不景気な話しが続く世の中、気分なおしに世界の大金持ちの横顔を眺めて見ました。毎年世界の億万長者のリストを発表するフォーブス誌の記事を見ていますと、お金の作り方にもお国柄が表れている事に気がつきました。
昨年の統計では、ビリオネアーの内、サービス、小売業と投資、金融業出身が夫々25%、食品を含む製造業、メデイア、テクノロジーの3事業が、夫々10%ずつ、エネルギーと不動産業が夫々9%、医薬産業が4%と続きます。一世代でビリオネアーになった人が400人中274人と70%近くを占め、アメリカンドリームは健在です。又、金持ちになると離婚するという噂とは異なり、離婚経験者は3割にしかならない事は意外でした。
錬金術の達人も、2008年のリーマンショックで受けた被害は莫大で、この1年間で最も多くの富を失った人物は、あの有名な投資家ウオレン・バフェット氏でした。彼は1年間で1兆円の資産を失い、この損失を時間当たりにすると、1年間にわたり毎時間1億1千万円の資産を失い続けた計算になるそうです。
ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンと続いた民営化政策による量産されたロシアの億万長者の数と富の大きさは物凄いものがありますが、同じ一代で築いた巨万の富も、米港とは異なり、権力政治家との腐敗した関係が一目瞭然で、世界最大の金持ちはプーチンだと噂されるのも尤もです。
2000年代初期に、オリガークと呼ばれる億万長者の頂点に立ったミハイル・コドルコフスキー氏は、プーチン政権と対立すると脱税の容疑で逮捕され、企業を実質的に奪われた上、現在でも長期刑で服役しています。この例でも解る通り、透明性ゼロ、密室の談合で作られた資産は、権力者との関係が悪化すると、忽ち奪われる事を良く知るロシアのビリオネアーは、巨大な資産を国外に移し、自分自身も国籍を変えて危機管理をするのが当たり前のようになっています。謂わば、持ち逃げビリオネアーに等しい状態です。
政治との癒着と国際的起業家の両刀使いで成功しているのがインドのビリオネアーです。インド人の国際レベルでの起業精神は、フォーブス誌がインド人が米国人を抜いて世界トップ10の金持ちリストの最多を占める日も近いと予言している程です。それに比べ、新しい起業を通じてビリオネアーになった人物の殆ど居ないロシアは、アメリカは勿論インドよりも遥かに劣る旧式経済圏に属すると同じフォーブス誌は指摘しています。
日本で、永年に亘り高利貸しとパチンコ業者が金持ちの上位を占めてきた事も異常ですが、法律の改正と共にこれ等業種に従事する富豪が勢いを失った事は、本で利益の流れが一気に変る日本は、行政の力が強すぎる点でロシアに近い中進経済制度の国なのかも知れません。
西武の堤氏が世界一の富豪として君臨していた日本経済の全盛期の頃から、日本経済の外需依存が問題にされて来ましたが、日本の富豪は圧倒的に内需依存型で、海外で稼ぐ富豪は任天堂の山内氏くらいでした。然し、ファストリテールの柳井氏や楽天の三木谷氏の様に、企業を外需型に転換しようとし始めた事は注目されます。
アジアでも内需に頼らず巨万の富を築く典型的な国家、地域に香港とシンガポールがあります。 驚くべきは、香港はアジアで最もお金持ちを抱える地域に成長し、中国大陸の上位40人が合計資産10兆円で第2位、日本の上位40人の合計は8.5兆円で、第3位に落ちて仕舞いました。
それにしても、世界人口の1%が個人総資産の4割を持ち、世界人口の1%が個人総資産の4割を抑える現状は健康とは思えません。かと言って、社会主義的傾向が強まる日本の昨今を見ますと、経営の良き環境を求めて工場や資産が日本を脱出する事も自然で。社会主義傾向を抑えない限り、この傾向を防ぐ事も難しい気がします。
80年代の米国でも同じ事が起こり、当時の日本は「中抜き現象を止められない米国」と冷笑していたものでした。その米国はIT時代と言う革命を起して再興しました。日本の奥の手は何でしょうか?
上下を問わず突出しない「平凡」を旨とする日本のDNAを頭に入れると、競争を制限して「そこそこ」の生活レベルを維持する事が国民の願いなのかも知れません。金持ちのライフスタイルを読みながら「気分を明るくし」、金持ち統計を見ながら考えさせられた私の暑気払いでした。