理想の組織マネージメントについて

松岡 祐紀

組織の不幸の始まりは、人が人を評価出来るという幻想から始まるのではないだろうか。なぜそのようなことを言うのかと言うと、それが弊社でも始まっているからである。

私は今、流行りのオンライン英会話スクールを経営している。ほかの多くの安さが売りのスクールではなく、徹底的に質にこだわったスクールだ。なぜなら、自分自身が英語をマスター出来たのも、とある優秀な英語の先生のおかげだからである。英語習得に公式はないが、もし仮に1つあるとしたら、「優秀な先生との出会い」だと思っている。


そして、優秀な先生を雇用するために、自ら先生採用に関わり、スカイプで面接を行なっている。採用対象になっているのはフィリピン在住の先生(フィリピン人、アメリカ人、イギリス人)だが、フィリピンの交通事情はすこぶる悪く(特にマニラの交通渋滞は深刻だ)、それを考慮して先生方は自宅勤務としている。

優秀な先生の定義は色々とあるが、まずはモチベーションが高く、自らを律することが出来、その生徒に対して興味を抱き、的確なフィードバックを返すことが出来る人だと思っている。そして、そのような人たちを見つけるのは恐ろしく難しいので、運良く見つけたらとても大事に彼らのことを扱うよう心がけている。

定期的に一人一人と話す機会を設けて、彼らの意見や不満を聞き、改善点や自分に何か出来ないかと問いかけている。

そして、最近先生たちのほうから各先生の評価を行えば、クオリティを保てていいのではという意見があった。実際にその評価基準となる長々とした項目に分かれた評価シートが送られてきた。気が滅入る話だ。

レッスンには二種類しかない。いいレッスンと悪いレッスンだ。それは評価しなくても、聞けばすぐに分かる。しかし、いいレッスンといいレッスンを差別化するのは難しい。そして、生徒側で自由に先生を選択出来るシステムを採用している以上、もし先生が悪いレッスンをしているようであれば、その先生には生徒が付かず、自ずと評価は下される。

お互いのレッスンがどのようなものか共有するのは重要だし、やる気がある人であれば、他の先生のいいところは自分のレッスンに取り入れて、向上していくだろう。そのような機会を創出するのは必要なことだ。だが、それに対して評価を行うと、組織の不幸が始まる。

彼らの言い分は、「大企業でもそのような評価シートを採用しているし、悪いところがあれば指摘してあげて、改善を促すのは必要なことではないか」という。悪いところを指摘すれば、彼らは改善出来る・・・・それもまた1つの幻想だ。人は人を変えることは出来ない。本人が自覚することによってのみ、人は変わることが出来る。

それに人が他人の意見を聞くときは、個人と個人の関係がきっちりと築かれているときに限られ、「冷たい評価シート」を元に下された意見など誰も聞く耳を持たない。

彼らは客観的な評価が重要だと言う。だが、客観的な評価など存在しない。評価をするのが人間である以上、主観的にならざるを得ない。そうであるならば、最初から個人の意見として物を申すほうが相手も納得する。

理想の組織マネージメントとは、逆説的ではあるが「マネージメントを必要としない組織」である。そして、自宅勤務という特殊な労働環境である我々の組織では、そのような組織の構築こそがクオリティを保つ唯一の戦略である。

そして、これから長い時間をかけて、このようなことを彼らに説き、自分たちが理想とする組織を作っていこうと思っている。

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