制の下でこれまで暮らしてきた方々も、これからは引退して様々な福祉サービスなども受ける立場になるわけで、雇用環境の流動化を促進することも、客の立場で考えてもらいたいですね。その意味ではご年配の方々の、まったくの自己本位の発想でいいんじゃないかと思いますが。
わたしのような素人ブロガーで宜しければ、意見を述べさせていただきます。
まず、政府は人々に十分条件なるものを用意する必要はないし、用意しても有害なだけです。
幸福の定義は人それぞれに違います。
よかれと思い、善意から誰かの為に恣意的な制度を設けても、意図せざる結果を招き別の誰かを傷つけるでしょう。
日本だけでも一億人以上いるのに、不特定多数人々の為の共通の十分条件を提供するのは不可能です。
幸福は人それぞれが自分で定義し追求するものです。
政府の役割は人々がそれぞれの幸福を追求出来る自由度の高い環境を作る事にあります。
だから必要条件を提供出来れば政府の役割はそれで一応の成功と言えます。
また解雇規制の緩和についてですが、解雇規制の緩和は経営の自由度を高め、企業の競争力を維持し、企業に残された人々の雇用をまもる事に繋がります。
(それが出来ない経営者の会社は市場で淘汰され生産要素が流動化し環境に最適化した企業にながれ、それらの企業の競争力をより高める可能性があります)
また解雇しやすい環境は新規雇用を促進します。
一度社員にしたら景気に関係なく解雇出来ないとなると、経営者は新規雇用に慎
>私は現在の人口構成を制約条件とする問題において、若者から老人への所得移転を止める政策は、現実的ではないと思います。
今のルールで世代間対立なら、若者は完敗してしまうでしょう。
民主主義は多数決なので、数が多い老人に有利な政策が通ってしまうことは当たり前で、今のルールでは数が少ない若者が完敗することもまた当然だと思います。
私は、現在のルールでは世代間における「一票の格差」が存在するのではないかと考えています。
老人(多数派)の意見ばかりが反映されて、若者(少数派)の意見が反映されないことが問題であるならば、それを是正する措置をとることで、世代間の利害対立の問題を何とかできないでしょうか?
高齢者が将来世代を搾取する構造が何をもたらすかについては、かなりはっきりしたデータがあります。極論すれば、この争点は日本人が絶滅するか生き残るかということにもなるでしょう。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1587.html
皆様の話(一般的にこういった話題を扱える層)を聞いていると、高齢者、若者、それぞれ自分の立ち居地を理解しているかのような前提ですが、それはまったく違います。
若者「なんかつまんねぇな」
高齢者「最近のは元気がないのぅ」
平均レベルの知識はこのレベルですよ(笑 世代間闘争? はぁ? このレベル。
ネットは勘違いしやすいですが、自分から能動的に検索したりクリックしたりして話題にたどりつくから、その先のコミュニティはいつも少数派。
結局のところ、マスメディアが何とかならないと、どうにもならない。 逆にいえば、マスメディアが突破口に見える。
どうなんでしょう。
年寄りもお金を持ってあの世に逝くわけではないから、たんまり貯めこんで消費しないままでいてくれれば・・・・
やがて相続マネー社会みたいなのは来ないのでしょうか?
上の世代からお金が降ってくるというような。
相続税という形でピンはねされなければ、自分の老後の資金は親が溜め込んでいてくれるというような認識です(笑)
いざとなれば実家に転がり込めばいいというセイフティーネット。
そういえば、いつか話題になった「無縁社会」も世代間のつながりが無くなった人の話が多かったように覚えています。
「構造改革と雇用の流動性」に付いて、私論を簡単に述べさせて下さい。
「市場における選択の自由」がコインの表ならば、コインの裏側を正視すれば「構造改革と雇用の流動性」の必要性が認識できると確信します。
私がイメージする雇用の流動性が実現した労働環境では、解雇の概念は存在しません。要するに、雇用の流動性を実現するために解雇規制の緩和をするのではなく、雇用の流動性が実現すれば、解雇は必要なくなるからです。解雇規制の緩和は流動性を実現する一つの手段かもしれませんが、私なら他の手段で流動性を実現できるからです。政府に求められているのは、「解雇規制の緩和」の是非云々ではなく、論点は他に存在してるのです。論理矛盾すると言いたいですか、「合成の誤謬」だって良くできたロジックで長年人類を騙して来たのです。
序でにお話しすると、「解雇規制の緩和」は左に回りすぎてルーピーになって軽度の精神病を患っていると思われる反社会的組織が、激烈なアレルギー反応を示し、無垢な若年層まで焚きつけて公園を占拠するので、物事を平和裏に解決するためにも控えたほうが穏便に進むと思います。
ikuside5とnippon5050さん、コメントありがとうございました。
私は若年ではない30代後半ですが、データでは高齢層に所得移転している年齢層のようです。
皆さんのコメントでは相続による所得移転・資産の移転を想定されていますが、私の場合、まったく望めません。
私は32歳の時に現在の自宅マンションを購入しました。もちろん自分が結婚して家庭を持つことを想定してです。ところが、20年以上父と別居して親戚中を居候していた母が親戚と喧嘩して居所がなくなり、私のところへ転がり込んできてそのまま居座り続けて今に至りました。そして、定年退職後気ままに好き勝手に暮らしていた父が要介護状態になりましたが、元公務員だった父は老後の計画をまったく立てておらず退職金は使い果たしています(二人とも金融資産・不動産などの資産は全くありません)。
私は社会保障費・税を通じての世代間の所得移転+家庭内での所得移転と二重の所得移転でとてもではありませんが結婚できません。
私は今度の参議院選挙で、「甘い言葉」をささやいている絶対投票しません。父と母のように、自分の老後くらい自分で設計できずに子供につけを払わせる人間を増殖させる政策を打ち出す政党を見極めています。
ちょっと私憤みたいになってしまいましたが、「日本国」名義のクレジットカードでつけを払わされているのか、直接親の請求書が毎月回ってきているのかの違いだと思います。
>雇用の流動性や構造改革が正しいと言う結論ありきの議論が進んでいますが、もっともっと、なぜ必要なのかを、掘り下げた建設的な議論と証明が求められているのではないでしょうか?
年配の正社員の雇用・立場を守るため、新卒採用を減らし(あるいは、停止して)、若い世代は犠牲になっています(これが、九十年代の「就職氷河期」の原因です)。あるいは、現代の「長期雇用(事実上の終身雇用)」は組織が拡大し続けなければ維持できません。現代では、組織が拡大し続けるなんて不可能です。企業は若い人の昇格・定期昇給を停止することにより(つまり、若い人を犠牲にすることにより)無理やり「長期雇用」を維持して、年配の正社員の雇用と生活を維持しています。これらの結果、三十代の所得が、十年前と比べると、大幅に減っています。(詳しく知りたい場合は、池田信夫さんと城繁幸さんのサイトをご覧ください)
もっと、建設的な議論が必要でしょうか?
>雇用の流動性や構造改革が正しいと言う結論ありきの議論
そこに至るまでの証明(ロジック)が分からない人にとっては「結論ありき」に見えるのも仕方がない。
円の面積は πr^2 。結論ありきに見える(自力で証明できない)のは当人の能力の問題。