新しいiPod touchが登場しました。
カメラ機能を搭載したうえ、Wi-Fi環境であれば、テレビ電話ができる、FaceTimeもサポートされているのが大きな特長です。
Apple自身、このiPod touchを、携帯電話機能のないiPhoneとさえ言い切っています。
実際、このiPod touchは、Appleの新しい戦略の行方を推察させてくれる重要な存在であると、僕は感じ始めています。
iPadは3G版とWi-Fi版の二つが存在します。
iPhoneと新型iPod touchは、このiPadの二機種に相当する組み合わせになりましたが、敢えて今回AppleはtouchのデザインをiPhone4と差別化し、むしろiPadに近い概観を与えてきました。iPod touchはiPodと名前がついているにしても、携帯音楽端末としての他のiPodとは一線を画しています。もっといえば、部品からすると、iPod touchは、ほぼiPhoneと共通の筐体になっています。
電話機能のないiPhone、と呼んだのも伊達ではないわけです。ネーミングがiPod touchとなっていることから製品ラインが混乱していますが、touchは他のiPodとは別物であることはまちがいないのです。電話のないiPhoneなのか、小さいiPadなのか、iPodの亜種なのか、この製品の位置付けをどう決めるかは非常に重要なマーケティング上の決断になるでしょう。Apple復活のそもそものきっかけは、複雑化した製品ラインを四つに絞り込むというジョブズの英断にあったからです。
Appleは、おそらく今後iPodとiPhoneとiPad、そしてiPod touchの四つに細分化された携帯情報端末のラインを思い切って再統合してくると思われます。どのような整理をしてくるかはわかりませんが仮に、高速無線インターネットが世界各地で利用可能になるのが十年後であれば、iPod touchはWi-Fi型のiPhoneと呼んでさしつかえないことになります。
また、iPhoneの中にiPodというアイコンが機能あるいはアプリとして存在するように、いまやiPodとはハードウェア的なものというよりソフトウェアとして物理的な形を必要としないものへと変質しつつあります。iTunesがソフトウェアからクラウドサービスへと変容しつつあるように、iPodはハードからソフトへと変質しつつあるのかもしれません。
Appleウォッチャーの多くは次にAppleがなにを出すかを予測することはよくおこなっていますが、大事なことは、なぜ彼らがその新製品を出したのかを考えることもまた、非常に重要な意味を持つと考えます。
2010年に入って、モバイルとソーシャルメディアの接近、およびコマースや書籍、マーケティングにいたるまで、ありとあらゆるもののソーシャル化が一気に加速し始めています。
そのうごきをみるに、Google、Facebook、Twitter、そしてAppleの試みをよく分析することがメタな動きを理解する早道と考えています。