政策判断や各種委員会等に対する事後評価を

真野 浩

総務省は、電監審の答申を受けてマルチメディア放送の免許をドコモ陣営に与えることにした。 これに対して、選からもれたKDDIは、携帯新放送の番組配信に参入しない意向を表明したようだ。

これにより、仮にドコモ陣営がサービスを開始しても、それを受信できる端末は、ドコモとSBMだけになり、潜在市場が小さくなるわけで、早くも答申が評価した事業性に懸念材料が出て来たことになる。


そもそも、この免許については、マルチメディアというのが電波利用として適切なのかという疑義もあり、電監審が最初の答申を延長した経緯もあったので、良識ある委員から完全に白紙撤回、利用方針の再考くらいの答申が出ても良いと思っていたが、しょせん傀儡というかお飾り委員会だったのだろうか?

今回の電波資源の割当ても、技術評価と事業評価をあわせて一気通貫での裁量判断であり、利用方法と技術がセットになっている。 そして、事業の成否にかかわらず、今後数年間この周波数はこの方式にバインディングされてしまう。

ふりかえってみて、過去数年間に行なわれた電波割当は、大成功というものにはほど遠い。 実際に 802.11j、モバイル放送、TD-CDMA、地域WiMAX、次世代PHSと、再三電波の死蔵を増やして来た政策判断は、一度も事後評価されていないので、平気でこういうことが繰り返されている。

さらに、ここに来てWiMAXも、インテルのLTEへの注力でかなり厳しいという見方が多い。地域WiMAXについては、提案から関わった1人として、私は失敗だと思っているし、自責の念を強く感じている。
 
これらの割当においては、その許認可にあたり事業計画や普及台数、利用効率などの事業面の評価や、財政評価なども、有識者、専門家と言われる人で構成される委員会などで行なわれている。

しかし、結果として事業継続できなかったり、普及しなかったと言う事は、この意志決定プロセスに関わった人々の判断が誤りであったという事だろう。 もちろん、その時点での判断では予測できなかった外因が事後に発生したという事もゼロではないかもしれないが、そうだとしたらその外因、変化に対するフィードバックやリスクヘッジが不足していた言える。

このような、過ちで、過去数年間にどれだけの周波数が、デッドストック、スローインベントリーと化したのだろうか? 製造業などでも、在庫の時価評価というのは、なかなか踏み込みづらい分野ではあるが、昨今の時価会計では、かなり厳密に行なわれている。

今後同様の過ちを繰り返さないためには、各種委員会や諮問会議の意思決定に対して、事後評価、追跡評価を行い、それを公表するような仕組みや活動が必要なのではないだろうか?

目に見えた行政の無駄遣いなどは、オンブズマンによる評価などがあるが、電波政策とか行政判断による評価は、残念ながら行なわれていない。

委員や委員会の意思決定を追跡評価しランキングを公開するなどしたら、御用先生や御用委員の人も、そうそうお気楽な引き受けもしなくなるだろうし、駄目なものは駄目と言えるのではないだろうか?