政治的識見の有無に関係なく、知名度目当てで芸能人や運動選手などを候補者に引っ張り出す「選挙至上主義」の横行は全く困ったものです。逆に言えば、有名人なら誰でも投票する日本国民のミーハー振りが酷すぎるのかも知れません。
だからと言って「国会議員と柔道家の両立は天才YAWARAといえども至難の業。加えて、2児の母とプロ野球選手の妻という「4足のわらじ」がいつまで通じるのか。国民の誰もが疑問を感じるなか、全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長がついに『(議員と)両立できないなら身を引いたほうがいい。当選したことで、現役続行は非常に厳しい。けじめをつけてほしい。政治(の世界)で頑張ってほしい』と語り、『議員でも金』という谷氏の姿勢を痛烈に批判した。」と言う個人の誹謗に近い記事も見識の全くない低劣なもので許すべきではありません。
「4足わらじでも金メダル目指すとはさすが!」とその意気に感心するが普通ですが、この困難に立ち向かう事自体を非難するとは「意地悪爺さん王国」そのものです。
比例区から立候補し、民主党内で2位となる352,594票を獲得して当選を果たした人物を掴まえて「国民の誰もが疑問を感じる」と断言したり「けじめをつけて、政治の世界で頑張って欲しい」と言う言葉を「谷氏への痛烈な批判」と取る記者の偏見にも呆れ返ります。
記事の中で「もともと柔道関係者の間では、今回の立候補以前から谷氏に対する“特別扱い”への不満が公然とささやかれていた。」と言う解説が出ていますが、特別扱いをしたとすれば、犯人は強化委員長の吉村氏側で谷氏は風評被害者です。この点一つとってもこの記事はお門違いもいい所です。
民主党嫌いの産経の意見を正当化するため、記者の憶測を交えて記事にする様では、イエローペイパーと変わりません。この様な新聞や記者こそ、けじめをつけて引退して欲しいものです。
職業選択の自由と人生の自由は公序良俗を犯さない範囲で保障された基本的人権で、柔道連盟の強化委員長と言えどもこれを犯す事は許されません。
世界選手権6連覇、全日本体重別11連覇、福岡国際11連覇、オリンピックでは2度の金メダル、2度の銀メダル、1度の銅メダルと出場した5大会全てでメダルを獲得するなど谷選手の輝かしい戦績を挙げた彼女の果した女子柔道、柔道への貢献は誠に大きなものがあります。
名選手の彼女は、若い頃からインタビューの受け答えがしっかりしていると評判の高い選手で、ファンへの感謝を忘れない人物だと言う評判も良く聞きます。しかもハードルの高い目標を立て、自分を追い込んだ発言をしてそれを有言実行し続ける強い精神力を持っている並の人物ではないことも実績が物語っています。
勿論、運動選手としての過去の実績と政治家兼運動選手の将来とは全く別物ですが、スタートもしないうちから、この様なセンセーショナルな誹謗記事を許す報道機関は、リンチに近く誠に卑劣です。つい最近も、岡田監督を国賊扱いにしたサッカー記事で生業をたてていたジャーナリストが、結果が良いと手の平を返したように彼を褒め称える姿は誠に醜いものです。
特別扱いをしたと新聞に指摘されると、これまでよりも高いハードルを谷選手に示す吉村委員長も、スポーツの基本であるフェアプレイを忘れた低級な人物に見えますが、記者に悪用された被害者では?と言う感じすら持ってこの種の記事を読みました。
プロ化の進んでいなかった時代には、文武両道に優れた人物が何人も政治指導者として名を成しました。プロ化の進んだ現在でも有名な運動選手だからと言う理由だけで、公認候補にする政党も大問題ですが、国民の信任を得た以上、過去の履歴に関係なく偏見無しに平等の機会を与えるのが、民主主義の絶対条件です。
セレブ過剰の日本は憂慮に堪えませんが、機会平等とフェアプレーの精神だけは残したいものです。
コメント
谷さんも柔道選手としてはもうピークは過ぎています。
今度の大会では優勝は出来ないでしょう。
そうなったときは、潔く後進に道を譲るべきです。
ただ、この強化委員長が余計なことを言ったのは確かですね。そんなことを言わなくても、優勝出来なければそこで「議員でも金」の道は潰えるのですからわざわざ口を出す必要はないです。議員の仕事もそうですが、スポーツは結果が全てです。谷さんも長く柔道に携わって来ているのですから、そこの所は十分理解しているでしょう。
有名人ということで投票すると言う行動は本当にばかばかしく思えます。
また、谷氏は議員の仕事と言うものをどのくらいのものであると考えているのか未だにかなり疑問です。
国会で牛歩戦術と言うくだらないものをしたり、寝ぼけたままいたり、議員の仕事すらまともにできていないような議員も大勢いるのに。
世界柔道連盟は2009年1月からランキング制を導入しました。
五輪に出場するには、このランキングで各階級の14位までに入っていることが条件となりました。
ランキングの対象となるのは、過去2年間の国際試合の実績ですので、2012年ロンドン五輪の出場権を得るためのポイント争いはすでに始まっています。
ちなみに、谷亮子選手と同じ女子48kg級は、最新のランキングで福見選手が1位、山岸選手が3位、浅見選手が5位、近藤選手が5位、伊部選手が12位に入っています。
谷選手はこの2年間試合をしていませんので、0ポイントでランキングにも入っていません。
ですから、強化委員長が今秋のポイント対象となる大会への出場と優勝(してのポイント獲得)を求めるのは、至極当然と言えます。
そうでなければ、そもそも五輪代表になることができないのですから。
もっとも、谷亮子選手には2007年に代表選考の大会で上記の福見選手に敗れても世界選手権代表に選出されたり(福見選手は落選)、2008年には北京五輪代表選考の大会で上記の山岸選手に敗れても五輪代表に選出された(山岸選手は落選)過去があります。
この際、ご指摘の吉村強化委員長は「私に質問しないでくれ」と話し、選考理由をはっきりさせず、暗にスポンサーなどの圧力を示唆しました。
こうした経緯を踏まえれば、ご立腹されている吉村氏の談話は「もうランキング制ではかばいきれないから自分から身を引いてくれ」と苦しい立場から懇願しているようにも取ることができます。
私の感想としては、こうしたランキング制についての解説をまったくせずに、まだ谷亮子選手に五輪で活躍する期待を持たせる一方で、強化委員長の談話を使って対立構造を煽るマスコミにもっとも大きな責任があると考えます。
もし、北村さんもこのランキング制をご存知でなかったのならば、こうしたマスコミの被害者とも言えるのではないでしょうか。